ジーン・ズァエールの俺の嫁と! 最後の日常を!桂木京介 GM) 




リザルトノベル


 静かな夜だった。
 数日来の雨はようやく去り、さやけき月が久方ぶりに姿を見せている。
 約束の時間よりいくらか遅れて、【ルーツ・オリンジ】は【ジーン・ズァエール】の部屋を訪れた。
「……入りますよ」
 ルーツが敬語を崩さないのはいつものことだが、その語調はかつてと比べどこか生硬で、よそよそしくもあった。
「なんですか、話って」
 後ろ手にドアを閉めるも、ルーツはそのままドアによりかかるようにしてうつむいている。
「わかってるだろ」
 椅子に腰掛けたままジーンは言った。
「わかりません」
 ルーツはやはり顔を上げない。
 やっぱり変だ、とジーンは思う。
 今のルーツときたら、まるで怯えた羊だ。
 余計な前置きはいらない。ジーンは単刀直入に切り出した。
「ならば俺から質問しようか。ルーツ、どうして最近、妙に俺を避ける?」
 あの日、皇帝マクシミリアンに挑んだジーンは、これまでにないほどの一体感をルーツとわかちあった。心というより肌で、互いの感覚を共有した。
 だというのに、以来、少しずつルーツはジーンから距離をあけるようになっていった。心理的にも、物理的にもだ。
 呼びかけても気のない返事をする。聞いていないことすらある。そうして気がつくと、いつの間にか目の前からいなくなっていたりもする。
 今だって、視線すら合わせようとしないのだ。
「ルーツ、お前、もしかしたら……」
「それ以上は」
 ルーツは顔を上げた。まっすぐにジーンを見る。
「ボク自身の言葉で、説明させて下さい」
 わかった、とジーンは言い、先をうながした。
「ご存じでしょう? このところスレイブに起こっている変調を。体が少しずつ動かなくなり、できないことが増えるという……行き着く先は機能停止だと言われています」
 機能停止は、スレイブにとっての死である。
「それがボクにも起こったようなのです……あの決戦の直後から」
「案の定、ってやつか」
 ジーンは息を吐き出した。
「それなら、俺は別に迷惑と思ってねえ。魂を魔石(リベラー)に宿らせるっていう方法で、この状況を解決する動きもあるって話だ。だから気にするな」
 悩んで暗くなって良くなるもんでもねえだろ、とジーンは口の端を上げた。自分なら黙ってウジウジすることより、次の手を探すほうを選ぶだろう。
 違うんです! とこのときルーツが上げた声は、ジーンすら身をすくませるほどに大きかった。
「リベラーの方法については知っています。だからボクは消滅することが怖いんじゃありません! ボクが怖いのは、マスターと接触できなくなることです!」
 魂をリベラーに移したところで、意識は残っても実体が失われることに変わりはない。消滅を避けられたとしても、ありえるルーツの未来は、肉体を持たぬ幽霊のような姿のみであろう。
「だからそうなる前に、マスター、今からボクを抱きしめて下さい。エクスタスを最大限にまで高めてほしいんです」
「いきなりどうした」
「いきなりじゃありません。この数日、ずっと考えて決めたことです」
「……それが、どういう意味なのかわかってて言ってんのか」
「わかっている……つもりです」
 これが一時の気の迷いや自暴自棄ではないことを、ジーンはルーツの表情から読みとった。
 覚悟を決めた顔だ。決闘の地に赴く剣士のような。
 色っぽい話をするには、気負いすぎの表情でもあるが――。
「大胆な誘い文句だな。気に入った」
 ジーンは立ち上がると、小動物のようなルーツの体を両腕の間に包み込んだ。
 ガチガチじゃないか――内心、苦笑する。
 想いが衝動に勝ちすぎているのだろう。ルーツの体は鉄のようにこわばり、しかも小刻みに震えていた。肌の色も白いようだ。
 さてどうしたものか、とジーンが思ったのははじめの数秒にすぎない。
 センシブルが働き始めた。互いの体温を感じ、さらに、この事実を意識することによって、ルーツの頬に赤みがさしはじめたのだ。呼吸は熱く、間隔もだんだんと小刻みになっていく。
 そしてだしぬけに、
「あンっ……!」
 下腹部に経験のない快感を覚え、小さな声がルーツの唇の間から漏れた。
 ただ抱きしめられているだけなのに――、ルーツは我が身に起こっていることに戸惑う。
 どうしてこんなに鼓動が早まるのか。
 どうしてこんなに、気持ちがいいのか。
 エクスタスが高まっているのだ。それも急激に。
 体中に炭酸水が流れているかのよう。小さく弾ける。何度も。
 ルーツは手で口を覆うもこらえきれず、指の間から甘美なうめきをあげてしまう。呼吸はさらに早くなる。
「あっ……イヤ、ですっ……!」
 たまらなくなったのか、また大きな声が出ていた。
「もうやめておくか?」
 ルーツの心がわかっていて、それでもあえてジーンは言った。
 水から上がった子犬のように、ルーツはふるふると首を振る。喘ぎ喘ぎ言った。
「大丈夫です。ちょっと……頭、ついていかなくて……もっと……どうかもっと……して下さい!」
「わかった」
 ジーンは彼女の頭に手をかけると、喰らうかのようなキスを与えた。
 唇を重ねるだけではない。舌をこじ入れてルーツの唇を割り、彼女の熱い舌を絡めとる。
 じゅるっと音を立ててルーツの唾液を啜る。
 けだものになった気分だ。最初は怯えながら、だがすぐに負けぬ勢いで、ルーツはジーンの唇に吸い付いた。
 ……これがキス。これがマスターの……味。
 甘い味だ。
 腰に力が入らなくなり、ジーンは膝から崩れた。そんな彼女を、ジーンは抱え上げ寝台に運ぶ。
 ルーツはもうされるがままだ、シーツの海にしどけなく身を投げ出した。汗でべっとりと、髪が頬に張りついている。
 マスター! そこは……!
 恥ずかしさのあまり声すら出なかった。ジーンの手が、自分の膨らみの上に乗っているのだ。
 しかも弾力具合を調べるように、手のひらを閉じて開いてしている。
 立てた指先が、尖った場所を探っている。
 切ない。狂おしいほどに。
「も……もう……!」
 ルーツは唇を噛んだ。
 自分は、『これ以上』を求めていたのではなかったか。
 ここで引き返して明日、もし機能停止したとしたら、いつ後悔すればいいのか。
もっと感じたい。彼を。体の芯で。
 心を決めたそのとき、ルーツに訪れたのは限界突破だった。
 頭の中で何かが破裂した。一瞬気が遠くなるも、すぐまた復す。
 復したとき、ルーツは爪先まで敏感で、淫らな気持ちに浸かっていた。
「……どうぞ」
 ルーツは左手で自身のワイシャツのボタンを外し、右手でジーンの手を取ってシャツの内側に滑り込ませたのである。
「どうせなら、直接、触れて下さい」
 むさぼる狼のように、ジーンはルーツのシャツを剥いだ。いくらもせぬうち、ルーツは一糸まとわぬ姿になっている。内股をきゅっと締めているのが、彼女にとって最後の一線、すでに何も隠すことはできない。
「限界突破で理性を飛ばさないと、本心が明かせないなんて……卑怯ですよね?」
 否定するかわりに、ジーンはルーツの目の縁を親指で拭った。
「ボクずっと、自分のこと、男だと思っていました。だからマスターのこと、好きになっていいのか、いつもためらって……でも、こんな状況になって、肉体がなくなってしまうことが恐くなって……今さらかもしれませんが、ボク、自分が女という事実を認めます。マスターのこと好きだって……認めます」
「よくもまあ、こんな男に惚れやがったもんだ」
「ご迷惑、でしたか?」
「迷惑なはずないだろ。そう言っていいのなら、俺も同じ気持ちだ」
 いま一度ふたりは、深い、長いキスを交わした。ジーンの手がふたたびルーツの胸に伸びたが、もう彼女は抵抗しない。むしろ体を弓なりに反らせ、進んで身を彼にゆだねたのである。
「マスター……ボクはマスターの子を授かることができません……しかも、もうすぐ体がなくなってしまいます……それが悔しくて……」
「もう何も言うな」
 涙を流し、それでも笑顔で、ルーツはジーンの頭を胸に抱き寄せる。
「でもボク、いつか必ず、体を取り戻して帰ってきますから。それが百年後、千年後になったとしても、マスターの子孫のところへ……!」
 ジーンはルーツの白い首筋に舌を這わせた。
 滑るように柔肌をなぞってゆく。下部に向かって。
 やがて我が身を貫いた感覚を、ルーツは愛する男からの刻印として受け入れた。
「ああ、マスター、マスター! 愛しています………っ!」

 そこから何度愛を交わしたか、ジーンは覚えていない。
 ただ現在、東の空が白みかけていること、ベッドの隣に、ルーツが眠っていることだけはわかる。
 ――百年後、千年後になろうと、必ず体を取り戻して帰ってくる、か。
 実現すればそれは新たな、始まりにして初めてとなるに違いない。
 ルーツの安らかな寝顔を、見守りながらジーンは思うのだ。
 だったら、来世の俺、後は頼むぜ。



 ジーン・ズァエール  ( ルーツ・オリンジ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 
スポット番号:8
場所:自宅
時系列:最終決戦からしばらくして

最近ルーツが俺を妙に避けるもんだから部屋に呼び出して問い詰めた

観念したルーツは思った通りの答えを返してきた
最近スレイブに起こってる不調。それが自分にも起こったらしい
別に迷惑でもねえしそれを解決する動きもある。だから気にするな
と思ったら、それ以上に俺に触れられなくなるのが嫌だと言ってきやがる
いきなり何をと思いきや、抱きしめてエクスタスを高めて欲しいと言い出した
スレイブは子は産めない。だからその分、俺の温もりを刻みたいという

大胆な誘い文句だな。気に入った。だからエクスタスを限界突破まで高めてやった
するとルーツはひたすらに俺を求めた。その望みを叶えるため強く抱きしめて喰らうようなキスもする
やがて押し倒し、服に手をかけ……ルーツが満足するまでつきあった

……隣で眠るルーツを見ながら俺はルーツが口にした誓いを思い出す

来世の俺、後は頼むぜ



依頼結果

大成功

MVP
 ジーン・ズァエール
 ヒューマン / ウォーリア

 ルーツ・オリンジ
 

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