プロローグ
トレジャーアイランド。
それは新しく探索が可能になった巨大な浮島だ。
未踏の浮島には、未だ手付かずの大量の資源が眠っていることが多く、それを見つけ出すことが期待されている。
もちろん、その探し手は探究者達だ。
大量のフラグメント。
ピラミッド状の謎の遺跡の究明。
それらを探究する障害となるかもしれない浮島の生物や、旨味を感じ寄って来た空賊団との戦い。
探究者達に求められるのは様々だ。
だからこそ、下準備は大事です。
装備の新調。
必要な物資の購入。
他にも用意するべきモノは様々です。
それを手に入れるために、商業旅団ファヴニルでのショッピングは最適です。
空挺都市第2位にして、140万を超える人口を有するこの場所では、お金さえあれば大抵の物は用意出来るでしょう。
そんなファヴニルに、アナタ達は訪れています。
目的は、トレジャーアイランドへの探索に必要な物資の購入です。
ですので、ファヴニルの商業地区で、ショッピングを行って下さい。
探究に必要な物を購入しても良いでしょうし、早めに切り上げて、アニマと団らんを過ごしても良いでしょう。
実際、とあるレストランを見てみれば、一緒にアニマと食事をとっている人達も居ます。
たとえばそれは、こんな感じです。
「うん。甘味が強いけど良い感じ。ね、美味しい?」
「ああ、美味いな。こんな感じの、うちで作れるか?」
2人がけのテーブル席に、アニマと主人が向かい合わせで座っています。
2人の前には、同じケーキが。
アニマにも味覚として感じられるデータが、視覚的に映し出された上で提供されているのです。
アニマは、甘いクリームをフォークでひとすくい。
口に運んで味わいます。そして返します。
「今うちにある調理機械だと、ここまでの口解け感は難しいかも? 作ってあげても良いけど、新しいの、買ってくれる?」
「出費が痛いねぇ。でも、この味が毎日楽しめるなら、良いかもな」
「なら、その分お仕事に頑張らないとね」
「へいへい。なんなら、新しい服のデータも買えるよう、頑張るよ」
「……ん。ありがと」
てな感じです。
他にも、ショッピングを行うことになる商業地区では、店舗構えの店もあれば、行商人が商品を広げている場所も見受けられます。
それらの全てで行われているのは、値切りです。
ファヴニルでは、どんな商品でもまずは一声値切るという様式が一般的です。
たとえばそれは、こんな感じです
「このエスバイロの部品、良いね。どこで手に入れたの?」
「ジャンク品だけどな。少し前の型落ち品だが、巧い具合に新品同様のが手に入ってな。どうだい、良い代物だろ?」
「ああ、良いね。さらに安けりゃ言うことなし。こっちのも一緒に買うから、3割引きでどうかな?」
「おいおい、そんなに値切られたら商売あがったりだって。1割5分が良いとこだよ」
「それで売れたら、万々歳だろうな。でも生憎とこっちは空っ欠になっちまう。せめて2割5分にはして貰わないと」
「2割。それ以上は、俺が路頭に迷っちまうぜ」
「また冗談巧いな。そんなに商売が下手にゃ見えねぇぜ、アンタ。2割3分。これぐらい、なんてことはないだろ?」
「おいおい、おだててくれるねぇ。分かったよ、2割3分。でも、抱き合わせで売るヤツは、負けるのは勘弁してくれよ」
「ありがとな!」
(へへっ、1割5分引きでもめっけもんだと思ってたけど、2割3分まで。浮いた金で、アニマに水着のデータでも買ってやるかな)
(なんてこと思ってるんだろうな、このにぃさん。生憎と、抱き合わせの商品込みでも定価の2分増しだよ。ま、勉強代だと思ってくれな。にぃさんよ)
なんてやり取りが、普通にあったりします。
それは既に文化や風俗と言っても良いぐらいに侵透しているので、商品の値段自体、最初から値切られることを前提としています。
なので、値切らないと不要に高い物を買わされることも。
もっとも、貴方達がそういった文化に慣れていない他所の旅団出身だと分かれば、お世辞の1つも言いながら、特別に安売りにする、と言ってくれるかもしれません。
あるいは、しめたモノだと高値で売りつけるかもしれませんが。
それもまた、ファヴニルでのショッピングでの楽しみです。
ひとつ皆さん、トレジャーアイランドに訪れる前に、楽しんでみて下さい。
最後に、お知らせです。
【TI】とエピソードタイトルに付いた物に関しては、『必ずしも自分が参加した大規模作戦に関連するシナリオにしか参加できない』わけではありませんので、このエピソードに関しても、大規模作戦とは異なるノリやプランを書かれていても構いません。
大規模作戦トレジャーアイランドに参加された時の物とは違う内容の物を求められるショッピングをされていても、何ら問題はありません。
慰労会の準備だったけど、アニマの水着を買いに行くのにしよう、といった感じに違っていても大丈夫です。
ですのでご自由に、お楽しみください。
解説
詳細説明
トレジャーアイランドへの探索に必要な物資の購入を、ファヴニルの商業地区で行って下さい。
それはそれでサクッと切り上げて、アニマと一緒に団欒を過ごされるのも自由です。
基本的に、ショッピングをして楽しもう、というエピソードになります。
ショッピングで巡ることが出来るのは次のような場所です。
店舗型のお店
割と上品な感じのお店です。
値切りはファヴニルの文化なので、当然のように行われますが、割とあっさりとした感じです。
行商人
地面にシートを敷いて商品を広げている物から、ちょっとした屋台を広げている物まで様々です。
割と雑多で、良い意味でも悪い意味でも、人情味のある商売をしています。
当たり外れが大きいよ! てな感じの商売人を相手にする事になります。
値切りは割とガッツリされる感じです。
大きく損をする事もあるでしょうし、逆に行商人次第では、お得な事もあるという感じです。
店舗型のお店も行商人も、種類は様々です。なので、PCがショッピングに行こうと思うお店や行商人を自由にプランでお書きください。
探索用の道具を購入に行く。
食料を購入に行く。
トレジャーアイランドだと泳げる場所があるらしいので、水着を購入しに行く。
ショッピングの合間に、喫茶店やレストランで食事をとる。
大まかには上記のようなお店や行商人ですが、他にも何か行きたいお店や行商人がありましたら、自由にお書きください。
なお水着に関しては、アニマ用にデータが用意されていますし、食事処に関しても、アニマが味覚を感じられるデータを、視覚的に見れる形で出してくれます。
簡単に言いますと、アニマと団らんやいちゃいちゃデートとかも出来るお店がある前提です。
純粋にショッピングを楽しまれるのも良いですし、アニマと団らんやデートを楽しまれるのも自由です。
以上です。
では、ご参加をお待ちしております。
ゲームマスターより
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
基本的に今回のエピソードは、アニマと一緒にショッピングを楽しもう、というエピソードになっています。
ですので、アニマの台詞、もしくは言い回しなどを書いて頂けるとありがたいです。
アドリブに関しては、アドリブオッケーなど書いてありますと、比較的アドリブをさせて頂く可能性が高くなります。
また、描写の分量をある程度揃えるために、プランにお書き頂いた物が少ないと、どうしてもアドリブで増やすことになりますので、アドリブがお好きでない方は、プランの内容を多く書いて頂けますと助かります。
アドリブの方向性としては、あくまでも頂いたプランを前提として、そこから派生する形で書きます。
少なくとも、プランやPCの設定を無視するような形にならないように気を付けて書きます。
以上です。
それでは、少しでも楽しんで頂けるよう、判定にリザルトに頑張ります。
【TI】アニマと一緒にショッピング エピソード情報
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担当 |
春夏秋冬 GM
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相談期間 |
7 日
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ジャンル |
日常
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タイプ |
ショート
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出発日 |
2017/10/27
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難易度 |
とても簡単
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報酬 |
なし
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公開日 |
2017/11/01 |
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トレジャーアイランド探索への買い出し……の、予定が行商人の売り物を見るのに夢中になっているエルヴィス。 明らかに怪しそうなものに手を出しそうなところにケーナによる静止が。 少し呆れていたケーナに声をかける別の行商人。「マスターもメロメロになる水着データ」と聞いて思わず興味を持つ。 行商人の口のうまさに負けて購入。あとで確認すると想像以上の露出の水着に思わず顔が真っ赤に。 結局探索用以外に興味の持った品を購入したエルヴィス。しかし意外にまともなものだったのでケーナが理由を聞いてみると「話の中に明らかに変なところがあるものは興味を持った振りをしていただけ、その方が多く情報を取れるから」と。
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鉄海 石
( フィアル )
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ヒューマン | マーセナリー | 15 歳 | 男性
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鉄海石側のアクション 心情 ある程度この町の情報収取したけど値切り前提の商売か…金欠の身としてはありがたいようなつらいような… はっきり言って商売の交渉術は専門外だ…フィアルも多分論外だろう… 下手に値切りしてワールズ教の品質を疑われたくないし… かといって何も買わないはフィアルとの約束を破ることになる… 最悪損してでも買わないとな…アニマ関連の商品てどう値切ればいいのやら…質なんてわかんないし…なんとか財布に大打撃食らわないように頑張ろう 交渉方法 値切り前提という事は少なからず2,3割ぐらいは値切らないと…商品に不具合がありそうなら5割を前提に値切る、値切れなかった場合はあきらめるスタンスで行こう
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彩月
( 壱華 )
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デモニック | マッドドクター | 21 歳 | 男性
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トレジャーランドの準備も済んだし、時間もある。 もう少しどこか見てくのも…良いかな。 (ハッ…これって壱華ちゃんとデート…!) あれ、寄りたいところあったの?? それじゃあそれに付き合うよ、行こうか。 …や、おや…? ああ、なるほどね。壱華ちゃんは好きだねェ。 (あァ…あんなに目を輝かせて…ふふ…もう可愛いなァ) 何でもないよ、俺のことは気にしないで。 (スイーツかァ…俺はあまり好きじゃないけど 疲れた時とか疲労回復には良いんじゃない? まぁそもそも壱華ちゃんの作ったものなら ペロッと食べちゃうけどね) ハロウィン…?あァ、懐かしいね…昔よくやってたかな。 ふ、それだとお茶会になりそうだね? でも壱華ちゃんらしいと思うよ。
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ふむ…フラグメントを含む椰子との事だったが… あれが僕の予想した通りのものだとしたら、サンプル採取のほかにも確かめる必要があるな。 最低限、アレとアレは必要か…クー、出かけよう。物資の調達へ行く。 やれやれ、流石に人出も多いな。 しかしこういった場には予想もつかない様な品が売られていることもある。 まあ、大半は偽物やがらくたを売りつけられる訳だが…まあ、期待しない程度に歩くとするか。どうせ時間はある。 ほう、これはなかなか…ん?どうした、クー。 …水着データだと…?夏はもう終わるぞ。 何より、僕以外に見せる相手もいないだろうに。冷え込む中でそんなものを見せられても寒々しい。 …ちっ、仕方がない…店主、幾らだ?
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●アドリブOK 買い出しのためにきたが、ホント色々売ってるな……おぉ、値引き合戦やってる。初めて見た ……えっ俺もやってみろ? えーめんどい。というかどうせ浮いた分でなんか買わせようって魂胆だろ? まあ、せっかくだしやってみるか とりあえずチョロ……人の良さそうな商人の店を選び、見よう見まねでアニマ用の服を値切る。後で買わされるならここで買っても変わらんよ とりあえず半額からスタート。そこから口八丁しながら徐々に値下げ。店主の様子を見つつ適当なところで切り上げて購入 ……もうちょい粘ればもっと安く買えた? これでも充分安いからいいんだよ。それに、どうせなら両者共に満足行く結果にした方が後々面倒がなくていい
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行商人巡り。 銃器のパーツなどを扱っている所がないか探しに行く。 できれば安く買えそうな行商人の売り場から見つけたいが、パーツ屋が無ければ店舗型のお店に行く事も考える。 お目当ての行商人を見つけたら、部品の品質を見てから値切りを行う。 とりあえず売値の半額を言ってみて、そこから擦り合わせていく作戦で値切り。 ひとまずの目標は、拳銃一丁組めるくらいの部品の購入。 一通り買い物が終わったら、喫茶店でお茶をして行く。
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◆購入商品 部屋で使用する為のお洒落なランタンかランプ(アンティーク的な ◆行商人 意地悪でOK! ◆台詞 ふむ…確かに其れ程の値打ち物かもしれんが、 商人の目線や仕草(鼻触ったり)を見ていると定価はもう幾らか下であろう 今ここで少し調べてみても構わんのだが(端末取り出し アドリブ多め希望ですので、敢えてプランは薄めにしておきます 宜しくお願いします
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買い物の前日は、緊張して眠れなかった。 なので少々寝不足なのだが……こうして外に買い物に繰り出すのも滅多にない経験だ。 普段はネットで済ませているからな。 と、事前に必要な道具などを調べたのだが「それが何故必要なのか」にまでは考えが至っていなかった。 しっかり調べてくれたアダムに感謝しつつ、自分の足で歩き回って買い物を行うと言うのも貴重な体験だとしみじみ思う。 自分は実際に触れて感じる事が出来るけれど、アニマはどうなのだろう? 我のように充実した時を過ごしてくれると良いのだが。 そう思っている内に、怪しげな露店に惹かれて走り出す。 今日の記念だと、アダムにオカルトめいたペンダントを翳して嬉しそうに笑う。
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参加者一覧
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鉄海 石
( フィアル )
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ヒューマン | マーセナリー | 15 歳 | 男性
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彩月
( 壱華 )
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デモニック | マッドドクター | 21 歳 | 男性
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リザルト
ファヴニルに訪れた探究者達は、アニマと共にショッピングを、それぞれが楽しんでいた。
それは、こんな感じで。
○【エルヴィス】と【ケーナ】の場合
「エルヴィス様。こちらの区域だと、目的の品物が見つかる可能性は低いと思いますよ」
雑多な行商人で賑わう区域で、エルヴィスのアニマであるケーナは言った。
主であるエルヴィスの事を想って声を掛けているのが、自然と伝わってくる。
「大丈夫。分かっているよ、ケーナ」
エルヴィスは、ケーナを安心させるように言いながら、それでも様々な商品から目を離さない。
そんな彼に、ため息をつくような間を空けて、ケーナは言った。
「色々見るのは構わないですけど、変なものを買ったりは――」
2人きりの時ならともかく、今は周りに人が多いこともあって、秘書のような雰囲気をまといながら静かな口調で言う。
とはいえ、ほんの少しだけ、愛称であるエルと呼ぶ時のようなやわらかさも滲んでいたが。
そんな風に2人で見て回っていると、1人の行商人に呼び止められる。
「こいつは遠い北の遺跡で発掘されたもので……」
「ほほう、北の遺跡……とな」
行商人の言葉に聞き入るエルヴィスに、ケーナは思わず横からツッコミを入れる。
「そんな明らかに最近作られた出来の人形が発掘品なわけないでしょうが!」
ケーナに止められながらも、エルヴィスは行商人の言葉に耳を傾け言葉を交わし、商品を購入する。
少し呆れながら付いて行くケーナに、新たな行商人が声を掛けてきた。
「そこの美人なアニマのお嬢ちゃん! アンタにピッタリな水着のデータがあるんだ! ひとつ見てくれよ!」
「なんです? 今忙し――」
「へへっ、こういうのはどうだい?」
カタログデータを渡されて、つい見てしまう。
「『マスターもメロメロ! 悩殺水着』ですって……」
心揺らされる売り文句に、悩むケーナ。
商人の口の巧さと、何よりも売り文句に抗えずケーナは買ってしまう。
「さて水着は――なぁっ!? なんですかこの布というか紐ー!?」
思わず顔が真っ赤になるほど大胆な水着だった。
「どうしたんだ?」
「なんでもありません!」
話をはぐらかそうと、ケーナはエルヴィスの購入した品物を改めて調べる。
「意外に、まともなものですね」
不思議に思って尋ねると、エルヴィスは返した。
「話の中に明らかに変なところがあるものは興味を持った振りをしていただけ、その方が多く情報を取れるから」
そこまで言うと、少しだけ悪戯っぽく続けた。
「そういえば悪質行商人は言っていたものとは違うものを売りつけるのもいるから――いや、ケーナなら言わなくても知っているか」
(あなた本当は全部知っていたんじゃ!?)
じゃれ合うように、その後もショッピングを楽しむ2人だった。
○【鉄海 石(てつかい せき) 】と【フィアル】の場合
(なんとか財布に大打撃食らわないように頑張ろう)
金欠ぎみな鉄海 石は、気合を入れてショッピングに挑む。
何も買わない、という選択肢はない。
なにしろ自分のアニマであるフィアルが、嬉しそうに笑顔を浮かべているのだから。
「何を買いましょうか?」
今も楽しそうに、フィアルは石に呼び掛ける。
嬉しそうなその姿に、石は応えたいと思うのだ。
「欲しい物は、ある?」
何か欲しい物を一つ買ってあげる。
そう約束している石は、財布の中身を思い出しながら言った。
するとフィアルは、顔を輝かせて返す。
「服においしい物! だから、服をガッツリ値切って、その分おいしい物に回しましょう! そうすれば、2人で食べられます!」
石が良い反応をしてくれる服に、2人で楽しく食事。
他の場所と同じく、ここファヴニルでも、アニマが味覚を味わえるデータをマスターにも見える形で出してくれるから、一緒に料理を楽しめる。
石にも喜んで欲しくて、フィアルは言った。
それに石は応える。
「分かった。なんとかしてみる」
(商売の交渉術は専門外だけど)
微妙に不安を抱きながら、フィアルのために頑張ろうとする石だった。
そしてお買いもの。
そこでの交渉は、フィアルがガッツリ頑張った。
「データの質と容量はどうなってますか? デザインサンプルがあったら、見せて貰えますか?」
しっかりと見極めながら、行商人とやり取りする。
苦笑しながら返す行商人。
「お嬢さんなら、何を着ても似合うと思いますよ」
おだてられてもなんのその。
(滅多に褒めないマスターに言われるならまだしも、相手は隙あれば高額で売り込む商人……油断はできません)
値切り交渉を進めていく。
そこに行商人は、どれが似合うかと石に話を向ける。
「この服が似合う、かな」
悩んだ末に、一緒に居て似合う服を選んだ。
そこから話はトントン拍子で進み、細部を変えられるツールも込みで2割5分引きに。
「これで、おいしい物、一緒に食べに行けますね」
嬉しそうに言うフィアルに、行商人はレストランの割引券を。
「知り合いの店です。その券があれば値切らずに、美味しい物を安く食べれますよ。エスコートしてあげて下さいね、おにいさん」
行商人に勧められ、仲良く美味しい物を食べて買い物を楽しんだ2人だった。
○【彩月 (さつき)】と【壱華 (いちか)】の場合
買い物を終らせて、彩月と壱華は仲良く一緒にファヴニルを巡っていた。
「準備も済んだし、時間もある」
「そうだね、早く準備出来て良かった!」
2人の時間を大切にするように、彩月は提案する。
「もう少しどこか見てくのも……良いかな」
「え、どこかに寄っていいの?」
嬉しそうな壱華に、彩月は笑顔で返す。
「寄りたい所あったの?」
「えと、あの……うん……実は……その……」
「どこでも行くよ。行きたい所を言って」
「わぁ! ありがとう彩月さん! やったぁ!」
はしゃぐ壱華に、彩月は温かな気持ちになる。
その想いを更に強くしてくれるように、はにかみながら壱華は言った。
「作りたいお菓子が沢山あって……参考にしたい所があるの。もし作ったら、食べてくれる?」
彩月の事を想ってねだる壱華に、じんわりと喜びが沸き立ち、彩月は見詰めてしまう。
「……彩月さん?」
「……ん? なんでもないよ」
(彩月さんが私を見てボーッとしてるのは、いつもの事よね?)
自分を見詰める彩月の笑顔に、心地好い恥ずかしさに包まれる壱華だった。
そして2人は、喫茶店も併用した青果店に。
「この青果店で旬の果物揃えられるんだ!」
「何を作るつもりなの?」
「カボチャをメインに使って、果物も一杯な、お菓子を作ろうかと思ってるの。ほら、もうすぐハロウィンでしょう? だから家でパーティー出来ないかなって」
「ハロウィン……? あァ、懐かしいね……昔よくやってたかな」
「うん。楽しかったね」
「そうだね。ふふ、でもパーティっていうより、お茶会になりそうだね?」
「うえ!? あ、あああ後ね! 部屋中ハロウィンらしい飾り付けもちゃんとするよ? わ、笑わないでー!」
6歳の頃から一緒に居る2人は、重ねる想い出も色鮮やかだ。
想い出話も兼ねて、2人は喫茶店に。
甘さ控えめなカボチャパイに、果物たっぷりのカスタードババロア。
他にもテーブル一杯に並べ、2人は仲良く食べていく。
壱華の前に並んでいるのは視覚化されたデータだけど、その味は本物と変わらない。
食べる姿も、生身の女の子が食べているのと同じだ。
だから生身の女の子と同じように、彩月の前で沢山のお菓子を食べる姿を見られるのは、少し気になってしまう。
(うぅ……まるで食い意地張ってるみたいになっちゃった。でも! 秋のスイーツってみんな美味しいから……ね?)
恥ずかしそうにする壱華を、微笑ましげに彩月は見詰め言った。
「帰ったら、作ってくれる?」
「うん! 一杯、作ってあげるね!」
笑顔で返す壱華に、嬉しそうに笑みを浮かべ返す彩月だった。
○【メルフリート・グラストシェイド】と【クー・コール・ロビン】の場合
「やれやれ、流石に人出も多いな」
雑多な買い物客で賑わう中を、メルフリート・グラストシェイドは、自らのアニマであるクー・コール・ロビンと共に進む。
「それだけ必要な物が、ここでなら手に入るという事でしょうね」
言葉を返すクーに、メルフリートも会話を重ねていく。
「そうであって欲しいがな。トレジャーアイランドでのサンプル採取の他にも、確かめるのに必要な物は多いからな」
周囲の店を見ながら商品を確かめているメルフリートに、クーは返す。
「ショベルにつるはし。良いものが見つかると良いわね」
「ああ、期待している。こういった場には予想もつかない様な品が売られていることもあるからな」
「持ち主が価値を把握できず、売りに出す……なんてこともあるものね」
「掘り出し物、というヤツだな。まあ、大半は偽物やがらくたを売りつけられる訳だが」
「ええ。知識がなければそうなってしまうのも仕方のないことだけれど、見つける側にも知識が必要」
「気を付けるとしよう」
「そうね。いくらあなたが勉強熱心であっても、専門的な知識を何にでも持っているわけではないもの。でも、そうそう騙されるようなことは、無いと信じているわ」
「まあ、期待しない程度に歩くとするか。どうせ時間はある」
会話を重ねながら2人は品定め。その内に、1つの店に。
「ほう、これはなかなか」
中古品を調整して売るその店には、値段の割に質の良い物が多かった。
「これとこれを貰おう……ん? どうした、クー」
気付けば店主の売り込みを聞いているクーに尋ねる。
「水着のデータ、らしいわ。細部を調整できるツールも付いてるみたいね」
「……水着データだと……? 夏はもう終わるぞ。何より、僕以外に見せる相手もいないだろうに。冷え込む中でそんなものを見せられても寒々しい」
にべもないメルフリートに、クーは言った。
「水着。いいじゃないの。私もたまには……私は別に寒さを感じるわけではないし、そもそもあなた以外に見せるつもりもないのだけれど? それとも、何も身につけない方がお好みかしら?」
ほんの少しだけ拗ねるように言うクーに、メルフリートは財布のひもを緩める。
「……ちっ、仕方がない……店主、幾らだ?」
新品の半額近い値段で、それを手に入れた。
「ありがとう」
「……そうか」
静かに2人は返しながら、その後も会話を重ね、ファヴニルを巡って行くのだった。
○【ブレイ・ユウガ】と【エクス・グラム】の場合
「おぉ、値引き合戦やってる。初めて見た」
熱の篭もった値引き合戦を、ブレイ・ユウガは物珍しそうに見る。
そこにエクス・グラムは、けしかけるようにツッコミを入れた。
「見てるだけでなく、あなたもやってみなさいな。何事も実践は大事よ」
「見取り稽古も大事じゃね?」
「あんたの場合は、見てるだけでしょ?」
「大丈夫。明後日からは頑張るって」
「永遠に来そうにない未来は明後日とは言わないの。ほら、良い所を見せてちょうだい」
「えーめんどい。というか、どうせ浮いた分でなんか買わせようって魂胆だろ?」
「分かってるなら、甲斐性を見せて」
「へいへい。まぁ、折角だからやってみるか。とりあえずチョロ……人の好さそうな商人でも探して――」
ブレイは温和そうな、とっぽいオッチャン商人の元に。
「アニマ用の服データはある?」
商人は、すぐに幾つか提示し、エクスの好みに合わせ選ぶと値切りを開始。
「半額でどうかな?」
「いきなり厳しいですよ、お客さん。安すぎませんか?」
「いやうちのカミさんがね、このレベルなら半額だって」
「せめて3割」
「3割? う~ん……うちのカミさんなら納得しそうだがもう一声」
「ええ? お客さんの奥さん、何割引きなら許してくれるんです?」
「2割でも良いって言うカミさんも居るかな?」
「なんか複数いるみたいな言い方ですけど……」
そこでブレイは急にまじめな顔になって返す。
「昔ハーレムルートを目指したんだが、膝に修羅場を受けてしまって……そこから色々あって修羅場結婚、略して修羅婚しまして」
「引退した傭兵みたいなこと言ってんじゃないの」
合いの手を入れるように、ツッコミを入れるエクス。
「知らない内に、随分とお嫁さんが増えたわよねぇ」
「お蔭で養うのも大変だ。という訳で、安くしてくれます?」
これに商人はため息一つ。
「分かりました。間を取って3割。その代り今度は、お嫁さんの分も買いに来て下さいよ」
そして交渉成立。
買ってしばらく歩き、エクスのツッコミが。
「もっと粘れば良かったのに」
「ま、そこは限度があるし」
「そう? このデータ、他の店で似たのが同じ値段で売ってたわよ」
「……マジで?」
「抜け目がないのが商人ってことでしょ。もっと実践あるのみね。という訳で、再挑戦しなさいな」
「それ、もっと買えと?」
「嫌なの?」
「……へいへい」
肩をすくめるようにして、その後も一緒に買いもの巡りをするブレイだった。
○【エルマータ・フルテ】と【アル】の場合
雑多な買い物客で賑わうファヴニルの中を、エルマータ・フルテとアルの2人は一緒に進む。
「エルさん……今日は何を買いに行くの?」
アルに呼び掛けられ、エルマータは返す。
「んー、ちょっと銃の部品類をね。勉強中の身としては、ファヴニルの銃器ってどんな感じか見ときたいからさ」
その声は楽しげに弾んでいる。
広い商業地区に少しわくわくしつつ、お目当てのパーツ類を扱う行商人が居ないかと探して回っていた。
すると、大勢の商人と買い物客でごった返す場所に。
賑やかな場所に、アルは驚きと好奇心を滲ませて、周囲をキョロキョロ見ながらエルマータと言葉を交わす。
「……さすがファヴニル。どこも活気があるね」
「活気があるのは良いことだよ。でも、それに惑わされてぼったくられないようにしないとね」
自分を戒めるように言いながら、お店を見渡していたエルマータは、屋台形式で銃器の部品を広げている頑固そうな老人の元に。
「こんにちは。良い部品を扱ってるね」
「分かんのかい? お嬢ちゃん」
「うん。見せて貰っても良い?」
「ああ、好きにしな」
そう言って老人は、マシンピストルを一丁置く。
見たことの無い型のそれに興味を抱き、手早く分解して調べる。
「良い出来だね、これ」
丁寧な仕事に声を上げると、老人は返す。
「ありがとよ。前に俺が作ったヤツさ」
「丁寧な仕事をしてるね」
「数をこなす才能が無くてな。お嬢ちゃんは、随分と詳しいようだが、自分で作ったりすんのかい?」
「そろそろ一丁仕上げてみようかなって、思ってるよ。だから、ここに来たんだ」
「そうかい。なら、比べる品は多い方が良いだろうな」
そう言って老人は、奥から幾つもの銃の部品を取り出し並べてみせた。
早々お目に掛かれないほどの種類に、エルマータはしっかりと見極め、欲しい物を取り分ける。
少しばかり多くなってしまい、予算を超えないよう思い切って値切りをする。
「これ、半額にならないかなー? 色々買ってくからさ」
すると老人は喫茶店の割引券を取り出し返す。
「娘夫婦がやってる店でな。客として行ってくれるなら、かまわないぜ」
これにアルが返す。
「美味しいスイーツある?」
「ああ。アニマのお嬢ちゃんも、マスターと同じように味わえるデータを、見える形で出してくれるよ」
苦笑して頷く老人に、アルはエルマータにねだるように言う。
「エルさん、行ってみる?」
エルマータは苦笑しながら頷くと、交渉成立。
良い部品を安く手に入れ、そのあと2人でゆったりと、コーヒーとスイーツのセットでくつろぐエルマータとアルだった。
○【レイ・ヘルメス】と【UNO(ウノ)】の場合
「兄様、それで今日は、美味しいシチューを作ってあげるね」
ファブニルでレイと一緒に買い物をしたUNOは、嬉しそうな声で、レイが手に下げる食材を見ながら言った。
「おまけもしてくれて、いい人だったね」
レイのために一生懸命なUNOが気に入ったのか、食材売りの店主は値引きをしてくれた上に、ジャガイモをおまけしてくれたのだ。
そんなUNOに、レイは返す。
「ああ、イイ人だったな。交渉の前菜としては、甘味が強かったが。もっとも――」
笑みを強くすると、続けて言った。
「交渉の主菜はこれからだ。歯ごたえがあると楽しいがな」
その笑顔が向けられているのは、屋台のカウンターに、室内インテリア用のアンティークランタンを置いた店。
「いらっしゃい」
訪れたレイとUNOを、店主である50前後の男性が静かに迎え入れる。
「ランタンを探しているのだが、良いのは有るかな?」
「さて、お客さんの好みは分かりかねますので。ただ、うちのはどれも質は良いですよ」
よほど品質に自信があるのか、店主に媚びた所はない。
それでいて、お客の気分を害さない穏やかな声のせいか、反感を抱く気にはなれなかった。
そんな店主に、楽しげにレイは目を細めると、交渉を開始した。
「確かに良いものだ。だが、いささか値が高すぎないかね?」
「とんでもない。なにせ遺跡からの出土品ですから」
「なるほど。それが確かなら、値打ち物だろう。どこの出土品か教えてくれ。調べてみよう」
「構いませんよ。ただ、出土品の全てが公開されていませんから。載っていないからと言って、値下げは出来かねます」
言葉の刃を交わし合い、交渉は続く。
そんな中、レイはポツリと言った。
「悪くないが、この値で買うのは博打めいたものになるな」
これに店主は反応し、カップを3つと小さなボール一つを取り出す。
「博打は、お好きですか?」
ボールの入ったカップと残り2つを動かして、どれに入っているかを当てる博打を提案。
「勝てば半額ですよ」
これに乗るレイ。
店主は即座に手慣れた動きでカップを動かし、答えを聞く。
「ゼロだ」
レイは、眉を寄せる店主に続けて言った。
「スリーカップモンテは、詳しくてね。手の中にボールを隠しているのだろう?」
これに店主は肩をすくめると、半額値引きを飲み込んだ。
買い物終わり離れてからUNOは言う。
「予定通りで、良かったね兄様」
事前に、他の客がカモにされているのを見て知っていたレイは、それを利用したのだ。
「良い買い物が出来たな、UNO」
楽しげに笑みを浮かべながら、UNOと共に帰路に就くレイだった。
○【ロスヴィータ・ヴァルプルギス】と【アダム】の場合
「盛大な賑わいだな」
弾んだ声を隠し切れずに、ロスヴィータ・ヴァルプルギスは自らのアニマであるアダムに言った。
目の前に広がるのは、雑多な人々。
お目当ての物を求め値引きをしている喧噪も、耳に跳び込んでくる。
「普段はネットで済ませているが、偶には良いものだな」
「ええ、そうですね。マスター」
アダムは穏やかな声で、ロスヴィータに返す。
見詰める眼差しはやわらかく、そして同時に気に掛けている。
(前日は緊張で眠れなかったみたいですけれど、今も少し寝不足かしら?)
主の体調管理も考えながら、エスコートするように声を掛けていく。
「マスター。購入される物は調べておいででしたが、何をお求めになるのですか?」
これにロスヴィータは、自信満々に応えていく。
「まずは、つるはしだな」
「大きさは、どうされますか?」
「……大きさ?」
「マスター。調べる場所によっては、小ぶりな物の方が最適な場合があります」
「そうなのか?」
不安になったのか、少し素が出そうになっているロスヴィータに、アダムは安心させるように返した。
「マスター。事前に、必要な物の用途と要領を調べております。よろしければ、聞いて頂けますか?」
「そうか……良いぞ! 我が魔女たる禁断の知識に加えることを許してやろう!」
いつもの調子を取り戻したロスヴィータを見守るように見詰めながら、アダムは要所要所で必要なことを伝え一緒に買い物に。
幾つもの店を回り、品物に触れていく。
それは知識だけでは得られない実感。充実した時間を過ごす中、ロスヴィータは想う。
(我は実際に触れて感じることが出来るけど、アダムはどうなんだろう?)
自分のように充実した時を過ごしてくれているか不安な中、とある露店に目が惹かれる。
「アニマとお揃いのアクセサリーか。我らにふさわしいではないか!」
目を輝かせるロスヴィータに、アダムはお世話をする楽しさを感じつつも、成長を促すように背中を押す。
「ちょうど良いですね。値切り交渉をしてみましょう」
その言葉に促され、ロスヴィータは交渉開始。
2人の様子を見ていた店主は、微笑ましげに見つめると、同じデザインで石の異なる指輪を4割引きに。
「こっちの青紫の石はタンザナイト。誇りある人と空想を表すと言われています。アニマの方の濃い緑の石は、クロムのダイオプサイト。道標と信頼を表すと言われています」
店主の説明を聞き、ロスヴィータは自分の指にタンザナイトの嵌った指輪を付け、アダムにはダイオプサイトの嵌った指輪データを渡す。
「今日の記念のアクセサリーですか?」
「そうだ。これからもよろしく頼むぞ!」
嬉しそうなロスヴィータに、アダムは微笑みながら礼を返す。
「ありがとうございます。嬉しいですよ」
お揃いの指輪を付けて、その後も買い物巡りをする2人だった。
かくして、探究者達はアニマと一緒のショッピングを楽しんだ。
それは実りのある、一日だった。
依頼結果