この手が焦がすは君か未来か pnkjynp GM) 【難易度:難しい】




プロローグ


 うっすらと差す月明り。人々は寝静まり明くる日への英気を養う。
 マノリィフィア学院。集いし学生達が魔法を学び真理を探究する教育機関。

 静まり返ったこの学び場へ……今宵、招かれざる客が来訪する。





『グルルルァァァァ………………マ、……スゥ…………』







「ん、おい? ちょっとこれを見てくれ」
「なんですか、そんな大きな声出して?」

 この日、当直警備にあたっていた二人組は、センサーが異様な反応を示したことに気づく。
 調べてみると、データ上にはつい先程何か異様な温度を発する物体が、この校舎内へ侵入したという内容が表示されていた。

「こんな時間になんだ? 誰か忘れ物でも取りに来たか?」
「いや、それにしては温度が高すぎますよ。輪郭はそうですけど、この反応だと物体の温度は70度を超えてますもの」
「とにかくカメラで該当ポイントを確認しろ」
「はい」

 指示を受けた1人が反応のあった場所を監視カメラで確認する。

「何も……映ってませんね」
「おかしい……学院内全域をサーモセンサーで調べるんだ」
「少々お待ちを」

 今度は学院全体にセンサーによるスキャンをかける。
 すると、いくつかの地点で異常な温度帯を示す反応があった。

「周辺との差異が大きいのは……この5か所ですね」
「ふむ。食堂、五階研究室D、三階西側の階段、裏門、敷地内の部室棟か……よし、まずは研究室に連絡を入れてみてくれ。まだ誰かが残っているのかも知れない」
「分かりました」







 ピリリリリリリ。
 ピリリリリリリ。

 無機質で正確なリズムが鳴り響く。

 ピリリリリリリ。
 ピリリリリリリ。

「んっ……ん~……」

 その音に、この学院で魔法を学ぶ生徒、【マディス】が目を覚ます。

「あっ、マズい。こんな時間まで寝てしまうとは……」

 時刻は深夜の2時を回っていた。
 実験を見守っていた彼はついうたた寝をしてしまっていたのだ。

「実験は……よし、問題なさそうだね」

 彼が特殊な容器にかけていた熱伝導装置を停止させると、急速に冷却させた容器内にはフラグメント鉱石が現れる。

「取り敢えずこれは僕が持っておこうか」

 ピリリリリリリ。
 ピリリリリリリ。

 いい加減に出てくれ、とでも言わんばかりに鳴り続く音で我に返った彼は、内線の受話器を取る。

「もしもし。すみません応答が遅くなって……ん? はい、研究生です。教授はちょっと今、姿が見えなくて。トイレ……ですかね? はい。はい。あ、多分それは実験装置が反応したんだと思います。…………はい、お二人は探究者へ依頼後、裏門と部室棟の調査に向かわれるのですね。分かりました。取り敢えず教授と一緒に部屋で待機しておきます。……はい、失礼します」

 受話器を置くと、マディスは近くの椅子へと座り込む。

「はぁ……異常な高温物体ねぇ~……にしても教授、どこ行ったんだろう?」

 色々と考えたい事もあったが、まず一番に気掛かりなのは教授の行方だ。
 彼が覚えている限りは、一緒にここで鉱石への魔力定着を見守って一服しながら談笑していた。
 部屋の中を調べてみるものの、教授が座っていた椅子は既に冷え切っており、出されていた菓子や紅茶にも手が付けられた様子はなかった。

「確か休憩しようって話になった時は、まだ12時を回ってなかったはず。なんかおかしいぞ……」

 彼は更に入念に部屋を調べる。

「これは……持ち歩ける熱感知センサー? こんなもの無くたって、この部屋で実験中の温度は確認できるのに、なんでわざわざ? それと……あっ、この拳銃」

 彼はその拳銃を以前授業で見たことがあった。
 それはフラグメント鉱石に魔法術式を刻み込んだ弾丸を入れることで、弾を撃つのではなく魔法を放てるようになる特殊な銃の試作模型だった。

「弾が入って!? なんで……」
 
 教授は授業で扱う際にも、この銃は危険であるとして絶対に生徒に触らせなかった物だ。
 妙な不安が彼の頭を過る。

「とにかく、教授を探さないと」

 拳銃をベルトに挟み込み、センサーを手にした彼は自身の所有物である杖を持ち、部屋を後にしようとする。

「おっとと。糖分足りなきゃ魔法は撃てぬ、ってね。忠告ありがと、【ロイア】」

 彼は部屋に飾ってあった写真に写る赤髪の少年に微笑みかけると、お茶菓子として出ていたマノリィフィアカステラを口にする。口内には甘く、懐かしい味が広がっていく。

「こういう時キミがいれば心強かったんだけど……」

 教授と自分と親友。
 この写真が撮られてから、もう既に一年以上の月日が経とうとしていた。
 ロイアが実力試験の結果退学になって以来、教授やマディスでさえも彼と連絡が取れていなかった。
 退学と言っても、ロイア自身全く魔法の才能に縁が無かったわけではない。
 得意な格闘技と風の魔法を組み合わせて、この辺りでは腕の立つ人間として有名だった。

 「ロイアは術式の蓄えが無いだけなんだ。この分野がきちんと確立さえすれば、今もキミは……」

 先程ポケットにしまい込んだ鉱石を握りしめながら、マディスは思う。
 この世界での魔法は、通常の詠唱や儀式を伴う方法以外にも、魔法毎に定められた術式をアニマが管理する【メモリ】に保存することで、特殊な詠唱等を必要とせず発動する方法がある。

 だが、アニマの得手不得手や主人の魔法に関わる素養でその保存範囲は大きく左右される。
 なので、一般的には通常よりも簡略化した圧縮術式という形式でアニマに保存する者が多い。
 これならば、使用時に詠唱等のアーカイブ処理と呼ばれる作業を少々行うことで、魔法を発動出来るようになる。
 それをフラグメント鉱石に代用させられたなら……

「さて、教授を放ってはおけないし……行ってきます」

 写真に語り掛けたのか、それとも誰に言う訳でもなかったのか。
 彼は小さく挨拶すると部屋を後にする。

「うわ、流石に廊下は暗いか……」

 とっくの昔に消灯され、ただでさえ不気味な廊下は、下弦の月がほのかな青を照らす他には何もない。
 彼は魔法で杖の先から光を灯すと、一歩一歩辺りを警戒しながら動き出す。

「取り敢えず教授が行きそうな所……まずはトイレか。この階から調べてみよう」















 ピリリリリリリ。
 ピリリリリリリ。
 ピリリリリリリ。
 ピリリr。





解説


 今回のエピソードは、学園旅団アカディミアにスポットを当てたエピソードです。

 皆様はテレルバレルにて依頼を受け急行したという時点から始まります。
 装備として

  ・電池式ライト
  ・探究者同士位置が分かり連絡を取れる通信機
  ・温度センサー(低感度)
  ・その他必要だと感じる物一点(特殊な性能の物は不採用になります)

 が貸し出されます。 

 エスバイロでは学院周辺の上空調査や屋上への着陸等しか出来ません。
 内部を捜索する際には自分自身の足を使う事となります。





 目標は学院に現れた物体を調査し、学院の平穏を守る事です。

 依頼した警備員二人が知り得る情報として

  ・高温反応があった場所の詳細
  ・六階建て学院の地図

 が提供されています。

 ですから、建物の構造はある程度皆様の想像通りでしょう。

 彼らは中感度センサーと電池式ライトを持っています。
 戦闘力は低いです。

 マディスは優秀な学生です。
 魔力が豊富で特に炎魔法に精通しています。
 落ち着きもあるので事情を話せば協力出来るでしょう。
 ある程度の戦闘力も持ち合わせています。
 彼の持つセンサーは最高感度です。

 物体に関しては何も分かっていません。
 こればかりは各種推測をしてもらう形となりますが、

  ・どのような性質を持つ存在か
  ・仮に出くわした際にはどう対応するか
  ・何か物体に対して有効な手段はないか
  ・物体の正体は何か
  ・探究者同士はどう協力するか

 等の準備をしておく方が賢明でしょう。

 付近は暗く不穏な雰囲気に満ちています。
 MNDが高ければ高い程判定が有利になります。
 仲間が近くに居れば、互いが作用しそれぞれのMND値が高まります。
 またアニマが献身的に支えてくれれば、一時的にアニマのMND値に応じたボーナスが主人の能力に追加されます。

 その他事態の予測が出来ていたり、プラン内容によってMNDに有利補正が得られるでしょう。



ゲームマスターより


 プロローグに興味を持って頂きありがとうございます。
 私のエピソードに関する注意点は個人ページにございますので、お手数ですがそちらをご覧下さい。

 
 さて、お待たせして申し訳ございません、生まれ変わったのとそらへようこそお越し下さいました!
 GM側としてももどかしい部分もありましたが、再開できて嬉しく思います。
 リニューアル後の無料期間!
 再始動をかけGM陣もフルスロットルで頑張りますので、気になるエピソードがあれば是非参加してみて下さいね! 

 本題ですが、今回は変わったテイストの物をご用意致しました。
 プランに応じ様々な結末が生まれますので、是非想いを持って参加してみて下さい。
 このエピソードではステータス差はあまり意味を成しません。
 (プランによる補正を強めにかけております)
 ですのでpbw初心者の方も、のとそらの世界は今回が初めてという方も大歓迎です!

 それでは、リザルトにてお会いできることを楽しみにしております。



この手が焦がすは君か未来か  エピソード情報
担当 pnkjynp GM 相談期間 6 日
ジャンル サスペンス タイプ ショート 出発日 2017/9/28
難易度 難しい 報酬 少し 公開日 2017/10/07

 朔代胡の枝  ( カメリア
 ヒューマン | ハッカー | 15 歳 | 女性 
スターリー君と食堂に行って、片っ端からあれこれ調べるよー。
こう、うまい具合に手掛かりとか見つかんないかな。あと誰かいないかなあ。

誰かいたら話は聞きたいよね。
名前とか、どういう人なのかとか、ココで何してるとか。情報は全部カメリアちゃんに記録してもらおっと。
話ができたらいいけど、できないならもう戦闘だね、うん。
その時は相手にエクステリアメルトをガンガンかけるよ! 後衛からね!

あれの正体かー……。炎魔法詰めた鉱石かな? もう一個の銃に入れてるとか。
温度高いなら、持ってきてる冷却スプレーでプシューっとね!
これで温度下がらないかな?

色々ひと段落したら、みんなに連絡入れつつ五階の研究室Dに集合でー。
 アクア=アクエリア  ( フォブ
 フェアリア | マッドドクター | 12 歳 | 男性 
【目標】
謎物体調査と状況解決

【持込品】
小麦粉

【行動】
情報は随時共有
健康・精神状態回復は手持ちの薬で
・前半、別働
警備員にミクシィさんと同行護衛、情報収集
途中、運動部部室棟からネット拝借
・後半、五階研究室Dに集合
その場の人物から情報収集
ロイアの情報が聞けたら、退学に関して詳しく
篭城時は防火扉を閉め、金属物を挟んで鳴子に

【推測】
・謎物体の性質
高熱、視認阻害の可能性(陽炎や風魔法?
・出くわした!
遠距離:まず観察
近距離でバッタリ:背を見せず敵意を出さずゆっくり後退
なるべく会話を試み、正体や目的を確認
・有効な手段
ネット状の物で行動妨害(エンチャント可?
小麦粉を地面の所々に撒いて足跡や風の感知
・正体
ロイア?
 月瀬・沙耶  ( 燕子花
 ケモモ | アサルト | 22 歳 | 女性 
アーレニアさんと共に五階研究室Dを調査
アニマと共に部屋中を調べて何か無いか探してみる
貸出で受け取った鉄製の棒(1.5m程)は護身用と何かあった時の為、転ばぬ先の杖
他の人達と連絡を取り合いつつ、研究室から外の様子も見てみる
一通り調べた後、同じフロアで何かないかフロア全体を調べてみる

もし戦闘になったらカウンターアタックで応戦しつつ他の人に救援要請
自分の居場所と救助者が居るかどうかをなるべく正確に伝える

推理とかは苦手なので登場人物全員を辞書で殴って気絶させれたらいいのですが…ここなら分厚い辞書とかありそうですね
教授の持ち物などが落ちていたりしませんかね…
そういえば他の皆さんは大丈夫でしょうか…
 アリシア・ストウフォース  ( ラビッツ
 デモニック | マッドドクター | 18 歳 | 女性 
心情
なんか…色々やばそーな雰囲気の依頼ー
一番怪しいのは教授だけど…ロイアさんの状況もちょっと気になるな―

行動
ワタシはまゆゆさんと一緒に行動!
異常な温度帯を示していた場所の一つ、三階西側の階段を重点的に探すよー
高い温度ってことで対応策としては瞬間冷却剤持っていこうかな…相手に投げつければ衝撃になって冷えるはず
今のところ、何にも物体について分かってないのか―ワタシのチームは戦闘力に自信がないし、見た目的な性質の把握に務めよー
もし怪我してたら【ファストヒーリング】!治すのは任せて!

あと熱の原因はフラグメント鉱石な気がする
術式が暴走しちゃって熱暴走とかありえるよねー
推理だから実際どうかわかんないけど!
 アーレニア=シャゴット  ( アンサー
 デモニック | スパイ | 16 歳 | 女性 
キヒヒッ…随分と『面白そう』なのが居るみたいだねェ…?
まァとりあえず見て回るとするかねェ…
歩いていりャあ何かに出会えるだろうしねェ…
斬ッて殺せるものなら楽しいが…斬ッても殺せない方がなお面白いかもねェ…
協力ゥ…?
そんな面倒な事はしないよォ…まァ誰かが見つけたんならそこに言ッて横取りはするけどなァ…
 まゆゆ  ( ゆゆゆ
 ヒューマン | ハッカー | 15 歳 | 女性 
アリシアさんとチームを組んで行動なのです

●事前
学院の地図などは端末にインストールしておきます

●一品
端末にインストールできる各種センサー

●探索
三階西側の階段を探索
ゆゆゆにもセンサーの監視を手伝ってもらいますのです

カメラでは確認できないものを探してみますのです
フラグメント鉱石とか、儀式の印っぽいのとか、あるかもですしね

調べ終わりましたら、連絡して五階研究室Dに向かいますです

もしなにかいたときは、連絡してから
みんながくるまでなんとか持ちこたえるのです

●戦闘
後衛から、魔法射撃戦、したいと思うのです

まずはエクステリアメルトを使って弱点を共有
マークを付けたら、そこをマジックミサイルで攻撃していきますですね
 スターリー  ( フォア
 デモニック | 魔法少女 | 23 歳 | 男性 
・目的

事を解決して報酬をふんだくる

・動機

校内に不審者が出たって訳じゃなさそうだ。

熱源の正体…”黒い靄”か?
アレは周囲のエネルギーを吸うから、吸ったエネルギーが熱に変換されてもおかしくない。

いやしかしな…情報が足りねえ。

【マディスから事情を聴いた後】
鉱石に毒性はないのか。
…それが人間を変性させる可能性はあるかと聞いてるんだ。
人が異形と化す事例は、あるだろ。

…その銃はアレに効くんじゃないのか。

・行動

ゴネて中感度センサーを貰う。
通信障害が起きると面倒だ、連絡用に笛も持ってきた。

2人ずつで手分けして探すんだったな。
朔代胡の枝…コノエ、俺達は食堂だ。

アタリを引いたら魔法をぶっ放して校庭にでも逃げるかな。
 ミクシィ  ( ミヤビ
 デモニック | マーセナリー | 20 歳 | 女性 
アクアちゃん、警備員2人と共に裏庭・部室棟から回っていきますの。
私の主なお仕事は護衛。
周囲を警戒しつつ進むのはもちろんのこと、微かな熱を感じないかどうか、等にも気を付けて、熱を放つ見えざる敵に注意します。
もちろん、警備員が持つ中感度のセンサーにも少しだけ期待してみましょう。
恐らく、警備員の持つライトの灯を頼りに進むこととなるでしょうし、その光の揺らめきがあるかどうかでも、熱を持つ敵の接近を判断出来ればと思いますの。
私はハンドアクスを手に護衛を務め、戦闘時はその熱の方向を敏感に感じることで敵に目星をつけ攻撃を行う事とします。
但しそれはアクアちゃんがしたいこと終わってからで、最初は防戦に務めます。

参加者一覧

 朔代胡の枝  ( カメリア
 ヒューマン | ハッカー | 15 歳 | 女性 
 アクア=アクエリア  ( フォブ
 フェアリア | マッドドクター | 12 歳 | 男性 
 月瀬・沙耶  ( 燕子花
 ケモモ | アサルト | 22 歳 | 女性 
 アリシア・ストウフォース  ( ラビッツ
 デモニック | マッドドクター | 18 歳 | 女性 
 アーレニア=シャゴット  ( アンサー
 デモニック | スパイ | 16 歳 | 女性 
 まゆゆ  ( ゆゆゆ
 ヒューマン | ハッカー | 15 歳 | 女性 
 スターリー  ( フォア
 デモニック | 魔法少女 | 23 歳 | 男性 
 ミクシィ  ( ミヤビ
 デモニック | マーセナリー | 20 歳 | 女性 


リザルト


●2:20 ~5階フロア~
 依頼に集った探究者は7人。
 対象を効率的に調査するため話し合いを進める彼らだったが、いつになっても最後の1人が姿を現さない。
 このまま調査を遅らせるわけにもいかない7人は、諦めて各々担当箇所へ赴いていた。

「……さて、どうしたものでしょうか」

 そんな状況下、屋上から5階へとやってきた【月瀬・沙耶(つきせ さや)】は、通信機を見つめながら思案にふける。
 見ていたのは各探究者の位置情報。未だ姿の見えぬ探究者【アーレニア=シャゴット】の位置を探していたのだ。
 この学院内であれば、探究者の位置は相互通信により正確に表されるはず。だが、通信機に彼女の反応はない。
 つまりそれは彼女が学院に来ていないか、あるいは……

「……ふむ」

 いや、結論をつけるにはまだ早い。
 判断を先送りにした彼女は次に周囲を確認する。
 目についたのは、廊下の電灯のスイッチ。
 数回レバーを左右に倒してみるが、蛍光灯は一向に役割を果たそうとしない。

「…………ふむ」
(……沙耶様?)
「電気がつきませんね、燕子花」

 彼女は薄紅色の扇を華麗に広げると、自身のアニマである【燕子花(かきつばた)】に語りかける。
 口元を隠し、瞳を閉ざす月瀬の姿からその意図を図ることは難しい。
 だが燕子花には、それが自分自身の回答が期待されているのだと思えてならなかった。
 ではその答えとは何だろうか?
 主人の信頼に応えるため、よくよく考えて言葉を選ぶ。
 
(あの~……テレルバレルでお借りしたライトで照らしてみるのはどうでしょう?)
「……はぁ」
(溜息!? ちょ、タ、タイム! タイムです!)

 必死にスイッチとにらめっこをする燕子花。
 何故ライトを使うという事が拒まれるのか。廊下を照らすだけならそれで事が足りるはず。
 もしや初対面であるこの電力制御機器に言う事を聞かせるよう調教しろとでも言うのだろうか。
 当然彼女はスイッチに触れる事も叶わず、ましてや電力システムにアクセス出来ないこの場所ではどうにもならないのだが、そんな事で諦めていては月瀬のアニマは務まらない。

 月瀬はそう意気込む彼女をしばし静観していたが、急にそっぽを向くと音もなく歩き出す。
 燕子花がそれに気づいた時には既に研究室Dの前に辿り着いていた。

(あれ? 沙耶様~!?)
「いつまで阿呆な事をしているのです? 私達が調査するのはここですよ。全く貴女と言う人は……」
(へっ? あ、はい、すいま……ってそれはこっちのセリフのような…!?)





●2:25 ~裏門~
 一方、裏門へと向かった【アクア=アクエリア】と【ミクシィ】は、無事に警備員との合流を果たしていた。
 彼らの眼前には一部溶け落ちた門が鎮座している。

「うわぁ……これ、銀で出来てますよね? これを溶かすなんてどんな方法で……」
「分かりません。警備室で調査した限りでは、物体が侵入したのはここで間違いないようです」
「他に物体に関して何か分かっていることはありますか?」
「さっぱりです。一応これがカメラの映像と、サーモセンサーの映像になります」

 映像を興味深く見比べてみると、事前情報の通りカメラの映像では姿が見えないが、センサーの映像では確かに何かが蠢いていた。

「人型っぽい感じですけど~……それにしては体温? が高すぎますし。む~ん……」
(普通じゃあり得ないし、やっぱりアビスメシア教団とかの仕業? いやいや、もしかしたらこんな不思議生物が存在するのかも? でもなぁ~……どのみちこんな温度で触れられたらやけどじゃ済まないし、もし危険な存在なら戦うしか……)

 タレ目気味のドングリ眼をこれでもかと見開きながら、必死に何かを探り当てようとするアクア。
 力んだ肩は持ち上がり、唇はどんどん尖っていく。
 そんな様子を見かねたミクシィは、彼の両脇にそっと手を入れるといきなりその体を持ち上げた。

「んにゃ!? ミミミクシィさん!!?」
「そんなに画面を凝視したら目を悪くしてしまいますわよ? それに、アクアちゃんにはもっと楽し気なお顔が似合いますわ♪」

 アクアを揺すり、強張った体を楽にさせつつ彼女は、アニマである【ミヤビ】をオープンモードで起動させると、仲間にこの映像を送る。

「どうやらここは溶けた門の残骸が反応していただけのようですし、後は……そうですわね、皆様には高温注意、とでも送っておけばいいでしょう。取り敢えず調査する箇所は残っていますから、歩きながら考えてみるのはいかがです?」
「あ、あの、それはいいと思うんですけど! 一旦降ろしてもらえると、そのぉ……」
「あらあら。これは失礼を? うふふ」

 いたずらっぽい笑顔を浮かべ優しく彼を下ろすミクシィに対し、アクアの顔は完熟りんご、といったところだろうか。
 普段主人であるアクアをからかって楽しんでいる【フォブ】もこれには大爆笑である。

(いや~ミクシィ姉ちゃん最っ高だよ~! あはははっ! 赤ちゃんみたいでかっわいいよ~)
「フォブ! 笑ってないでちゃんと付近の探知しててよ?!」
(あいあいお~! ぷーくすくす)
「ぐぬぬぬ……!」
「……アクアちゃんのその顔、フォブちゃんが着ているナース服でやってみてもらえません?」
「な、何でですかっ!」
「可愛いかと思いまして?」
「ボクは男の子ですっ!!」
「え、オトコノコ? それがいいのではなくって?」
「ミクシィさんの中でボクって一体……?」
(愛玩動物? まぁあくあんも素直になって、ウチみたいに着飾ればいいと思うよ♪)
「んな!? ボクにそんな趣味はないよ!」
「うふふ。ナースがお嫌いなのでしたら、私のゴスロリドレスかミヤビちゃんのメイド服も選べましてよ?」
「そうじゃないですってばー!?!」

 気づけばアクアの不安はいつの間にか吹き飛んでしまっていた。
 恐怖や不安は、時に人の判断を歪ませる。
 知人であるアクアの護衛を引き受けた以上、体だけでなくその全てを守るというのが、ミクシィの決意であった。 
 警備員達の顔にも笑顔が浮かび、2人は彼等から話を聞きながら部室棟へと歩を進めていく。





●2:30 ~1階食堂~
「ちっ。アイツらは何をやってんだ」

 【スターリー】は通信機から聞こえるアクアの妄想着せ替えショーに苛立ちを隠せないでいた。

「どうしたのースターリー君。顔が怖いよー?」
「悪いが生まれた時からこの顔だ。それより映像の解析はどうだ、【朔代胡の枝(さくしろ このえ)】?」

 彼に問いかけられた少女は、かしげる首と共にその美しい緑髪を揺らす。

「今【カメリア】ちゃんにやってみてもらってるけど……どう?」
(残念ですがコノエ、この現象を分析するには、情報の密度に欠けますわ)

 ハッカーである彼女と、アニマであるカメリアの力をもってしても映像から新たな情報を見出すことは叶わなかった。

「頼みの綱はこのセンサーだけかぁー。ま、折角来たんだし、片っ端からあれこれ調べてみよー!」

 おー! と言わんばかりに手をあげると、彼女はキッチンの方を調べ始める。
 ドキドキワクワク、未知との遭遇。
 まるで肝試しにでも来ているかのような様子で物怖じしない胡の枝に、スターリーは逞しささえ感じ始めていた。

「まぁいい。さて、ここの熱源は……」

 辺りをセンサーで確かめてみるが、感度が悪いのか熱源に相当接近しなければ反応しそうにない。
 特に多数の学生利用を想定した食堂は広く、あてもなく探すには性能が不足していた。

「くそっ。こんなんだったらもっと感度の良いセンサーでもふんだくるべきだったな」
(スターリー、気持ちは分かりますが無い物は仕方がありません)
「煩い。フォア、センサーにエンチャントをかけてくれ。本来の機能に頼れない以上やり方を変える。俺の魔力をこいつから放出させて怪しい魔力が無いか調べるんだ」
(それではあなたが……)
「良いからやってくれ!」
(……分かりました)

 スターリーのアニマである【フォア】は、センシブルを発動する。
 最大限の演算効果を付与されたセンサーは、周囲の熱を集め計測する構造を逆に利用し、魔力を発する機械と変わる。
 当然これは彼の魔力が続く間しか持続出来ないが、別の魔力に触れれば跳ね返りが起きるはず。
 センシブルと魔力放出の併用という負荷の大きい手法ではあるからこそ、チャンスは一度しかない。
 スターリーは一層集中力を高めていた。

「これで……どうだ!」

 彼は再度室内を探査する。
 彼の全力の魔力放出はこの空間だけでなく、1階フロア全てを調べられるほどに強力だった。
 胡の枝や他の探究者以外に魔力を発する存在があれば、すぐに見つけられるだろう。
 
 しかし。
 隅々まで調べてみたが、この食堂やフロアには期待するような魔力源は見られなかった。

「ハズレ……か」

 センシブルの発動時間も限界を迎えようとしたその時。
 たまたま天井に向けたセンサーが、一瞬の反応を見せる。

「おい、フォア」
(ええ、間違いありません!)
「……見つけたぞ!」

 微かに感じた異様な魔力。
 一瞬だけであったが彼の頭の中には、炎を纏った人型の何か、というイメージが浮かんだ。

「アビスの仕業、ではなさそうだが……面倒なのは間違えねぇようだ。 おい、朔代胡……」
「はひ? ふはーひー君、はひかみふけたの?」
「……」
「……ごくん」
「なぁアンタ、一体何してた?」
「別に何もしてないよ? コノさんはコノさんだよ? ホントダヨ?」
「……美味かったか?」
「そりゃあーもちろん! ここのカステラは甘党女子必食のアカディミア隠れ名物だからねぇー。いやー満足満足」
「そうか……アンタが馬鹿正直なのはよく分かった」
「ゴメンゴメン。別につまみ食いしたかった訳じゃないのは本当だよー。センサーに反応したのがオーブンだったから、開けてみたらなんとびっくりー、的な……さ。その目は止めよ? ボク泣いちゃうよ?」
「ならアンタはここで菓子でも喰ってろ。熱源の正体も判明した以上、俺には留まる理由がない。ここからは別行動だ」

 それだけ言うと、スターリーは食堂を飛び出し西側に向かって走り出す。

「あっ、ねぇちょっと! あちゃーまずいねぇ……怒らせちゃったかな?」
(コノエ、スターリーは先程多量の魔力を使用したようですわ。どう致しますか?)
「……まぁカステラは美味しく頂いたところだし、仕事しないとね。取り敢えず追いかけよー。あ、カメリアちゃん。ここの調査結果、みんなに通信お願い」
(了解ですわ)





●2:40 ~3階西側階段~
「あ、胡の枝さんとアクアさんから連絡だ。えっとまずは……食堂の熱源はオーブンの予熱、中身はカステラ、味美味し。だってー」
「むむ!? まさかあのマノリフィアカステラなのです!?  ずるいのです! わたしも食べたいのですー!!!」
「へー、ここの美味しいんだ。アタシお菓子とか詳しくないから全然知らなかった!」
「ではでは、今度は一緒に食べに来ましょう! アリシアさんとはまだまだ話したい事が山積みなのですっ♪」

 胡の枝の通信に盛り上がりを見せるのは【アリシア・ストウフォース】と【まゆゆ】の2人。
 探究者達の集合した正門は東側にあることもあり、広い学院の西側に到着する頃には時間が経過していた。
 しかし暗い道中などものともしない女子トークが、途切れることなく花を咲かせている。
 といっても最初からこうだった訳ではない。
 電脳世界が好きすぎるために引きこもりをこじらせているまゆゆは、最初こそ人見知りをし大人しかったものの、アリシアと共通の友人がいた事もあり、仲良くなることにさほど時間は必要なかった。

「ささ、アリシアさん! 学院西側に到着なのです!」
「まゆゆさん道案内ありがとー。それじゃ、目標は3階だから……」
「学校の階段……このまま登っていくのですっ! 【ゆゆゆ】も、しっかりセンサーを監視するのですよ」

 左手に握りしめた入力端末を見つめながら、一歩一歩、段数を数えながら登っていくまゆゆ。
 サイドテールの先をくるくるとする姿は、彼女が集中しているサインだ。
 普段あまり垣間見ることの出来ない、真面目さを感じさせる振る舞い。
 注視している画面に表示されているのが『よく見える! 万能オカルトセンサー』の駆動画面で無ければ、その振る舞いも活きるのではないか、とは彼女のアニマであるゆゆゆ談。

「ふぅ……24段。調査通りなのですっ」

 まゆゆが残念なセリフを口走る中、アリシアは急に立ち止まってしまう。
 
「アリシアさん? どーかしましたですか?」
「まゆゆさん……皆に連絡してくれるかな」
「ん? 何か見つけたです?」

 彼女は足元ばかりを見ていた顔をあげ、アリシアの背からその先をひょっこり覗き込む。
 

 視線の先、階段の踊り場には1人の人間……だったものがいた。
 立って壁に寄りかかるようなその体は、青白い炎に焦がされて。
 両の手首に刺されたナイフは、逃げる事を許さぬよう強く壁に打ち付けられていた。
 足元には燃え残った白衣とネームプレート。ひび割れた眼鏡は、持ち主の年季を感じさせる。

 だがそのようなものはあくまで副次的発見に過ぎなかった。
 
 何故なら本当に驚くべき事は、目に見える惨劇の傍らに、目に見えぬ何かが佇んでいる事なのだから。

 アリシアは小さく深呼吸をすると、センサーの示す何かへと、瞬間冷却剤のカプセルを投げつけた。





●2:35 ~部室棟~
 少し時は遡り、裏門から部室棟への道のりも終わろうという頃。
 アクア・ミクシィチームは年老いた警備員から学院内部の話を聞いていた。

「じゃあ、ロイアさんは自分の教授に退学させられたんですか!?」
「多分な。普通なら学科補習があるところ、あいつは気にくわない生徒にその措置を施さなかった実績がある」
「ですが先程の話では、3人は仲が宜しかったと?」
「関係なんてどこで拗れるか分かったもんじゃない。まぁ、理由があるとすれば……」
「あるとすれば、なんです?」
「昔の自分達に似てたのが癪に障ったのかもな。あの凸凹コンビが」
「御三方、お話し中申し訳ないんですけど、部室棟着きましたよ?」
「あ、すみません。それじゃフォブ、今の情報皆に共有しといて」

 若い警備員の言葉に、3人の会話は途切れる。
 警備員の持つセンサーには、ある部室で何か熱を発する物体があることが示されていた。





●2:45~3階西側~
「アアァァァ!?」

 アリシアのカプセルは、何かに命中しその中身をぶちまける。
 弾け飛んだ冷気は磔の人物の炎を消し、踊り場に異形の姿を顕現させる。

 悲痛な叫びをあげるそれの体からは、急速な温度変更で蒸気が立ち上る。
 2人はその声で確信してしまった。きっと、この異形も恐らく人なのだろうと。

 鎧で身を固め膨れ上がったようなその体表は、埋め込まれた鉱石が放つ鈍い光に覆われていた。

(あ、アリシア! あれきっと魔装じゃない!? ちょっとヤバめの!)

 医療を生業とするアリシアのアニマ【ラビッツ】でも、見た事の無いような魔装。
 長寿の為でも、戦闘力強化の為でもない、夥しい数の石ころを埋め込むためだけの全身改造。

(推定値は表面温度70度前後。魔装内部温度45度以上。どうやら熱の原因は外装にあるみたいだね)
(魔装化は普通魔力を失うはずなのにすごい魔力値! 多分あの鉱石は!)
「フラグメント鉱石……」
「皆さん、聞こえましたですか!? とにかく近くにいる人はここに来て欲しいのですっ!」

 ゆゆゆやラビッツの分析から熱の原因を断定した2人。
 しかし探究者達が振り分けた当初の捜索場所からでは、とても救援は間に合わない。
 はずだったのだが。
 対応に悩む彼女らに、思わぬ介入があった。

「キヒヒッ……やっと面白いのに出会えたねェ……!?」 

 突如3階部分から踊り場へと飛び出した影は、異形の胸にナイフを突き立てる。

「ウガッ!?」

 厚い装甲に貫くことは叶わぬものの、高低差を利用した強い衝撃でのけ反った異形。
 影はその隙を見逃す事なく、アリシアとまゆゆのいる階下へと蹴り飛ばす。

「きゃー!!!?」
「ちょっとアナタ! 何考えてるのさ!?」

 なんとか落ちてくる異形を避ける2人。
 彼女達の見上げる先には、行方知れずだったアーレニアの姿があった。

「キヒヒッ……オマエラに出番はねェよォ? ソイツはアタシらの得物なのさァ……!」
(さぁ化け物……オレらに見つかった事を喜ばしく思いながら死になぁ!!)

 彼女のアニマ【アンサー】もまた、異形を狩る事だけを楽しんでいた。

 「さァ……分かったらそこをどきなァよォー?!」

 2人への興味を失ったアーレニアは、彼女達を飛び越えると異形に迷いなく切りかかる。
 首元や心臓、右胸下に輝く一際大きなフラグメント鉱石など、目に付く場所を手当たり次第に攻撃するが、致命傷には至らない。
 それどころか、至近距離で対峙し続けるアーレニアは蒸気を直接に浴び続けるために、その肌は焼け始めていた。

「どど、どうしましょうアリシアさん?! このままじゃ!」
「確かにあっちも気になるけど……アタシは」

 彼女は、壁に磔られた何かを、せめて安らかな姿勢にと動き出す。
 その際に、落ちていたネームプレートが横目に見えた。

(この名前、さっき連絡があった教授さん……)

 一瞬顔をしかめるアリシアだったが、すぐに真剣な表情に戻ると教授の遺体を磔から解放する。

(助けられなくて……ごめんなさい……。ん? これ……)


 握りしめられた彼の手には、小さなペンダントがあった。
 中には教授と共に、笑顔を浮かべる2人の少年。

「アリシアさん、みんなに今の状況を連絡したです! それは、写真……です?」
「せめて……助けないと……」
「へっ?」

 一方アーレニアの方は当初優勢だったものの、冷却剤の効果が切れ始めたこともあり、異形に圧倒され始めていた。

「アアァァ!!」
「チッ!」
 
 なんとか防御姿勢を取るものの、大きく薙ぎ払われた腕に弾き飛ばされるアーレニア。
 しかし、その体はスターリーによって抱き止められる。
 まゆゆの連絡にこの場所に向かっていた彼は、救援に駆けつけたのだ。

「ぐあっ…! ミクシィの通信を聞いて無かったのかアンタは!」
「キヒヒッ……! うるさいねェ……! 今いい所なんだァ、身が焦がれるほどの快感なんだよォ……?」
「わりぃが死体が増えるのはもう沢山だ」

 戦う意思の消えない彼女だが、既に彼女自身の体が熱源と言えるほどの高温になっていた。
 これでは勿論戦い続ける事は出来ない。
 スターリーは彼女を降ろすと異形と向かい合う。

(踊り場の2人を危険に晒すわけにはいかない。だが……)

 スターリーもまた、様子には見せないものの限界が近づいていた。

「やり過ぎたってことか……くっ!」

 一瞬、彼の体を蝕む病が動きを止める。
 異形はその隙を見逃さなかった。

「しまっ…?」
「ストーップ!!」

 前からの衝撃を覚悟した彼の横を、後ろから2つの何かが通過する。
 1つは人の身の丈ほどもある鉄の棒。それは的確に鉱石を捉える。
 もう1つはカステラ。熱に焼け甘い匂いが近くに充満し始める。
 振り返った彼の後ろには月瀬と胡の枝、そしてマディスの姿があった。

「……転ばぬ先の杖、のつもりでしたが。投げ槍の練習にも使えそうですね」
「ナイスだよー沙耶君。さてさて、君はロイア君で合ってるかな?」
「アアァ……」

 カステラの香りに、暴れるのを止める異形。
 これは彼の動きを止めるスイッチであるらしい。
 途中月瀬達と合流した胡の枝は、それを聞いて急いでカステラを取りに戻っていたのだ。

「どうやら……日記の通りの様ですね」

 月瀬は研究室で見つけた電子データが真実であると確信する。
 そのデータには、教授が学生を敢えて退学させ裏の社会で売りさばいていた事から、学生達に行った実験の内容、その対処法までもが記されていた。

「辞書並みに厚いポエムを読まされるのは殴りたくなる程度に苦痛でしたが……炎魔法によって外気との気温差を生み出し、陽炎のように揺らめいてその姿を消し去る悪魔の技術。もうカラクリは読めています」

 彼女の攻撃により胸の鉱石にはヒビが入っていた。

「さて、マディスさん。どうするかは貴方次第ですよ」
「僕は……」

 一番大きな鉱石を撃ち砕いたならば。
 魔力の本流は行き先を見失い、鎧は外れ、装着者自身を媒体として燃え上がる。

 彼は、変わり果てた親友へ、教授の遺物を向ける。





●5:00 ~学院屋上~
 学院は朝日と共に静寂を取り戻した。
 いつの間にか消えていたアーレニアを除き、一行は集合し状況を確認する。

「じゃあ、ロイアさんは無事だったんですね!」
「ええ。想定外の事態ではありましたが」
「まるで死んでしまった言い回しでしたけれど? うふふ」

 その場に居なかったアクアとミクシィに敢えて誤解を生みそうなあらましを説明する月瀬。
 結論から言えば、マディスとロイアは現在病院で治療を受けていた。

「まゆゆさんの名推理を飛ばしちゃうなんて勿体無いよ!」
「あ、アリシアさん?! わたしそんなつもりではなかったのですっ!」

 マディスが銃を撃とうとした時、まゆゆはそれを制止した。
 教授が彼と最後まで研究していたのは何だったのか。
 教授は何故最後の瞬間までペンダントを握りしめていたのか。
 その疑問は銃の弾を、研究室で完成した鉱石に入れ替え撃った時、はっきりした。

「写真を見た時確信したのですっ! きっと教授さんはロイアさんとマディスさんを本当に愛していたのだとっ!!」
「まさかロイア君が燃え上がる代わりに、鉱石が蒸発して消え去るとはねぇ~。身代わり人形……というより護り石? はい、スターリー君。これ使って」

 胡の枝は持ち込んでいた冷却スプレーで濡れたタオルを冷やすと、アーレニアを受け止めた時の火傷を押さえるよう促す。
 スターリーはそれを受け取ると、少し距離を置きつつ座りこむ。

「何でわざわざロイアで実験をしなくちゃならないんだ?」
「それは多分、これだと思います」

 アクアはスターリー達に部室棟で見つけた教授の携帯を見せる。

「データはほとんど消されてたんですけど、教授に指示していた人物がいるみたいなんです」
「ご丁寧に、部室棟にはブービートラップが張り巡らされていましたの。アクアちゃんの小麦粉のおかげで、ピアノ線が良く見えましたら引っ掛かりはしませんでしたけれど。事件発生時携帯へした連絡が切られた。という警備員さん達の証言から考えますと、あそこには誰かがいらっしゃったようですが……」

 その時、屋上へ持ち込んだミクシィのエスバイロからミヤビが呼びかける。

「さて、お茶の準備が出来たようですわ。今は1人の命を救えた事を良しとしませんこと?」

 彼女の微笑みに、一行は小さな勝利を祝う事に決めた。



依頼結果

成功

MVP
 アクア=アクエリア
 フェアリア / マッドドクター


作戦掲示板

[1] ソラ・ソソラ 2017/09/22-00:00

おはよう、こんにちは、こんばんはだよ!
挨拶や相談はここで、やってねー!  
 

[27] まゆゆ 2017/09/27-22:19

アリシアさん、ありがとうございますのです。
月瀬さんも、五階の担当、ありがとうございますのですよー!

それではわたしたちは、階段をしっかり調べましょうなのですー。
階段の怪談、楽しませていただくのですっ♪

合流地点の五階も了解なのです。
みんなで謎を解き明かしちゃいましょうですねっ!  
 

[26] 月瀬・沙耶 2017/09/27-20:48

えぇ。わかりました。五階研究室Dを調べてみますね。

アーレニアさんの反応がないのが少々気がかりですが…まぁ何とかしましょう。  
 

[25] アクア=アクエリア 2017/09/27-01:09

ミクシィさん感謝です!
そういう訳で、ボクはミクシィさんと警備員さん二人に同行して裏庭・部室棟を回ります。
警備員さんからの情報収集と、部室棟に運動部で使っている「ネット」があればそれを拾ってくるつもりです。
その後の合流地点は、五階研究室Dですね?  
 

[24] アリシア・ストウフォース 2017/09/27-01:00

うん、い-と思う!
後探検していない残りは-五階研究室Dか!月瀬さん達に頼んじゃって大丈夫かな?  
 

[23] まゆゆ 2017/09/27-00:31

えっとえっと、それでは、アリシアさんとわたしは、
「三階西側の階段」に行ってみたいと思うのですが、アリシアさん、いかがでしょうかっ?  
 

[22] アリシア・ストウフォース 2017/09/27-00:18

あんまり発言できて無くてごめんー!
ワタシはまゆゆさんと動けばいいんだね?おっけー!
今探すのが決まっている所は食堂だけ…かな?
あとは皆の位置は通信機で分かるから、被らないようにしつつ探すって感じだよねー。  
 

[21] 朔代胡の枝 2017/09/26-23:43

おー、食堂ね。おっけおっけ。
ドンパチかあ、まあ何があるかわっかんないもんねえ……それくらいの事が起きてもおかしくないくらいには考えとこ、うん。
ついでに何かおかしい事ないか調べたいねえ。……つまみ食いなんて考えてないよほんとだよ。  
 

[20] スターリー 2017/09/26-23:07

行く場所を譲り合いする時間もない。…どの道全部調べなきゃならん。
強引に話を進めるが、先着順だ。

朔代胡の枝…コノエ、食堂に行くぞ。
広くてドンパチがしやすそうだ。  
 

[19] スターリー 2017/09/26-23:03

あー、時間もねえし仕方ねえか。
月瀬の表から朔代胡の枝とミクシィを入れ替えた2:2:2:2で行くつもりで書く。

俺と朔代胡の枝だとちょいと物理的な攻撃は心配だがMNDがそれなりにある。
リスクはあるが…リターンを確実にする為に2人組が避けれんなら、仕方がない。

後はそれぞれの組で行く場所を決めて、何もなければ五階研究室Dに集まる。
それでいいな?

 
 

[18] ミクシィ 2017/09/26-20:50

それでは、私がアクアちゃんの方に同行いたしましょう。戦闘は少し自信がありますので?  
 

[17] アクア=アクエリア 2017/09/25-23:57

ボクとしては警備員さん二人と同行したいんですが、できれば強い方にご一緒していただけると助かります…。
今、校内にいると確定してる人物の詳細情報(顔、特徴、噂など)とか、わかる範囲でもらえるかなー?とか画策してます。
何気にこの二人だけなんだよね、客観的情報源…。
 
 

[16] アクア=アクエリア 2017/09/25-23:07

更に混ぜっ返すようですが、4:2:2というのもありですね。
一番押さえたい所に4人チームを当てて、残り2チームで残りを調査する感じで。

マディスさんへの最速接触は、屋上にエアバイロで乗りつけて5Fに降りる方法かな?
 
 

[15] 月瀬・沙耶 2017/09/25-23:05

【振り分け】
・A
朔代胡の枝
アクア=アクエリア
・B
月瀬・沙耶
アーレニア=シャゴット
・C
アリシア・ストウフォース
まゆゆ
・D
スターリー
ミクシィ

班分けは上から順にし、マッドドクターとハッカーを同じにしてみました。

…まぁ別段マッドドクターとハッカーを同じにする必要性はそんなに無いかな、と思い始めてきましたが。  
 

[14] 月瀬・沙耶 2017/09/25-23:02

で、上空からの目視確認ですが夜間ですので効果は薄いかと思いますが…それでもやるとすれば、定期的に上空から捜索し、それ以外は地上で捜索がいいかな、と。
上空からの捜索は決まった人がやるのが混乱が少ないと思います。  
 

[13] 月瀬・沙耶 2017/09/25-23:00

…期間も少ないですので、人数分けは2:2:2:2で…最小単位で動いて、対象を発見したら通信機で呼び合い合流。又襲われたら集合地点へと向かいつつ全員をそこに招集、とかが妥当かと。  
 

[12] 月瀬・沙耶 2017/09/25-22:52

ハッカーの方には最初に監視カメラ等にハッキングして異常がないか確認する、というのも必要かと。チェックする場所を選定するためでもありますが。

あと、どのように分けるにしても、ハッカーとマッドドクターの方は別々の班に居たほうがいいかと。  
 

[11] スターリー 2017/09/25-21:26

体を張って前に出れる奴が少なそうだ、4人2組を推す。
MND云々の事もあるしな。

通信機もある事だし、4:3:1で分けて1人にはエスバイロで上空から異常がないか見張って貰うのもアリだとは思うが。
謎の熱源が敷地外に逃げるのを防げるし、対象が目視できるなら裏門も常に見張る事ができる。

五階研究室Dは学生が居たんだろ?
行くなら最初に学生を探しに行くか、最後に一応調べに行くかになるだろうな。  
 

[10] まゆゆ 2017/09/25-21:26

あれ? あれっ!? ご挨拶すらしていませんでした!? 
ごめんなさい! ハッカーのまゆゆなのです!

わたしも、捜索は2人ペアの4チームでさがすのがいいと思うのです。

何かあったときの連絡手段だけはしっかりしておかないと、とは思うのですけど、
シンプルに笛とかがいいかなって思いましたのです-。  
 

[9] 朔代胡の枝 2017/09/24-22:48

そうだなあ、コノさん的には二人組で回る方に一票かなー。
探索なら手数は多い方がいいなーって思ってさ。
もちろん四人組の方が何かあった時のために対処できるかもだし、そっちの方がいいならそれでも全然オッケーなんだけど。  
 

[8] ミクシィ 2017/09/24-19:40

ふむ。
反応のあった場所で、五階研究室Dというのはマディスさんのいた場所でしょうし、その他の4つの地点を2人組づつの4チームで回るか、2か所づつを4人組づつの2チームで回るか、でしょうか。
合流地点は五階研究室D、ということで、ここも念の為最後に調べた方が?
ともあれ、そろそろ相談を始めませんといけませんわね。  
 

[7] 月瀬・沙耶 2017/09/23-22:05

月瀬沙耶です。皆さん宜しくお願いしますね。

全員一丸となって動く、というのは流石に捜索範囲もあるので非効率かと…。
半分の4:4に分けて動く、というのがいいでしょうか。もっと分けても、とも思いましたが…そうなると集合するまでが大変ですし。

いざという時の合流ポイントも決めておくといいかもしれませんね。  
 

[6] アリシア・ストウフォース 2017/09/23-00:41

こんにちはー。
知らない人の為に自己紹介!デモニックでマッドドクターのアリシア・ストウフォースだよー。よろしくねー。

色々調査たのしそーで今からわくわくしてるよ!多人数で動いた方が良さそーだから、一緒に動くのよろしくー!  
 

[5] スターリー 2017/09/22-23:38

スターリーだ。全員揃ったら相談を始めるか。  
 

[4] 朔代胡の枝 2017/09/22-22:26

やっほやっほー。
ヒューマンでハッカーなコノさんだよーみんなヨロシクー。
いやあドキワクめっちゃ分かるよー何が出てくるんだろうねえ。  
 

[3] ミクシィ 2017/09/22-21:13

皆様、ごきげんよう。
大分知り合いが多く、安心しております。
そうでない方も、どうぞよろしくお願い致しますね?
うふふ☆  
 

[2] アクア=アクエリア 2017/09/22-18:38

おここー(ご挨拶)。
ドクターのアクアだよ、みなさんよろしくね。
サスペンス物という事で早くもすっごくドキワクしてきたよ!