リザルトノベル
「敵第三波、沈黙!」
「よし、このまま押し返すぞ!」
軍人達の声が通信を通して空に響き渡る。
ユートピア計画が阻止されてから3年。
七大旅団が空の大海原を進む中、依然として下方に広がり続けるアビスの活性化を感知した旅団連合は、招集していた防衛隊を迎撃に当たらせていた。
しかし……
「くっ、アビスから多数のヴァイレス接近! これは……!?」
「なんだ……ぐああっ!?」
これまでの形勢を覆す無数の攻撃は、細長いヴァイレス達の突撃であった。
そしてそれらは、近場の防衛隊をなぎ払うと一カ所へと収束していく。
「あれは一体なんだ!?」
「い、です……」
「なにぃ!?」
「い……イソギンチャクですよ~?!」
闇から虎視眈々と防衛隊を狙う影、それはヴァイレスが集合して生まれた新種で、先日とある浮島で発見された化石の生物、学名イソギンチャクによく似ていた。
触手はどうにも気持ち悪いだけでなく、それぞれが意思を持っているようにうねる。
(ふぅむ……これまた随分な獲物じゃな)
そんなゲテモノを眼下に捉えた【アルフォリス】は怪訝な顔をする。
アニマである彼女は実体化の道を選ばなかったため、仁王立ちをした状態で浮遊していた。
プライベートモードでなければ、腕を組み考え込むその姿は、黒い指揮官服も相まって周囲に威厳を感じさせるだろう。
(……フィールよ! 今すぐ服を脱ぎ捨てるのじゃ!!)
「よぉぉ~~し……って何でそうなるのさ!?」
そんな威厳など欠片もない言葉を言い放つ相棒に、思わずノリツッコミを決めてしまうのは【フィール・ジュノ】。
かのグレーターブロントヴァイレスを一撃で爆散し、トレジャーアイランドでは眠れる生物を討伐しフラグメントを山ほど回収した強者で、ユートピア計画の阻止は彼女無しではあり得なかったと言われるほど、巷で評判の魔法少女である。
(考えてみるのじゃ。大英雄であるお主が必死に戦う男共に、ちょっとサービスシーンを提供してやるだけで士気は向上! お主の人気上昇も間違いなし! 一石二鳥じゃな)
「いやいや!! 大体大英雄って私の経歴盛り過ぎだし、お色気路線は御免蒙りたいの!」
(誇張はあれど嘘はなかろう? それにネット上でのお主は神様扱いじゃ)
そう言って、アルフォリスはフィールの視界にネット掲示板のコメントを映し出す。
「えっと……絶対領域萌え。あの山脈に埋もれたい。先日落札したフィールちゃんの衣装でご飯3杯いけます……ってぇぇぇ?! 変態ばっかり?!! っていうか落札した衣装って何!? 聞いてない!!!」
(グチグチうるさいのう~。衣装はお主の暖かな食事のために、我が泣く泣く売ってやったのじゃよ?)
やれやれと言わんばかりに、アルは首を振る。
「うぅ……こんな事になるなら、食事なんて塩と水だけの方がマシだぁ~……」
涙ぐみつつ、ガックリと肩を落とすフィール。
だがこうなった相棒には何を言っても無駄であると、彼女自身が一番良く分かっていた。
「ええい、それよりも今は目の前の敵に集中しないと!」
フィールは深呼吸をすると正面を見据え、顔を軽く叩いて気合いを入れ直す。
(うむ、その意気じゃ。さぁフィールよ! お主の力で人々に笑顔を取り戻すのじゃ!)
「了解! 【へーんしん☆トランス】~!」
その言葉に応えるように眩い光が彼女を包み込むと、衣装を次々と変化させていく。
白を基調とした肩出しの上着に、黒いミニスカとニーソックス。
魔法少女フィールの基本形態が完成した。
「アル、いつものお願い!」
(分かっておる!)
彼女が両腕を広げると、エスバイロから2つの武器が射出される。
それは『マジ狩るチェーンソーロッド』と『まじかるバスターライフルロッド』。
きゃる~ん☆とした飾り付けや色合いを除けば、能力的には立派なチェーンソーとライフルで、魔力を込めることでその威力が倍増される、彼女お気に入りの武器だ。
(まずは触手から仲間を助けてやらんとのう。高度を下げつつ接近じゃ!)
「オッケー!」
彼女は足だけで操作できる改造エスバイロ『日輪』のブースターを点火させると、触手に襲われている仲間の元へと急降下していく。
「いや……誰か、助けて……!」
「どりゃああああ!!!」
思わず恐怖に目を瞑る防衛隊の少女。
だがその身を襲うはずであろう衝撃は一向に訪れない。
「……へっ?」
事態を知ろうと瞳を開けば、目の前には触手型ヴァイレスを切り刻む艶やかな太ももがあった。
「救いを求めるその声に、天に輝く希望をのせて……魔法少女フィール・ジュノ! 愛と勇気と奇跡を引き連れただ今到着!」
だが、そんな見られ方をされているなど露知らず。
フィールは純粋な正義感からチェーンソーを振りかざす。
「ここは私が引き受けるから早く上昇してっ!」
「は、はいぃ!」
少女が待避し始めるのを後ろ目に確認しつつ、フィールは更に接近し敵の注意を惹き付けていく。
(良いぞ良いぞ~。英雄らしいところも少しは映像に収めんとのう?)
「過剰なローアングルでビデオを撮る暇があったら、少しは手伝ってくれても良いんじゃないでしょうか!?」
(そうかっかするでない。第一、敵の攻撃パターンは解析して表示してやっておるじゃろうに~)
「くうぅぅ……何でこう無駄に優秀なのか……なぁ!」
視界に映し出される情報を頼りに、フィールは射線を確認することなく、練り込んだ魔力をバスターロッドから解き放つ。
それは桃色の粒子となって、遠くで味方の飛空艇を襲う触手を一瞬で消し炭に変えた。
(そろそろ頃合いじゃな)
暫くして、防衛隊が無事に後退出来た事を確認すると、アルフォリスはオープンモードで起動する。
「防衛隊諸氏よ! 我はかの英雄フィール・ジュノのアニマ、アルフォリスである! 我が用意し親衛隊と共に、フィールが奴を討ち滅ぼすための時間を作ってもらいたい!」
アルフォリスの宣言と同時、突如戦闘区域ギリギリから多数のエスバイロが現れ始めた。
「ちょ、親衛隊なんて聞いてないよ!?」
「ふっ。これがお主の築き上げた魔法少女としての集大成じゃ。誇りに思うが良いぞ?」
触手の対応に追われていたフィールだが、親衛隊と防衛隊の一斉射撃による援護を受け、一度イソギンチャクヴァイレスから距離をとる。
「さぁフィールよ、今こそ特訓の成果を見せる時じゃ!」
「分かった。行くよアル! 【み~らくるくる☆マジカル】っ!」
フィールが呪文を唱えると、不思議な虹色の光が彼女を包みこんでいく……!
「究極変身! フィール・ジュノ、マジカルアルティメイタム!!」
そして光の粒子が弾けると、中から豪華絢爛なドレスセットに身を包んだフィールが姿を現した。
フリル増し増しのロングスカートに、髪をポニーテールに束ねる大きなリボン。
胸元に輝くハートの宝石が目を惹く、本邦初公開のフィール最終形態だ。
「これで決めるよ!」
彼女はそう宣言し右手に高く掲げる。
すると、チェーンソーロッドの刃が90度回転し中心部から左右に分かれた。
そして分かれた刃の根元にバスターロッドをセット。全身全霊の魔力を込め引き金を引く。
「……滅殺! ファイナルバスターアローーー!!!」
それはチェーンソーロッドの刃に宿りし魔力とライフルの魔力弾が1つとなって、鳥のような形状となり放たれる【ひっさ~つ☆ファイナルダウン】を派生させた技。
空に放たれ飛翔する光輝の鳥は、触手の束もろともヴァイレスを貫き、消滅させたのであった。
「やった……やったよアル!!!」
「今じゃ親衛隊! 撮影開始!!」
「へっ?」
勝利に喜ぶフィール。
しかし共に喜びを分かつはずの相棒は、何とも奇怪なことを言い出した。
「えっ、なになに?」
その奇怪な指示に従って親衛隊達はどこからともなくカメラを取り出すと、彼女を四方八方から取り囲む位置へ移動する。
そして彼らが録画ボタンを押す正にその瞬間、フィールの纏っていた衣装は消え去り、ボディラインがくっきりと浮き出たレオタード一枚を纏うのみとなってしまった。
「ちょ!? なななな何でこんな~~!?」
「奇跡も変身も所詮は魔法。魔力の切れ目が効果の切れ目じゃ」
「特訓の時にはこんな風にならなかったでしょ?!」
「そりゃあ本番でこうして撮影できるよう、特訓中は魔力をこっそりセーブしといたからのう」
「あ……あ……アルのバァカぁぁぁぁ~~~!?!?」
こうしてフィールは、今日もまた痴態を撮影される。
アルフォリスに辱められつつも、何かを助け、誰かの笑顔を見られる日々。
きっとアルフォリスと過ごしていくこんな日々が、彼女の未来であり、懐かしむ過去となっていくのだろう。
フィール・ジュノ。
それはこの空の歴史に確かに刻まれた、正義と桃色サービスを兼ね備えた魔法少女の名である。
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フィール
グレーターブロントヴァイレス以上の強敵の討伐依頼っぽいので、全力で戦いに向かうよ。
スキルで変身して、幸運力と威力を最大強化したファイナルダウンで遠距離から薙ぎ払う。うん、接近されなければどうと言うことは無いっていうアレかなぁ。
撃って撃って撃ちまくって、もーとにかく薙ぎ払えー!接近を許さなければ服が破れることも無い!
アルフォリス
今回の大規模作戦の陣頭指揮を取るぞい。
連合から集まった艦艇の総攻撃から、フィールを切り札とした陣形で、集まった探求者による総攻撃じゃ。
志を同じくする者で、フィールの活躍(特に桃色サービスシーン)をきっちり撮影させんとな。様々なアングルから撮影させるのじゃ。
もちろん、今回の専用服もキッチリ破けるよう細工済みじゃ!工作員、頼んだぞ(黒笑)
さあ、一流の魔法少女として世界に名を残すのじゃ!ゆけぇい!(サービスシーンは忘れるでないぞぅー)
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依頼結果
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