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◆はじめに◆

下記『◆プロローグ◆』にて、【】で囲われた用語は、『俺の嫁とそそらそら』独自の用語です。
『基本情報』ページ『●用語解説●』欄にごく簡単な註釈があります。あわせてご覧ください。

また、さらに『俺の嫁とそそらそら』の世界観が知りたい!
という場合には、『●ワールドガイド●』をご確認ください!

◆プロローグ◆


◆ある日の午後


「……参ったなァ、また給油停止?」
 アカディミア学生『ソラ・リュミアート』は、ガソリンスタンド前で途方に暮れていた。
 ガソリンスタンド、という名称は正確ではない。なぜなら彼女の【エスバイロ】を動かす燃料は、フラグメントという鉱物を加工した液体燃料だからだ。
 しかし語源は不明だが、これを、ガソリンまたはガスと呼ぶ文化はこの世界に定着しており、液体燃料を補給する行為も一般的に給油と呼ばれている。
 現在ソラが途方に暮れているのは、その無人スタンドの給油機が、彼女のマシンに給油を拒否したからであった。
 拒否、と書くと給油機から手がニューっと出てきて「ノー!」と言っているようなイメージがわくからもしれないが、なんのことはない給油機の上に、
 『給油は停止しております。ご迷惑をおかけします』という主旨のビラが一枚、ぺたっと貼られているという、まことにアナログな措置がとられているだけである。
 もちろん、これをはがしたところで突然、こんこんとガソリンが湧き出すということはない。
「もー! このままじゃガス切れになるじゃない!」
「具体的に言うと、明後日の授業にはエスバイロを手で押して通学することになりそうねえ」
 いつの間にかソラのエスバイロの上に、小柄な少女がちょんと乗っている。くりっとしたシニヨンを巻いた少女だ。
 どこから出てきたのか? しかもこのシニヨン少女は半ば透明の姿だ。
 幻覚? おばけ? いずれもちがう。この少女は【アニマ】といって、詳しい説明は省くがソラと共生する人工生命体である。
 人工といってもちゃんと独立した意思があるから、出たいときに出て消えたいときに消えることができるのだ。ちなみに、ソラのアニマの名は『ミィ』である。
「はいはい、余計な計算しなくていいの。そこどいて」
 ソラはむすっとした表情で、猫でも追い払うようにしてミィをシートからどかせた。
「そりゃどうも」
 などと言ってミィはシートから滑り降りる。
 このときソラの手は、何度かミィの体を通過していた。アニマはイメージ映像として姿を見せているだけなので、実際に触れることはできないのだ。
 なお現在ミィは、誰にでも見えるし声も聞こえる【オープンモード】という状態にあるが、
 ナイショ話仕様こと、主人であるソラ以外には見えないし声も聞こえない【プライベートモード】という状態になることもできる。
「なんか最近、規制かかってるのかガソリン給油できないことが多いよね……」
 燃料節約のため、ゆっくりエスバイロを走らせながらソラが言った。
「やっぱ、フラグメント資源が枯渇しかかってる、って噂は本当なんだろうね」
「えっ! 困るよ! フラグメントがなくなったら、エスバイロ使えなくなっちゃう! 学校まで何キロあると思ってんの」
「それどころじゃないでしょ。ソラ、あんたこの街がどこにあるか知ってる?」
「えー? お空の上」
「そういう意味じゃなくてさ」
 ふーっ、とミィは大げさにため息をついた。
「ほら、【旅団】って言うけどさ、結局のところ、あたしらがいる場所って、大きな大きな飛空艇の上でしょ?」
「それくらい知ってるよ」
「飛空艇の燃料は?」
「……もしかして、ヤバい?」
「そうかも」

 地上が既になく、人々が空に、飛空艇で逃げ延びた世界。
 その世界を空にとどめるための作戦が、始まろうとしている。

◆大規模作戦、開始


 救国の英雄だとか、対【アビス】戦の功労者だとか、【ブロントヴァイレス】スレイヤーだとか、そういう偶像みたいな呼び名は、好みじゃない。
 私は最前線に立つ戦闘者だ。これまでも、これからも。たぶん、ずっと。

「作戦概要の説明は、リン・ワーズワース少尉が担当します」
 壮年の大佐が告げると、百人程度集まった会場は総立ちとなった。
 現在この広いホールでは、【メデナ】の最高会議が開催されている。
 集まっているのは七旅団の首長をはじめとする、全員の肩書きを読んでいるだけで日が暮れそうな重要人物ばかりだった。
 彼らからの爆発的な拍手に包まれながら、『リン・ワーズワース』はマイクの前に歩み出る。
 けれどリンは知っている。この拍手がすべて、敬意のこもったものとはいえないということを。
「あれが……」
 と値踏みするようなつぶやき、冷笑、あからさまな敵意の視線……拍手の中身は、こうした不純物だらけだ。
 だがそれでも、リンは己の務めを果たさねばならない。
 慣れない新品の軍服の襟は硬く、無駄に重い腰のサーベルに内心苛立っているが、そんなことをおくびにも出さず、告げた。
「ご承知の通り、YF1883空域に存在を続けるRSクラスの巨大浮遊島、
 通称『Treasure Island(トレジャー・アイランド)』を覆っていた障壁は、
 過日のブロントヴァイレス迎撃戦の勝利とほぼ同じくして消失したという観測結果が出ています」
 まだるっこしい、とリンは内心思っている。こういうもって回った言い方をせず、
 「なんだか知らないけどブロントヴァイレスに勝ったせいか、あのばかでかい浮遊島に入れるようになったみたいね」とでも言えばいいのだ。
 もっともリンの見立てでは、あの浮遊島を覆っていた乱気流と雷雲によるバリアが消えたのは、ブロントヴァイレスに勝ったせいではない。
 七つの旅団がすべて陥落し世界が滅びたと確信したあのとき――目を覚ましたリンは、丸一日ほど時間が遡ったことを知った。
 失敗と滅亡の歴史は消え去り、もう一度、最初からブロントヴァイレス戦を行うことができたのだ。
 結果、過去の記憶をもとに世界は戦いに勝利することができた。
 しかしその歴史改変ともいうべき事象は、この世界に大小さまざまな影響を与えてもいた。
 たとえば、滅亡したときの歴史では規模の大きな夜盗程度の認識だった【バッカニア】が、草稿飛空艇の艦隊を有す規模に進化したこと、
 お気に入りのフライトジャケットのエンブレムが左右逆の位置になっていたこと、
 そして、『トレジャー・アイランド』に入れるようになったこと……かつての記憶を残すリンにはその違いがはっきりとわかっている。
 といっても、ここでそのことを声高に申し立てても意味はない。
 今は、浮遊島に集中すべきだ。
「この島の規模から言って、大規模なフラグメントを含有している可能性は大と思われます。
 現在、すべての旅団が抱えているフラグメント枯渇問題、それを解決するためにも、早急な作戦行動が求められるといっていいでしょう」
 つらつらとここまでの経緯、作戦概要を述べた後、リンはこう締めくくった。
「よってここに、トレジャー・アイランド探索を目的とした大規模作戦の開始を提案します!」
 本提案は、満場一致をもって採択された。

執筆:桂木京介GM


◆各選択肢リザルトノベル◆


●調査結果「前半」!●
・『泉の調査
・『密林に椰子を求める

●調査結果「後半」!●
・『ピラミッド内部の探索
・『慰労会の準備