プロローグ
● 宝島にふく風よ
宝島のバリアが目の前で徐々に破れていく、穴あけとなったそのバリアの隙間を潜ってエスパイロで乗り込むと、外側に向かって風が吹いた。
それが優しく頬を撫でる。
君は空を見上げるだろう。同じように宝島の中味を狙って進んでくるエスパイロの一団が見える。無数の粒は百を超える群体で、徐々に減速して島の各地に散っていく。
そんな一団を見てあなたは思ったことだろう。
これだけ手があるなら自分は探さなくても大丈夫じゃないか。
君はアニマに語りかけることだろう。
心地よい風を受けて日々の疲れが顔を出す、当たりを見渡せば心地よさそうな芝生や、湖。いろんなスポットが広がっているではないか。
君は歩き出す二人きりになれる場所を目指して。
● さぼってアニマとデートしよう
今回はレーヴァテイン総出でこの島の探索が行われています。
メンバーの中には危険地帯に赴く方もいるでしょう。
そんな危険な場所に赴くよりも皆さんは草原エリアでのんびりアニマと探索することを選んだ感じです。
時系列的には、幅広いです。
宝島突入初期でもいいですし、全ての探索が終わってから草原など見て回りたくなったことにしても大丈夫です。
では、二人きりに慣れそうなスポットを紹介します。
泉 草原の中にぽっかり空いた泉です、そこそこ大きいおかげか魚がいますし、水が澄んでいて綺麗です。アニマは水に触れられないのですが、触れた気分になって水遊びなんかどうでしょう。
森 宝島の中には木々が生い茂る一帯も存在します。木々の隙間で日差しを避けて休むのもいいのではないでしょうか。
どうやらこの島、少数ですが生物も生息しているらしく鳥の鳴き声なんかが聞えます。
遺跡 ピラミッド周辺には朽ち果てた町がわずかに残っています、屋根の落ちた民家、大聖堂。文明レベルはレーヴァテインからすると弐世代くらい前のようです。
ここで生活していた人々はどこに消えたのでしょうか。
アビスに飲まれてしまったのでしょうか。
草原 皆さんが最初に降り立った草原です、対して移動せずにぶらぶらしている形ですね。
モンスターなどにであうわけでもなく、見晴らしのいい草原に二人きりです。
● 会話フック
広大な自然を感じることができるこの宝島ですが、レーヴァテインなどで日々を過ごす皆様にとってこれは異様な光景です。
まず、これほどの浮島が珍しいですし、浮島に自然が息づいていることも珍しいですし、それを加味するとやっぱり、これほどの大自然早々ないのですから。
そんな非日常な光景に包まれていると、普段より会話が弾んだりするのではないでしょうか。
もし会話内容に困るようであれば会話フックを用意したので活用してみてください。
・これからの目標ってある?
ラストエイジとして危険に身を置くからには何か目的があってそうするのかという会話です。
・探索に参加しなくていいの?
ピラミッドや、湖などに行かなくていいのかという問いかけですね。やはり一番の大発見がありそうなのはあちら側なので。
・ブロントヴァイレスにレーヴァテインが落されて、生きていけなくなってたらどうしてた?
終末に関しての質問です。生きていけない状況になった時皆さんはアニマとどういう関係になるのでしょう。
・あなたは、私とどうなりたいの?
曖昧な関係、微妙な距離感。アニマとの関係を決めかねている人も多いでしょう。その溝を浮き彫りにする会話です。
後は、光景に対する会話。日常的なやり取りなどでしょうか。
ピクニック気分で食べるものを用意していたことにするのもいいと思いますし、それこそ休日気分でこの依頼を楽しんでみてください。
解説
目標 アニマとの会話を楽しむ。
今回はアニマとの交流メインですが、アニマの事を良く知り親密になれるシナリオだと思います。
ちなみに、会話フックですがアニマがPCに対して質問する前提で文章が書かれておりますけれど。
逆にPCからアニマへの質問でも問題ないです。
今後の冒険のために、アニマとの絆は必要になってくると思います。またPBW初心者さんのロールプレイ練習としてもいいと思うので、ぜひぜひご参加ください。
ゲームマスターより
こんにちわ、鳴海でございます。
もしかしたら、戦闘系も日常系もどっちもやりたい人がいるかもしれない。
なので今回は戦闘系に入ってしまってアニマといちゃいちゃできてない人や、アニマといちゃいちゃしたりない人向けに作ってみました。
それではみなさんの参加をお待ちしております。
【TI】空の島でのひととき エピソード情報
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担当 |
鳴海 GM
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相談期間 |
4 日
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ジャンル |
日常
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タイプ |
ショート
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出発日 |
2017/10/24
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難易度 |
とても簡単
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報酬 |
なし
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公開日 |
2017/11/02 |
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時系列は、宝島探索後。場所は、密林……調べていた巨大椰子()の付近。 取り敢えず……分析結果とかに、拍子抜けしながら……かな? 会話については……お互いに、会話フックの「これからの目標ってある?」を聞き、お互いに答える……様な感じで。 ノンビリ……とね。アニマとの交流……いつもしている様で、それでいて……的な。 (※アドリヴ大歓迎)
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詩音
( リリア )
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デモニック | スナイパー | 17 歳 | 男性
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自分の目で情報を得たいので探索後に遺跡中心を見る 歴史を感じさせる建物を見るのは興味深い 遺跡など出来れば端末で撮影 最後に大聖堂へ ステンドグラスがキラキラと反射してると良い 椅子に座って暫くUNOと話す 台詞 神など一度も信仰した事がない人間がこのような場所に立ち寄るのは何とも滑稽な話だが 恨んだのは大切な人一人守れない自身の無力さのみだ 自分の生誕日を忘れていたのは、思い出したくない日に成り代わってしまったのが原因でもある 無意識に触れないようにしていたんだろう …前のアニマを失った日でもあったのでね UNOのお陰でまた大事な日とする事が出来たのは感謝しているよ(触れることは出来ないが頬に手翳し アドリブ大歓迎
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これは、湖で何かタコっぽい触手をもった生物と戦うちょこっと前のお話。 ・フィール 湖の主と戦う前に、思いっきり遊ぼう!みずあびだぁ! 湖といえば、底に何かいいもの転がってるものだよね。まあ、主がいる場所じゃないけど、きっと底には何かいい物あるはず!潜って、湖の底に何があるのか探検しよう! ・アルフォリス フィールの水遊び……しめしめ。これは小言を言われず撮影できる機会ではないか。(撮影端末を用意しながら) 水遊びをする健康的な姿を、多彩な角度から撮影して保存するぞい。 さて、カード業者に製作依頼の予約をいれておかんと。
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アリア
( )
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ヒューマン | マーセナリー | 18 歳 | 女性
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参加者一覧
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詩音
( リリア )
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デモニック | スナイパー | 17 歳 | 男性
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アリア
( )
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ヒューマン | マーセナリー | 18 歳 | 女性
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リザルト
● 探究の風
爽やかな風が吹き抜ける草原。
背の高い風がなびき、空がどこまで広がっている光景。それを『Truthssoughter=Dawn』はただただ眺めていた。
大きな戦いが終わり、その帰り道、撤退していくエスバイロの音を遠くにききながら、Truthssoughterは遠くに視線をやる。
その仕草に不安を感じて『lumiere=douceur』がふと、寄り添った。
まるでその風に吹かれて消えてしまうようなそんな感覚を覚えたのだ。
自分の主が消えてしまう、その恐怖はすさまじい。それは戦いの中でもこんな時でも。
あまつさえTruthssoughterは研究者。探究のために身を犠牲にするような儚げなイメージも相まって。時々本当にそこにいるのかlumiereは心配になるのだ。
そんなlumiereの見上げる瞳を覗き込むように背を曲げるlumiere、そんな彼が導いたのは密林の奥。
任務は完了したこれでやっとこの島を調べられる。
そうTruthssoughterは再びその場所を訪れた。
巨大な椰子の木。その付近に佇みじっと幹の先を見すえる。
植物に対する検査は非常に多くの手順を伴う。この生命体の性質、特徴。最適な温度と機構。種の保存方法。
様々な観点からの調査に乗り出し、その結果が出ては拍子抜けしていた。
「生態調査に、意味があるのですか?」
そう暇を持て余したlumiereは問いかける。するとTruthssoughterは熱心にメモを取りながら質問に答えた。
「ああ、この世界の事を知る上で新しい情報というものは喉から手が出るほどに欲しいですからね」
そう頷くTruthssoughter。
「特に今まで封印されていた土地です。生態系が私達と知るものと違っても何も驚きはしませんよ」
「そう言うものなんですか?」
「そうですね。手がかりが多ければ多いほどに、私はこの世界の真実に近づく」
Truthssoughterはそう一呼吸置くとペンを走らせる手を止めた。
そしてlumiereを見つめる。
「どうかしましたか?」
lumiereはその問いにおずおずとその問いに答えた。
「んっと……Truthssoughterはずっと続けるつもりなのですか?」
「続けるとは?」
「それです。その研究」
そうlumiereが問いかけるとTruthssoughterは微笑んだ。
「すでに何度か語っていますね。lumiere」
そうTruthssoughterは優しく声をかける。
「私の目的、目標は……依然と変わりなく、変更なく。識る事……に他なりません」
「それはどうして?」
lumiereは首をひねる、そこまで難しいことを考えて、謎の答えを追い求めることがどうしてそんなに楽しいのだろう。
そう思った。
「lumiereから見るとおかしいかもしれませんね。周りにも私のような気性の人間はなかなかいないでしょう。それはわかります」
Truthssoughterはlumiereの隣に腰を下ろしてノートを広げて指をさして説明を始める。
これはこの世界の全体図を想像で描いたものや、草花の生体、言葉の羅列。文字のはしがきのようなものもある。
それを解説しながらlumiereはTruthssoughterの言葉を聞く。
「解らない事を、解らないままにしておくのが癪……と言いますか」
「そうなの?」
lumiereは首をかしげた。
「知りたいから、知ろうとしているのです。指向性的には、世界とか法則だとか」
「指向性?」
「向かう先、方向の事ですよ。私は世界の法則からこの世界を解き明かしたいのです」
そのために自分はラストエイジになったのだとlumiereは改めて語られる。
「其方関係で……其処に到るにあたって、調べているのが……ラストエイジらしく、この世界のもっとも先端を知るに、この職業はピッタリでしょう」
それはきっとそうなのだろうlumiereは頷いた。Truthssoughterの言葉だ、よくわかる。
「それはアビスに関して……ですかね? 専攻とも言いますか」
この世界は今人間ではなくアビスが支配している、人々はそれを恐れている。
それを恐れるのは正体不明だから。
正体がわかっているならきっと。きっと戦える。
それもありTruthssoughterは、知るために行動する、全てはわかっていなければ対処はできないのだ。
「でも。法則って?」
lumiereは首をかしげた。それはまるで絵本を読み聞かせてもらっている少女のように。
「そうだね、例えば下に引かれている以上……重力は働いています、……アビスの深淵、或いはアビス本体が……重力を作っているのでなければ、重力経由で何かアプローチできるかもしれません」
「アビスの向こう側が知りたいのですか?」
lumiereがTruthssoughterの袖をきゅっと握った。
「大丈夫ですよ」
そうTruthssoughterはその小さな手を握り返した。
「だったら、私はTruthssoughterがアビスに飲み込まれないように護ります」
この人は危なっかしい。だから誰かが捕まえておかねばならないのだろう。
「では、はい……お願いしますね」
Truthssoughterがそう微笑むと一陣の風が吹いて、そのノートをぱらぱらとめくるのだった。
● 湖のトリコ。
ここは宝島。最近突入できるようになったロストエデン。
空には太陽。風は涼やかで顔をなぜるそれに思わず笑みがこぼれた『アルフォリス』は思わず微笑む。
「のう、フィール。あれを、あれを見てみい」
そんな宝島を闊歩していた『フィール・ジュノ』は作戦開始前の暇な時間をどう消化したものか悩んでいた。
これから湖に住まう化け物と戦うことになるのだが。戦力が整うまで待機しなければならないらしい。
だからフィールは溢れる眠たさに耐えながらも周辺警戒を続けていた。
ただ、そんな中アルフォリスが見つけてきたのが。なんと木々の隙間に隠れた水場。そして穴場。
周囲には誰もおらず暇を持て余していたところ。
フィールは思わず飛び上がり、一直線にその湖を目指した。
「やった! みずあびだぁ!」
「待つんじゃ。フィールよ。お主そのまま水に入ってしまえば戦う前に服が乾かんぞ」
そうアルフォリスが告げる。
「じゃあどうする? 目の前にあんなにきれいな湖があるのに入れないなんて生殺しだよ」
「まぁ落ち着くんじゃ」
そうアルフォリスはセンシブルしたことをいいことにエスバイロに積まれていた荷物を届けさせるため、フィールの目の前にエスバイロを下ろした。
その荷物入れのふたがかぱっと開いて、中をフィールが見てみると。
そこには信じられないものが詰め込まれていた。
それはなんと水着。
「これ。なに?」
「見て分からんか、水着じゃ」
いやそれはわかる。そうフィールは首を振る。
「そうじゃなくていつの間にこんな……」
「これに着替えればお主の願いがかなう、そうかなうのじゃ。さぁこの水着を着るんじゃ」
「いや、だって外だし、着替えるのはちょっと」
「だれも見ておらん、安心せい、我がついておる」
告げるとアルフォリスはあたりをふわふわと飛び回って異常なしと告げた。
「うう、でも確かにびしょ濡れのまま作戦に参加するわけにはいかないし」
そうしぶしぶ服を脱ぎ始めるフィール。装備の留め金を外すとインナーが露わになり、そのインナーも上から、下からどんどん脱いでいく。
青空の下下着姿にまでなるとさすがに羞恥心が耳まで染めたが、誰も見ていないというアニマの言葉を信じてすべてを脱ぐ。
生まれたままの姿に、フィールは成った。
「それにしても」
フィールはアルフォリスの用意した水着をビローンと広げて見せるとため息をついた。
布が少なすぎる。それこそ局部を守る最低限の布のみが使われたマイクロビキニ。
むしろ来ている意味があるのかと問いかけたくなるくらい布が使われていないが。ないよりまし。装備しないよりましである。
「なんでこんな物用意したの!?」
思わず叫ぶフィール。
「うむ、貧乏じゃからなぁ」
そう白々しくアルフォリスが答えた。
「うぐ……」
「限られた生活費で工面するにはこれが限界じゃったんじゃ」
「ううう」
稼ぎの少なさを追求されると何も言えないフィールである。
「仕事品でもないんじゃから、極力布を節約した。この水着でがまんせい」
「ううう、わかったよ。わかったから」
まぁ、実際嘘だが。
アルフォリスはにやりと吊り上った頬を隠す。
実はあの水着、なかなかにいい生地を使っているし、デザインもエロいと人気のデザイナーを使っているので、とても高い。
だがそんなことフィールには話せない。
話したらきっとこの先の幻風景もおじゃんになるだろうからだ。
そんなフィールの悪巧みなどつゆ知らず、青空の下。前身で風を感じるフィール。
「んふふ、よいよい」
そんなフィールの声がアルフォリスの耳に届く。
「見ないでよ!」
そうフィールが念を押すとアルフォリスが後ろ姿をみせつつ頷いた。
そして水着を身に着けると改めて。
「みずだ!」
そうフィールは湖に飛び込んだ。
最初はアルフォリスの用意した面積が少なすぎる水着に赤面していたのだが。
ひと目がないと知って徐々に羞恥心は消えていく。
「わぁ、気持ちいいなぁ」
そう感激の声を漏らすフィール。
「うむ、よいよい」
そう感嘆の声を漏らすアルフォリス。
アルフォリスはその男どもが泣いて喜び、鼻の下を伸ばすような超マイクロビキニ姿のフィールを、胸に刻みつけるように眺める。
「おいで、アルフォリス、湖と言えばきっとなにかあるはずだよ」
そう手を振るフィールの果実が揺れる揺れる。
「底に何かいいもの転がってるものだよね」
そう泳いでいくフィール。
「まあ、主がいる場所じゃないけど、今日の任務の本筋とは関係ないけど。何か見つかればそれこそ貧乏生活から抜け出せるかもしれないよ」
きっと底には何かいい物あるはず。そう気合を入れてフィールは潜水を始めた。
そんなフィールの姿を録画しているアルフォリス。
「しめしめ。これは小言を言われず撮影できる機会ではないか」
水遊びをする健康的な姿を、多彩な角度から撮影して保存するため、彼女について回るアルフォリス。
「さて、カード業者に製作依頼の予約をいれておかんと」
そんなアルフォリスのたくらみもつゆ知らず、フィールは水遊びを堪能する。
潜って、湖の底に何があるのか探検しよう。そうまだ見ぬ冒険の地へとフィールの意識はひきつけられるのだった。
● 世界が塗り替えられた日。
時計の針が時間を刻む。刻一刻、刻一刻。
自室の窓から降りる光が、塵をあらわに浮かべて見せて。
静謐な空気が『レイ・ヘルメス』にまとわりつくようにそれを訴え抱える。
レイは複雑な心持で、眉根をひそめてそれを眺める。
それは以前、街を歩いている時ふと見つけた何気ない品。
レイが思うところがあって購入したペンギン型のスタンド。
それを眺めるとレイは微笑をうかべた。
指先でそのスタンドを撫でると踵を返す。ドアノブに手をかけて一度ペンギンのスタンドを振り返った。
そして。レイは自室を後にする。
大きな任務が控えていた。しばらくこの部屋には戻れないかもしれない。
だからこそ告げる、行ってきます。
静謐が再び部屋を包む。
風を切り、エスバイロのエンジン音が頭蓋骨にこびりつくくらい飛ばした挙句、やってきたのは大自然を衣と纏う宝島。
その探索での任務はそつなくこなし、皆帰宅し始めエスバイロのエンジン音が空を埋め尽くした。それとは対照的にレイは自身の判断で遺跡調査に乗り出していた。
「いいのですか?」
『UNO』がそう問いかける。
「当たり前だ」
そうレイは重たく告げると狭い通路を潜るように進む。自分の目で情報を得たいがため遺跡中心への進軍を試みた。
その道中はレイの心を惹いてやまない光景ばかり、いくつも発見できた。
歴史を感じさせる、だが朽ち果てることのない建築物はとても面白かった。
「綺麗ですわ」
そうUNOが喜びの声を上げる。
彼女が特に興味を示したのは住居跡。そこから暮していた人々の生活を想像して、楽しんでいたのだ。
二人そろって未知の出来事への探究心は強い。
その遺跡の内部を持っている電子端末で撮影していく。
そして最初に目指したのは大聖堂だった。
光が下り、煌くステンドグラス。
降りるひかりはカラフルで、幻惑的に世界を彩る。
ここまで光が下りているのか。そう天上あたりを見渡すレイ。
その視線の先でUNOが長椅子に腰掛けるのだった。
「つかれましたわ」
実際に動いているのは自分なのだが。
そんな言葉を飲み干してレイはUNOの隣に座る。
確かに休みなく歩いていた。一度座り込むと前身の筋肉が緩んでいくような感覚に襲われた。
レイの視線の先には天使の像。その天使は何に祈るのだろうか……きっと神だろう。
「神様とはなんですの?」
そうUNOが問いかけた。
「神ってのは……」
レイは思い描く、全知全能と謳われる神の姿。
そこでレイは自分を笑った。
想像できるはずがないのだ。
だって神など信じたことも無ければ感じたことも無い。
「神など一度も信仰した事がない人間がこのような場所に立ち寄るのは何とも滑稽な話だが。
恨んだのは大切な人一人守れない自身の無力さのみだ」
そう誰にでもなくつぶやくレイ。
「代わりに神を呪ったことも無い」
そう、呪ったのは、怨んだのは、殺したいほどに憎んだのは大切な人一人守れない自身の無力さのみだ。
「兄様」
そんなUNOの声で我に返るレイ、気が付けば握りしめた拳から血が滴っている。爪が手のひらを裂いたのだろうか。
それを見てレイは自嘲ぎみに笑った。
「私には神の存在の有無など決められる権利はないと思っていますので応えかねますが。
ただ純粋に、私はこの場所に惹かれました」
そうUNOはレイに囁くように告げた。
「自分の誕生日を忘れていたのは、思い出したくない日に成り代わってしまったのが原因でもある。
無意識に触れないようにしていたんだろう。
前のアニマを失った日でもあったのでね」
UNOはその言葉に目を見開くと優しく微笑んでこう言葉を返す。
「……存じておりました。
それでも私は、兄様を祝いたいと思ったのです。
貴方様は私にとってかけがえのないただ一人のお方ですので」
そうUNOはレイの拳に手を重ねようとする、それはすり抜けてしまい感触など何もないのだが、それでも温もりが伝わってくる気がして、レイは目を閉じる。
「UNOのお陰でまた大事な日とする事が出来たのは感謝しているよ」
レイもUNOの頬へと手をかざす。触れることは出来ないがそれでも何か伝わってくれるように願いながら。
「兄様が私を手放すまではいつまでもお仕え致します」
神前での近い、神など信じない二人だがきっと。
この日の誓いは永久に、永久に消え去ることはなく、胸に刻みつけらえたことだろう。
どこかで鐘の音がなった。
まるで二人を祝福するかのように。
エピローグ
『詩音』は宝島を振り返る。短時間で様々な出来事を見た詩音と『リリア』だったが、名残惜しい気はしない。
そのエスバイロに積まれた収穫を町まで届けることを夢見て。そしてギアを一段階上げるのだった。
依頼結果