プロローグ
● 拠点破壊指令
戦いにおいて、空を侵略できる意味は大きい。
敵が180度の方角でなく、360度の見渡す限りから攻め入ってくるという状況そのものが人間には対処しにくいのだ。
空を満たす暴虐の破壊音。悲鳴、墜落音。
ひゅーっと嘘っぽい音を鳴らしながらエスバイロが墜落すると家屋が一つ吹き飛んだ。
だが乗り手は無事だったらしい。
こうして何人かの潜入を許してしまった。レーヴァテイン防衛部隊。
これでは獅子身中の虫。
今のところ速射砲と皆の頑張りで大きな船の接近は許していないのだが、背後から奇襲されてしまえばこの防衛ラインも瓦解するだろう。
なので、その侵入したアビスメシア教団の戦闘員を排除する部隊が作られた。
その組織された、対アビスメシア教団の報告によると、敵兵たちは奇襲攻撃を繰り返しているようだ。
突如現れては消え。また現れる。
つかみどころがなく、幽霊のように出たり消えたりする。
これが厄介なことこの上ない。
これに早急に対処することこそ、勝負の鍵を握っていた。
そこで君たちに白羽の矢が立ったわけだが。
端的に言おう。
君たちは調査の結果、レーヴァテイン船内の一角に撃ち捨てられた補修スペースを発見した。そこに簡易拠点を敵が作っているようだった。
これはおそらく、この船に攻め入ることが決まった段階で作られた潜入拠点なんだろう。
用意周到すぎた。
ここで君たちにお願いしたいのは、この拠点の破壊。
状況については下記で詳しく説明しよう。
● 状況説明。
敵が潜入しているその空白地帯へたどり着くには、下水道を通って行かなければならない。
それぞれ特徴があるので分析、敵の配置を予測し、罠をかいくぐってほしい。
1 大きな直通通路。
半径五メートル程度の円形で水が弐メートル程度満たされている。通路が左右に存在し。この通路は狭い。人が一人通れる程度である。
エスバイロを持ち込み、飛行戦に持ち込むことは可能だが、狭く自由に動けない点に注意してほしい。
2 整備用通路
保守点検用の通路だろうか、人が一人やっと通れる程度の通路で、通路の高さも二メートルない。
当然大型武器は引っかかってしまう。
さらに道が入り組んでおり、迷いやすい。君たちに地図は渡されているが。瓦礫などで通路が塞がれている可能性もあり注意。
さらに罠など仕掛けられている可能性は高い。
こちらから向かうと、整備用通路の二倍の距離を歩くことになる。当然エスバイロは使えない。
さらに敵戦力について記載しておく。今回相手にする兵士は二種類、合計六人程度だが、内訳はわからない。最悪『ナイフ』一名。『ショートボウ』五名などありうる。
・『ナイフ』を持った教団員
軽装で、武器は鋭利なナイフ。大刃ですが取り回しはよく、一撃必殺を狙う形。対面で大型武器と渡り合うのは不利でしょうか。
壁に張り付くことができるので機動力は高い。
どうやって相手の機動力を削いで攻撃を当てるかが肝。連携が必要ではあるが個体として強いわけではない。
・『ショートボウ』を持った教団員
取り回しと連射性能に優れたショートボウ。威力はそれなり。
本人は『ナイフ』の教団員の後ろに隠れています。
飛距離は遠距離武器の中では最低クラス。もはや中距離武器と言っても過言ではない。
手っ取り早いのは、銃系統で狙い撃つことだろうか。
解説
目標 敵拠点制圧。
今回のミッションは拠点を潰すことです。
戦略性があり相談が重要になると思いますが頑張ってください。
今回のミッションは武装の選択、職業選択の段階で戦略性が求められます。
盾になって攻撃を防ぐのか。エスバイロで注意を引くのか。背後から狙い撃つのか。
自分の役割を決めて立ち回れば輝くことができるでしょう。
さらに今回の目的は、敵の全滅ではなく拠点の破壊。
要は物資がその拠点にため込まれているので、持ち去るか、破壊してしまいましょう。
なので。その策についても考えておいていただくとよいと思います。
今回のこのシナリオで、そそらの戦闘がどんなもんか、知っていただければ幸いです。
このエピソードはグランドプロローグ「崩壊の始まり」の連動エピソードです。
イベントで起きた様々な大事件の陰で、隠された物語をエピソードにしています。
歴史の狭間、真実の隙間を埋める物語へ参加してみてください。
なお「崩壊の始まり」にて選んだ選択肢と関係ないお話でも参加可能です。
ゲームマスターより
今回のテーマは実は、スタンダード。
なんですよね。
なので。ゲームの戦闘を意識してみました。戦略シミュレーションモチーフですね。
キャラクター個々の個性を把握して、敵に当てる。敵の行動を予測して敵の動きを阻止する。
そんな感じです。
楽しんでいただければ幸いです。
【隠れた真実】潜入拠点を破壊せよ エピソード情報
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担当 |
鳴海 GM
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相談期間 |
6 日
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ジャンル |
---
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タイプ |
EX
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出発日 |
2017/7/2 0
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難易度 |
普通
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報酬 |
通常
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公開日 |
2017/7/12 |
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星野平匡
( ハルキ )
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エルフ | スナイパー | 36 歳 | 男性
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「ハルキ、制御をお願いします。」 その声を合図に平匡のエスバイロが大きな直線通路の天井まで上がっていく。 平匡の作戦は、天井まで上昇したエスバイロから敵を狙撃していくというものだった。通路内が暗いことを利用したものだ。敵が反撃してきたら、移動し、また攻撃する。その繰り返し。 「静かにしていてくださいね。」 平匡は、音を最大限抑えながら狙撃していく。 敵がこちらのことが分からないと同時に、平匡も敵が見えない。だが、平匡は脳内で響く秀忠の指示を元に照準を合わせて攻撃する。 「ここから2時の方角200mくらいのところにナイフ1人、その後ろにもショート1人」 平匡は撃った。 空白地帯では、近接戦闘は一子相伝の蹴り技「タイキック」と銃を使った攻撃がメイン。遠距離はスナイパーライフルで狙撃をする。 「ここは私達の拠点ですよ?もしかして迷子ですか?」 平匡は一人一人を目的地「冥土」へと送っていった。
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直通通路はスナイパーエスバイロの皆に任せて、キースさんと一緒に整備用通路へ。 前衛を担当し、罠や最短ルートの解析に耳を傾け、戦闘の際には積極的に前へ出る(キースさんを護るように動く) 地図を見て瓦礫を避けることで、大きく短縮出来そうであれば、どかしてみようかな。 物音はあまりたてたく無いし、STRでなんともならない様であれば、再度解析してもらったルートへ。 戦闘では意図せず敵と遭遇した場合、腕と胴体を中心に攻撃して負傷させる。 (うまくいきそうであれば道案内をさせる。そこは基本キースさんにまかせる) 拠点を見つけても無理に攻撃は行わず、味方のスナイパーと合流できるまでは「戦闘距離1」を選択。 敵の機動力を削げたら、自慢のSTRで一撃を叩き込む(片手剣所持) 物資は皆に相談してみるけども、機動力が損なわれない程度に持って、後は破壊かな。 何かの間違えで、また敵の手に渡っても困るしね。
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僕みたいな鬼可愛いアイドルをお呼びとは依頼者さんも目の付け所がいい様で結構なのさ!! 大きな直通通路ってところでエスバイロに乗って注意を引く為に歌ってあげるのさ!! 僕の歌がただで聞けるんだから感謝するのさ!! 鬼華麗な僕のエスバイロ捌きと鬼可愛い歌声に酔ってる教団員を他の人に処理してもらうのさ!! 「僕こそが忌兵隊の鬼可愛いアイドルサザーキアなのさ!!さあライブ開始なのさ!!」
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メイディーンソルーベ・ライムゼルカーナーと共に整備用通路から潜入拠点へ向かう。キースは入力端末にアニマを同化させ、罠の発見と拠点までの最短ルートを解析しながら進む。潜入拠点まで残り半分を切った辺りで敵と遭遇する。メルが前に立って戦ってくれるので、キースはクラススキルのエクステリアメルトで援護する。ある程度ダメージを与え負傷させたら、わざと逃がし適度な距離を保って追いかけ、潜入拠点までの道案内をさせる。追いかけつつ最短ルートの解析は続けるので、ある程度目星がついたらトドメをさす。逃げずに抵抗し続けた場合はその場でトドメをさす。大きな直通通路から潜入拠点へ向かっている味方が拠点に入ったのと合わせて、こちらも拠点に入る。メルに物資を回収させている間、広範囲魔法の発動準備をしておき、回収が終えたのを確認してから拠点を破壊する。
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直進通路を通る。 教団員たちが囮に釣られたタイミングを見計らい、『ナイフ』をもった教団員に打撃を加え、気絶させる。 その後は気絶させた団員の一人を『ショートボウ』に対する盾として使う。 安全な物資は機動力を損なわない程度に持ち帰り、爆薬など危険な物資や持ちきれなかった物資は破壊する。
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下水道は大きな直線通路を通る エスパイロに乗り運転はミュウ任せ。咲樹は教団員や罠の捜索に専念する 教団員は見つけ次第魔法で攻撃する 生死は気にしない。攻撃してくるのなら迎撃するまで 物資は積めるだけエスパイロに積み残ったものは魔法で吹き飛ばす その場所が放棄してもかまわないのならもう二度とこのようなものが作られないようにその場を破壊する
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直進通路をエスバイロで通る。 自由に動けない事は承知の上で後方で待機し、誤射に細心の注意を払いながら【フラッシュエイム】を使い、『ショートボウ』を持った教団員を長距離レールガンで狙撃する。 拠点では爆薬などの危険物以外はなるべく持ち帰る。持ち帰れないものは、あらかじめ仲間に注意してからエスバイロのレールガンでなるべく長距離から安全に破壊する。
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参加者一覧
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星野平匡
( ハルキ )
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エルフ | スナイパー | 36 歳 | 男性
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リザルト
プロローグ
薄暗い下水道、すえた臭いは住民たちの生活排水が入り混じった匂いである。
そんな、世界の裏側の裏……そこに場違いなほどに……響く、明るいメロディー。
それは。
「いえーーーい、みんな! おきてる? 寝てる暇なんてないよ!」
そんな水路のど真ん中を直行してくるのは『サザーキア』である。
「ライブの始まりだ! 鬼可愛い僕による、鬼可愛い特別路上ライブを今から執り行っちゃうぞ!」
サザーキアは闇を切り裂くようにエスバイロで浮上、色とりどりのライトエフェクト、そしてスピーカーによる音声拡張によって、一瞬で下水道をライブ会場に変えてしまった。
「僕みたいな鬼可愛いアイドルをお呼びとは、依頼者さんも目の付け所がいい様で……結構なのさ!!」
ご機嫌なサザーキア。しかしだ、そんなことをされれば困るのはアビスメシア教団の連中である。
奴らはここを根城にしていて。なるべく根城周辺は静かであってもらいたいと考えている。
だというのに、ここら周辺で騒ぐものがあれば。
あああ、どうしたことだろう。様子を見に来た他の探究者たちに見つかってしまうではないか。
ここが見つかるとまずい、何せアビスメシア教団の補給を一手に担っているのだ。
本当にまずい。どうする?
そう顔を突き合わせて会議を始めるアビスメシア教団御一行。
そんな教団員の焦りもつゆ知らず。サザーキアは用水路を行ったり来たりする。
気持ちよさそうに歌声を響かせ、時にはエスバイロでターンして見せた。
「僕の歌がただで聞けるんだから感謝するのさ!!」
軽やかな空中ターンに加え、歌に合わせて左右にふわふわと揺れるエスバイロ。
謳っている最中でも狂わないエスバイロ捌きはなかなかのもので『鬼』可愛い歌声も一級品。
「あらら? 出てこないってことは、僕の鬼歌唱力に、鬼酔ってるのかな? 教団員さん!」
「なんなんだ、あいつは」
さすがに堪忍袋の緒が切れたアビスメシア教団の構成員たち。
袖の下のナイフをぎらつかせ、教団員が闇の中から囁いた。
その声が聞こえてか聞こえずか。サザーキアは遅れた名乗りをあげる。
「僕こそが忌兵隊の鬼可愛いアイドルサザーキアなのさ!! さあライブ開始なのさ!!」
宣言通り今までの演出が前座だったと言わんばかりにサザーキアは音を響かせる。
排除するしかない。やっと動き出した彼らの背後で。
『メイディーンソルーベ・ライムゼルカーナー』はほくそ笑み、行動を開始する。
第一章 正面突破
狭い水路内に突如溢れる無数の足音。僅かな灯りにはためく影。
それはサザーキアへ殺到する教団員たちの影だった。
サザーキアを秘密裏に処理するためにむかわされた影だったが、そんな奴らの行動は全て御見通しである。
敵を上空から狙い撃つのは『星野平匡』
「ハルキ、制御をお願いします」
天井付近に構えた平匡、その姿は下水道の闇に同化してまったく見えない。
エスパイロの駆動音も、半ば騒音と化したサザーキアのライブ音でかき消されて聞こえなかった。
これでどうやって気が付けというのだろうか。
平匡は相棒のハルキにエスパイロの操縦を全て任せて一心にトリガを引いた。
(ナイフが一。ボウガンが二。あとのメンバーはどこに)
平匡はボウガンを持った敵を素早く射抜き反撃を極力抑えた。
「静かにしていてくださいね」
平匡は、音を最大限抑えながら狙撃していく。
だがこちらの攻撃も外れる方が多い、それた弾丸は岩肌を穿ち僅かな火花を散らせて。
「光があれば……」
噛みしめるようにつぶやく平匡。これではあちらの手数が多い分、こちらが徐々に追い詰められていくだけだろう。
「光ならあるよ? まぁ、少し熱いかもしれないけどね」
その時、闇を焼き払うように下水道にあふれたのは光。そして炎。
その炎に飲まれて教団員たちは悲鳴を上げた。
見れば『神咲 咲樹』が杖を掲げていた。
その杖を弧を描くように振るうと、空中に魔方陣が刻まれて、そこを中心に更なる炎が立ち上る、その火焔が舐めるように下水道に広がっていき、再び教団員たちを飲み込んだ。
「ミュウ…………」
咲樹が小さくつぶやくと、ミュウは無言で背後の敵を指し示す。
闇に潜んでいた奇襲部隊だ。敵もバカではないのだ。だが。
「そう簡単に行くと思うな!!」
こちらも、奇襲を予測しないわけがない。
唯一回り込むことに成功した教団員だったが。次の瞬間には放たれていた弾丸によって、その肩を穿たれ、衝撃で吹き飛ばされることになった。
「うわ!」
次いで下水道内に響く悲鳴。それは教団員の物ではなく、弾丸を放った『藤原上進』のもの。藤原は配布された武装に慣れていないため、驚きの声を出したのだ。
「う……うわぁ、だいじょうぶですか~」
あまりの威力に恐る恐る相手を気遣ってしまう藤原。
「大丈夫ですよ、死んでないみたいです」
そう藤原を気遣って声をかける平匡。
平匡は咲樹の放つ魔術の炎やその残滓を頼りに敵を狙撃していく。脳内で響く秀忠の指示も加え照準を合わせ、踊りかかってきたナイフの教団員を打ち落とした。
戦局は有利、なにせこちらはエスバイロ三機による奇襲を仕掛けているのだ。
それが功をそうし、敵の抵抗を許さない。空中への攻撃手段が限られた教団員たちは混乱してしまっているのだ。
そんな中藤原はその手の獲物で次々と敵を打ち抜いていった。
「武器を狙います! 死なないでください!」
藤原は逃げ腰ながらもきちんと自分の役目を果たす。ただやはり実際になぐり合うのは怖いのか、自分に近い敵から攻撃しているようだが。
「うう、死んでないですよね?」
「それはどうだろ?」
咲樹が藤原に言葉を返す。
終止怯える藤原に対して咲樹は常に平常心を保っていた。
座った瞳に映りこむのはこの世に顕現した地獄、自身が発する熱量の塊、その炎の中でもだえ苦しむ教団員である。
彼女は混乱した敵を煽るようにさらに魔法を上に重ねて放っていたのだ。
ついでに行先を阻む教団員を爆風で吹き飛ばした。
「ぼく、君たちのこと大っ嫌いなんだ。死にたいのなら勝手に死んどけよ。関係ない他人を巻き込もうとするなよ。だからここで虫ケラのように息絶えろ」
高笑いはしないが笑みを浮かべ神咲は歩みを進める、教団員たちが必死に食い止めようとする中で、神咲は魔術を連発。敵を近づかせない。
そんな中、仲間を盾に神咲へ急接近する影があった。その影は常人とは思えない脚力を見せて飛び、エスバイロに乗る神咲へ刃を向けようとした。
だが。それは叶わない。
「ここは私達の拠点ですよ? もしかして迷子ですか?」
平匡だ。
彼はスライドするようにエスパイロを操作。飛んだ教団員の脇につけて。そしてエスバイロの上に立ち。タイキックを放った。
その衝撃で教団員は吹き飛ばされ壁に当たり、そして下水の中に沈んでいく。
第二章 整備用通路
メイディーンはライブ娘が先行した段階でわき道をそれ『キース・ヴァールハイト』と共に暗闇を急いでいた。
入り組んだ水路内を地図と感覚を頼りにすすんでいく。
メイディーンは前衛を担当。後方にキースを控えさせ周囲を警戒する。
「敵拠点の破壊かー、出来るだけ最短ルートを通らなくちゃね」
キースは自身の手に収まった入力端末、これに『マナビ』を同化させ罠、そして最短ルートを模索しながら進む。
「キースさん。そこに」
メイディーンが行く手を遮ると、暗がりに一本の針金が。ずいぶんお粗末な代物だ。
「罠といっても、この程度か」
そんな罠を回避しながら進むと瓦礫で行く手を遮られたフロアに出た。
「どうする?」
キースが問いかける。
「二人ががかりなら、たぶん……」
そう告げてメイディーンが瓦礫に手をかけた。
するといともあっさり瓦礫はどかされたのだが。
どうやらこの瓦礫の向こうが、この地下道の監視ポイントだったらしく。
小さな小部屋になっているその場所に詰めていた教団員と目が合ってしまう二人である。
「あ……」
「あ……」
「……おまえら! 我らが神の元に送ってやる!」
あわてて立ち上がる教団員。掴みかかるために飛び出してくる。その手にはぎらつく銀色のナイフ。
だが一番最初に状況に対処したのはメイディーンである。
その手を蹴り上げて、その懐から刃を取り出す。教団員はタックルを仕掛けて逃げようとするが。それをいなしたメイディーンが、腕と肩を掴んで投げ飛ばし、通路の壁に教団員を叩きつけた。
教団員は素早く身を翻すとナイフを一閃。
それをメイディーンは躱し、帰ってくる刃を予測して、左の裏拳で敵の拳を叩き落とした。
そのまま右手の刃を閃かせて斬撃。
血がメイディーンの頬に付着する。
目を見開く教団員。そんな彼を蹴り飛ばし、壁に押し付けると、回転を食わせた斬撃を放つ。
ただ、その渾身の一撃は裂けられてしまったのだが。
ぐえっと。間抜けな声を鳴らしつつ地面を転がる教団員。そんな教団員は向き直って刃を構える。
「整備用通路、なかなか狭いね。小さめの武器を持ってきて正解」
だがやはりメイディーンの行動は早く急接近、武器の柄で軽く教団員を吹き飛ばした。
「くそ!!」
教団員はにげだす。
その背を追おうとしたメイディーンをキースは遮った。
「どうしたの?」
「いや、巣に逃げ帰るんだろう? だったら野放しにしてあいつに拠点を教えてもらう」
その言葉にメイディーンは指を鳴らして同意した。
二人は暗い道をかける。
敵の足音を頼りに、敵はダメージを受けているので思うようにスピードを出せないようだった。
やがて二人は教団員に追いついてしまう。
「もう走れないのか?」
頷く教団員。
「なにより目的に気が付いた」
そう不敵に微笑む教団員。自分が拠点まで案内する気はない。そう瞳で語っていた。
「そうか、だったら」
キースはその手をかざす。
「お前はもう用済みだ」
悲鳴が溢れないように口をふさぎ、トドメをさす……。
その行為からメイディーンは視線を逸らした。
その時である。足音が聞こえる、しかも直上。話し声も聞こえる。
大暴れしている敵を倒すための増援。そんな話を壁の向こうの人間たちはしていた。
「どれだけ壁がうすいんだ?」
キースは思わずつぶやく。
「改装に改装を重ねられればそうなるかも?」
そうクエスチョンマークをうかべるメイディーン。
「この上が」
「ああ、敵の本拠地みたいだな」
キースは壁を叩いて、厚さを図る。
「じゃあ、迷わされたんじゃない? ここから上に上がる道は見当たらない」
「…………なければ道を作ればいいんじゃないか?」
第三章 包囲! 包囲! 包囲!
平匡は暗闇の奥を見やった。アニマが敵の反応を訴えている。
闇の中から現れたのは増援。残る教団員全員。
総力戦だった。
敵はこちらの人数の二倍。さすがに少し部が悪い。そう思った直後。
教団員たちより後ろの地点。
それこそ補給地点の目と鼻の先の壁が爆破された。
背後を振り返って意識を取られる教団員たち。
当然だろう、自分たちこそが増援だと思っていたのに、敵の増援も現れたのだ。
教団員全員の顔が青ざめる。
そんな教団員たちへ、伏兵となって身を隠していた『ライキュリア・アセンダー』は切りかかった。
先ずその手にナイフを握っていた戦闘員へ打撃を加える、ひるんだすきにショートボウを構える教団員に歩み寄り、そのぎらつく矢の先端から逃れるように右へ。手の甲でボウガンの銃身をそらして腹部に一撃。足をからめて引き倒し、起き上がってきたナイフ持ちに後ろ蹴りをみまう。
その隙に接近したのはメイディーン。
「よし、今!」
その手の刃でボウガンを持つ教団員を切り捨てると。その血を払って告げた。
「んー、やっぱり両手剣の方が性に合うなぁ」
直後射出されるボウガンの矢。
メイディーンはそれを回避するが、キースはそれを回避できない。
「あぶないよ!」
だがそれを叩き落としたのはライキュリアである。
一撃目を叩き落とし、二発目は切り上げた。
その回転力を生かして三発目を切り捨てると、四発目は身をよじって回避。
そして頬を伝う血をぬぐってにやりと微笑んで見せる。
飛び交う矢を避けたり、叩き落としたりしながらボウガンを持つ教団員に歩み寄り。
その恐怖で引きつった顔の目の前で。ボウガンを叩き切ってやった。
ただ、ナイフを持った教団員はメイディーンとは逆方向に逃げていく。
「敵が多い! 逃げられる」
あわてて藤原は叫んだ。
その銃でナイフをそらし。柄を使って敵を弾き飛ばす。作法から切りかかってきたナイフをかわして至近距離から肩を射抜いた。
そのままエスバイロで上空に逃げて、上空からの射撃、射撃、射撃。
だが、逃げる教団員を射抜けない。
藤原は歯噛みする。
だが、その先には平匡が立っていた。
エスバイロから降りて、徒手空拳で。獲物は構えてない。ただ銃身を上に。手足は軽く、風で柳が揺れるがごとく。
その独特の構えから狂気を感じたが教団員はすぐに止まれない。
叫びをあげながらそのナイフを向けるしかなかった。
「少し痛いですよ? 覚悟の程は?」
直後雷光のように放たれたのは平匡の足である。
一子相伝の『タイキック』を放つと、その驚異的な威力で教団員の尾てい骨が粉砕される。
「うがああああああ!」
悲鳴を上げて吹き飛ぶ教団員。壁に全身を叩きつけられ。教団員はずるずるとうずくまった。
そんな教団員たちを。前方からは咲樹の炎が、後方からはキースの魔術が焼いていく。
挟み撃ちにされるような魔術攻撃を受け、いったいどうやって逃げ出せと言うのだろうか。
下水道内は阿鼻叫喚の地獄絵図に包まれるが。
そんな光景を作り出している張本人であるキースは気楽なもので。
考えていることとしては、メルに物資の確認をさせている間に、敵をお掃除しておこうと言った魂胆。
「全てを破壊しつくせ!」
だが、お掃除はやっているうちに楽しくなるものである。キースの攻撃は苛烈さを増していった。
そのあまりに苛烈な攻撃風景に、あわててメルが止めにはいる。
「キース、熱くなり過ぎです」
仕方ないのだ。今日は締めっぽく臭い下水上で、ねずみ退治、キースはいろいろなものを我慢していた。その反動で少し苛烈になっても仕方がないのだ。感情を爆発させても……。
「まだ形を残しているのか!」
「それ以上はまずいです!」
そんなメルの叫び声が聞こえ、ようやく一行は冷静さを取り戻した。
敵は全て無力化された。
後は物資をどうするか決めるだけである。
エピローグ
「今日は僕のライブに来てくれてありがとう!」
ライブを終えるとサザーキアはそこらへんに転がっている教団員たちにお辞儀して告げる。
「僕の鬼可愛さに耐え切れなくなったのかな? みんなどこかに行っちゃったけど、ファンのためならどこにだって駆けつけるからね! また楽しもうね!」
そうサザーキアは告げながらエスパイロでフヨフヨ飛行しながらいっこうに合流した。
ちなみにそこらへんで伸びている教団員たちはライキュリアが縛り上げて引きずってきた、目を離すと何をしでかすか分からないためだ。
今回は彼女の陽動も含めて、一同の作戦はうまくはまっただろう。かなりスムーズに敵を捕縛することができた。
かろうじて息のある教団員を簀巻きにして。一行は下水道奥に積まれた拠点に足を踏み入れる。
「うわ。すごい物資の量だね。これどうする?」
メイディーンはうず高く積み上げられた、弾薬や医薬品。エスバイロのパーツやそれ本体など眺めて回る。
「奪えるだけ奪って、あとは破壊に一票かな」
その言葉に藤原も同意を見せた。
一行はせっせと自分のエスバイロに荷物を積み込んでいく。
「これくらいなら余裕余裕」
「運転に苦労しそうだな」
そうキースのエスバイロに物資を積み込んでいくメイディーン。
「運転するのは俺ではなくマナビだからな」
そう告げると、マナビは納得できなさそうに、承知しましたとだけ告げた。
一行はその拠点に背を向ける。
すると
咲樹はその拠点向けて腕をかざした。
特大の魔方陣が空中に描かれて、そして。
世界を燃やし尽くすような大火焔が拠点の物資を包んでいく。
「何かの間違えで、また敵の手に渡っても困るしね」
その言葉に頷いて藤原は予備のエスバイロなどに弾丸を放っていく。
これでこの拠点は使い物にならないだろう。
敵側の疲弊は顕著になるはずだ。
こうして任務をやり遂げた一行は栄光をその手に凱旋を果たす。
依頼結果
依頼相談掲示板