ワールドガイド

世界の脅威


アビス

かつて、この世界にも大地と呼ばれる場所がありました。
そこには文明が、人々の暮らしがありました。
空間が崩壊し何もなくなってしまった場所をアビス「完全なる漆黒」と言います。
「アビス」が始まったのはいつなのか、今となってはハッキリとした記録は残されていません。
突然始まった世界の崩壊は、すべての大地を砕き飲み込んでしまいました。
人々は地を逃れ、大地だったものの破片(浮島)が浮遊する空の旅人となってしまったのです。
貪欲なるアビスはさらに空間を飲み込み続け、現在も浸食を続けています。
人々はとどまる事すら許されないのです。


目の前にある脅威「ヴァイレス」

現在世界は様々な脅威に直面しています。
経済、社会の混乱、人口増加、エネルギー不足……。
しかし、かつて大地と呼ばれていたものが消失して以来、
もっとも忌み嫌われ恐怖の対象となってきたのは「ヴァイレス」という存在です。
エネルギー不足から、旅団国家どうしが資源を奪い合う戦争の最中ですら、
「ヴァイレス」の視線を気にしないものはいませんでした。
悪魔の所業か、神による罰なのかその正体を知る者はいません。

ただただ、それは突然訪れてすべてを破壊しつくすのです。

語源として最も有力な説は、その特徴から「ウイルス」という単語が変質し
「ヴァイレス」と現在では呼称されています。


新たなる脅威「謎の旅団シュメルツ」

経済の混乱と辺境地域の治安悪化から海賊行為が横行する昨今ですが、近年急速にその数を増やしています。
輸送船団の襲撃や行方不明事件、その後ろ盾となっているのが、謎の旅団シュメルツだと言われています。

旅団シュメルツとは、今から半世紀ほど前まで、他の巨大飛空艇国家と共に同じ空域を航行していた旅団国家の事です。
有力旅団国家の一つとして数えられ、規模はやや小さいものの、8隻目の巨大飛空艇国家とも呼ばれていたこともありました。
しかし、エンジンの不調から脱落し、アビスに呑まれてしまったと長年信じられてきました。

ところが、その旅団シュメルツが近年目撃され始めたのです。
そして、理由は不明ですが他の旅団の輸送船団を襲撃したり、妨害したりする事件が発生しているのです。

すでに各旅団の経済に大きな被害が出始めていると言われています。


アビスに選ばれた者達「アビスメシア教団」

偶然か何かの意図によるものか、アビスに接触し長時間たっても感染があまり進まない者がたまにいます。
そして、一部感染しているため、力が強くなったり感覚が鋭敏になったり、通常の人間よりも高い能力を示す場合があります。

さて、起源ははっきりしませんが、昔から信じられていた伝承に「黒いメシア」というものがありました。
これはアビスが世界をすべて飲み込んでしまった後、黒いメシアに率いられた選ばれた者達のみが生き残り、再生された世界で新しい人類として文明を引き継ぐというものです。
アビスに感染し死ななかった者たちにとってこの伝承は福音で在り、選ばれた者こそ自分たちであると彼らは信じました。
そうやって広がったのが「アビスメシア教団」です。

現在その存在は陰に隠れていますが、かなりの広がりを見せており、選ばれるためにわざと感染しようとするものまで出ています。

人類社会に浸透し汚染するアビスメシア教団は探究者にとって厄介な脅威です。


空に適応した生物たち

驚いたことにこの世界では、大地が消滅する前に存在していた多くの生物が空へ適応して種を保っている例が多く報告されています。
その一つの報告例が、「浮き羊」です。
家畜として辺境の島などで飼育されている例もありますが、原生種は無人の島や浮遊植物の群生地などに生息しています。
通常の羊とどう違っているかは一目瞭然で、体内に浮嚢をもち、浮遊ガスの力で空中に浮き生活しています。

姿はバルーンに頭や手足が付いたような感じですが、食性も性質ももとの羊のままです。
もちろん、「浮き」生物は、移動力に乏しいため、島や浮遊植物群などに寄り添い場合によってはしがみ付いて生きています。

なお、これらとは違った進化例もあります。
それは「飛び羊」です。
浮く代わりに飛ぶ事を選んだ進化で、高速に移動できるため捕食動物に多い進化です。
ただ、浮くのにはほとんどエネルギーが要らないのに対して、飛ぶためにはエネルギーが必要です。
そのためか、同じ原種をもつ生き物でも浮くグループよりも飛ぶグループのほうが気性が荒く攻撃的な場合が多いようです。

これらの空適応例は植物にも見られ、実の半分を浮嚢に進化させ、空中に繁茂する浮き野ブドウなどは、その代表例でしょう。

この空中世界のほとんどは未開の地(空)です。
上記以外の生物や、特殊な進化を遂げたモンスター達が、いても全く不思議ではありません。


医療旅団「メディキーナ」の悲劇

歴史書を紐解けば、「ヴァイレス」による悲劇はその数に驚く限りですが、近年まじかに起きた惨劇と言えば医療旅団メディキーナでの事件でしょう。
事件が起きたのは5年前、医療旅団メディキーナは、高い医療技術をもち沢山の研究機関をもつ中堅規模の旅団国家でした。 
研究所の密集した地域に、その全長100mを超えるヴァイレスが出現したのは突然の出来事でした。
やせ細った人のような歪な黒い影……。
旅団防衛隊がすぐさま出動し、防衛にあたりましたが効果は薄く、ほどなく市街地は壊滅状態になります。
その後、船体内部に入り込んだヴァイレスは、駆動部まで侵食します。
直後、医療旅団メディキーナは50万人の市民とともに一瞬にして爆散、
たまたま近くを航行していた軍事旅団レーヴァテインの援軍が駆け付けた時には跡形もありませんでした。
一説によればメディキーナではアビスに感染してしまった人間の治療法を研究していたとか、
「ヴァイレス」の欠片なるものを入手し研究していたといわれていますがメディキーナが崩壊してしまった今となってはその真実は闇の中です。


黒いヒトガタ

靄の多い朝方や燃えるような夕焼けの時間。
大きさは数メートルから数十メートルの大きさをしたぼんやりと虚ろで、歪な黒い人のような影を見ることがあります。
見ただけで不幸になると言われており、ゆっくりと泳ぐように浮遊する姿はぞっとするものがあります。
この影は、強い日光や暗闇があたりを包むと消えてしまいますが、消える前に島や飛空艇に接触してしまうと厄介なことになります。
物質に触れた影は物を取り込み実態を得ます。
もうそうなってしまったら、日光も闇もヒトガタを消し去ることはできません。
そして、ヒトガタは島や飛空艇を侵食しつつ質量をまし、破壊を開始しいます。

この黒いヒトガタも「ヴァイレス」の一種と考えられています。
黒いヒトガタの接近に気づかず、接触を許し飲み込まれてしまう中型飛空艇や島の話は後を絶ちません。

実態を持ってからは、通常の攻撃が効きますが、影だけの時は発見し回避するしか方法はありません。


オーピム

空間の狭間に住むという謎の生物、「ヴァイレス」の一種と考えられています。
数センチから数メートルの大きさで、普段は半透明で実態がありません。
形状は菌類に似ており顕微鏡の中の雑菌が巨大化したように見えます。
空中を浮遊するもの、地面や壁に粘菌のように付着するもの群体を形成するものなど様々な生態を持ちます。
普段は目撃することも少なく、無害なのですが、近くに(数キロ内)黒いヒトガタがいたり、黒い靄の中だったりすると実体化しなんでも食い荒らす凶悪な存在に変わります。
実体化したすべてのオーピムは、物質を溶解し取り込む能力を持ちますが、中にはそれ以外の攻撃方法を持つものも存在します。


黒い靄

黒くかすんだぼんやりとした靄(もや)のような現象が時折観測されます。
これは「黒い靄」「黒い霧」と呼ばれる現象で、飛空艇や島などにまとわりつくように発生します。
移動速度はさほど早くないので、飛空艇なら逃げられますが、ひとたび捕まってしまうととても厄介なことになります。
靄はエネルギーを食べます、またゆっくりではありますが、物質をエネルギーに変換して吸収します。
捕まった飛空艇は、最初にエネルギーを抜かれ動けなくなり、そのあとゆっくりと溶かされて消滅します。
また、靄の中はオーピムが活発化するため、靄に溶かされる前に大抵はオーピムによって分解されてしまいます。