プロローグ
『アニマ』――それは衣食住のサポートや戦闘の手助け、メンタルケアなど様々なことを行ってくれる、自分だけの、唯一無二の存在である。
6歳になった時に1人に1つ与えられ、命がある限りずっとそばにいてくれる。そんな健気で優しい『アニマ』がいるおかげで今の生活がある。
もしも『アニマ』がいなければ、きっと普通の生活なんて送れないだろう。
人生において『アニマ』とは【一心同体とも言える存在】で、【切っても切れない関係】なのだ。
この世に生を受けて、名を貰い、『アニマ』と出会って成長し、そして今がある。
探究者となり、『アニマ』と共に過ごす日々。それはもう一つの家族であり、一番仲の良い友達でもある。
これまでの日常の中で、いろんなことがあったことだろう。
楽しかったことや悲しかったこと。これまで生きてきた年数分、あなたと『アニマ』のあいだにはたくさんの【思い出】や【絆】がある。
そのどれもが掛け替えのないもので、『アニマ』と一緒にいる時間はいつまでも心の中に残る光そのものだ。
きっとこの出会いは、【運命の出会い】だったに違いない。
だから過去を振り返る。
『アニマ』と出会った時のこと。まだ幼かった懐かしいあの日のことを、今度は『アニマ』に聞かせるために、あなたは次々と心に残る思い出を取り出していく。
そして、あなたは語り始めた。
これは何年も前の話。まだ幼かったある日のこと――――
解説
アニマと出会ったときのこと。アニマとの生活で一番印象に残っている事柄を振り返るお話です。
自分のアニマと始めて会った時、あなたはどう思ったのか。
アニマと生活をしていくことでそれがどうなったのか。
一番印象に残っている思い出、仲が深まった出来事など。
最後に、これからアニマとどうしていきたいと思ったか。
これらは全て例ですのでこの通りに書かなければいけない、という縛りはありません。基本的にどんなことを書いても構いません。ルールに則って、書けるだけ書いていってください。
これはあくまで【アニマとの過去や馴れ初め】を振り返るお話ですので、プランには【アニマとの関係性の深い内容】の記入をお願いします。
幼い頃の話がメインになると思うので、口調や一人称などが今と変わっているなどの要素がある場合もプランの中に入れてください。
ゲームマスターより
きっと皆さんのアニマとの出会いはとても素晴らしいことになっているに違いない。そんな思いでいっぱいのNarviです、どうも!
6歳の時に1人1つ『アニマ』がもらえる世界で、皆さんはアニマとどんな経験を積んできたのか。
あんまり過去の設定が決まってなかった人もこの機会に、自分とアニマのプロフィールあたりをイジってみるといいと思いますよ。GM的にはそこの設定の情報は結構大事で、キャラの特徴を掴む材料として役立っているので情報が多いとかなり書きやすく、動かしやすいのです。
心温まる話、思わずにやけちゃう話、ほっこりするような可愛らしい話、感動するような話などなど……。
ここの相談では相談というよりも『アニマとの思い出や可愛いところを全力で語り合う』ような、そんな場になっていればいいなぁ、なんて思います……。
どうか楽しんでいってください!
運命の出会い エピソード情報
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担当 |
Narvi GM
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相談期間 |
6 日
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ジャンル |
日常
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タイプ |
ショート
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出発日 |
2017/9/28
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難易度 |
とても簡単
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報酬 |
多い
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公開日 |
2017/10/07 |
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アニマとは幼少期の頃から良い遊び仲間。 困っている人を助けたいという気持ちが強かった為、アニマと小さい時は一緒に絆創膏を配ってみたり。 二人で医療の勉強をして、医術を学び、人助けをする旅に出た。 アニマの補助にはいつも助けてもらってる。 「ありがとうネネ。いつも助かるよ。」
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両親不明。アニマを施設の大人から与えられる。泣き虫で寂しがり屋なのでアニマとずっと一緒に過ごす。アニマが妹の存在になる。アニマにいろいろなものを見せたり、遊ぶうち、アニマの反応を面白がりはじめ、悪戯に目覚める。この頃から明るくなり始める。しつこいくらいなので、既にアニマは呆れながら付き合っている。自分以外がアニマを弄る事を嫌い、アニマに対し不快な行動をとる人に対し得意の悪戯で徹底的痛めつける。アニマが傷ついた時、パニックになり、元の泣き虫の面を見せる。周囲やアニマにもう少しアニマ離れができるよう促されている。
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貧しいが温かい家庭。頼もしい父親、優しい母親。父親もとでアニマと共に鍛錬を積む。遺伝ためか素質有。アニマにはあわずストレス発散のため食に進む…が嫌々修行に付き合った結果腕はそれなり。アニマ満腹は強く、空腹時弱くなる…。山で猿、鹿、猪、熊時々虎を相手に修行。
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そう、これはグレーターブロントヴァイレスを爆散させる一年位前のお話。 カンナカムイの、とある建物の陰で私は目覚めた。 何も、覚えていなかった。ただ、目の前にアルフォリスがいた。 ううん、世界の基本情報だけは、無理やり入れられたみたいに知っていた。だから、メディカルセンター(他)で私の情報を探そうとしたんだけど……アルフォリスが、何故か邪魔してきた。何度も何度も。調べるなって。 アルフォリスが言うには、私は魔法少女の素質があるって。装備は用意してあるって。 アルフォリスは言った。「おぬしの名は、フィール・ジュノ。どん底から這い上がって一流の魔法少女になる運命じゃ」 そう、私の冒険は、全てここから始まった。
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我は幼き頃より、古代の神話や伝承に心を躍らせていた。そして物語に出てくるようなアニマは、憧れそのものだった。 故に我はアニマに、大昔の言葉で『大地』や『人間』を意味するアダムと言う名を与えたのだ。うふふ。 が、幼き我はか弱く、近所のちびっ子によくからかわれていた……夢見がちで変な奴だとな。 それでも我のアダムは凛々しく知的で格好良かったのだ! そう、お伽話に出てくる王子様みたいに! そんな泣きべそをかいていた我の前に、颯爽とアダムが現れて助けてくれたのだ。 憧れの王子様の格好をして「男の名前のアニマなんて変」と馬鹿にしていた奴らの前で、お姫様抱っこをしてくれて……。 思えばあれが、運命だったのかもな……。
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忘れもせぬ己が生誕日 アンを目の前で失った日に成り代わったのは何年前だったか 親は幼少時に他界 顔もうろ覚え ほぼアンと二人で過ごす少年期 ■邂逅 暴風雨に雷の中の激戦と化した戦場 血で噎せ返る程の屍の山 既に辛い苦しいなどの感情を失っており無心 レイプ目 己を庇って死んだアンの最期の言葉は にぃの傍に、は私がついてな…です ずっと、ここに…忘れたら承知しねーのです、よ と笑顔でレイの胸を叩く 終戦後、用意された代用品に驚く アンと瓜二つで心動くが所詮偽物 最初は適当にあしらうが献身的な態度に寛容的に 癒される 傍で見守り支えてくれる存在の大きさに感謝 台詞 貴方様とかしこまって呼ばれると却ってむず痒い UNOで良かったと今なら思える
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アイギナ
( ルル )
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ドワーフ | ハッカー | 31 歳 | 女性
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印象深かった出来事 昼食の時、昨日なんとなくつけてたバラエティ番組についての会話で盛り上がる その内容は あれが面白いとか、これがすごいとかじゃなくてあのMCの話の入り方が乱雑だとか、あの喋りの間の作り方が丁寧だとか、そんな会話 そんな会話でお互いが同調して少し笑い声が聞こえてもおかしくないような雰囲気が漂った頃 アイギナさんが「後半の、あの人の発言正しいとは思うけど周りに乗っかれるような人がいなかったもう少し周りの人をみるべきだ」と言った。ルルならそれは酷じゃないかなとか、難しいよとか返してくれるだろうと思ったのだけど 「周りの人は選べないからね」と言ったとき少しだけ声が小さくなってた
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二年前の春の話 命は助かったけれど、色々なものを失っていた でも生き残ったのなら、羽奈瀬の家の当主として以前と同じように生活しないと。 「二人目」のスピカとも仲良くやっていかないと 屋敷の裏庭(というより裏山)に綺麗な桜の場所があるんだ 当主だけしか知らない…つまりサボり場所だと、こっそり父様が教えてくれた場所 スピカにも見せたいけれど、今屋敷を出るのはみんな(メイドや執事)が心配するだろうし …結局、内緒で来てしまった 桜を見ていると父様が生きてた頃を思い出す 色々な過去も「あの時」の事も…だめだ泣くな スピカの事はよく分からない でも泣いていいと言ってくれてる気がした この時やっとスピカと向き合えたんだと思う
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参加者一覧
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アイギナ
( ルル )
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ドワーフ | ハッカー | 31 歳 | 女性
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リザルト
●魔法少女、誕生!?
見覚えのない場所で、【フィール・ジュノ】は目を覚ました。
あたりには大きな建物が乱立している。ちょうど日が当たらないため、あたりは薄暗い。
なぜこんなところに――そう考えてみても、フィールにはここの場所どころか自分のことすら思い出せなかった。
ここがどこで、なぜここにいて、何をしていたのだろう。
そんな思考を遮るように、カシャリとシャッターを切る音が鳴り響く。
「……え?」
フィールは驚いてすぐにあたりを見渡した。
暗くてよく見えない。でも、誰かいる。
「だ、誰ですか?」
恐る恐る、目の前にいるだろう存在に声をかけた。
「我か? 我の名はアルフォリス、お主のアニマじゃ!」
薄暗闇から姿を現す。特徴的な口調でどこか楽しそうに笑顔を見せて、【アルフォリス】は名乗った。
「私の、アニマ?」
「ああ、そうじゃったな。お主が憶えてないのも当然よのぉ」
フィールが復唱する。それを聞いてアルフォリスは腕を組んで考える素振りをした。
もしかしたらなにか自分のことを知っているかもしれない。
「なら、私の名前とかいろいろ教えて欲しいんだけど……」
「ふむ、そうじゃなぁ」
その悩む仕草は『教えるかどうか』を考えているように見える。
少しの静寂の後、アルフォリスは答えた
「お主の名はフィール・ジュノ。お主はどん底から這い上がって一流の魔法少女になる運命なのじゃ!」
「……はい?」
思わずフィールから素っ頓狂な声が漏れる。
「お主には魔法少女の素質がある。そして装備等はここに揃っておる」
そう言ってアルフォリスは指をさす。
その方向にはステッキなど、いかにも魔法少女な装備品が置いてあった。
「な、なるほど」
あまりに唐突すぎるカミングアウトに、フィールの頭はパンク寸前である。
「ひとまずあのステッキを取って、魔法少女に変身してみるのじゃ」
それにアルフォリスがニヤニヤと笑いながら言った。
今はアルフォリスの言葉を信じるしかない。フィールはそのステッキを持って、言われるがまま動いた。
一瞬、眩い光がフィールのあたりを包む。
そして、光は晴れる。
「お、おお! なかなかええのぅ!」
アルフォリスがフィールの姿を見て言った。
そして、当の本人は――
「な、ななななな!」
わなわなと震えていた。
大胆にも肩を出した衣装。スカートは普通のミニスカートよりも極端に短く、少しでも動けば中が見えてしまうんじゃないかと思うほど。その上ニーソックスが更にフィールの羞恥心を、それはもうガリガリと削っていった。
魔法少女ということは当然この状態で戦ったりするということで。
「いやああああ!」
アルフォリスの満足そうな表情をみながら、フィールは羞恥で叫んだ。
あの時のことを思い出す。
あれからフィールも自分の情報を得るためにいろんなデータを漁ってみたが、全てアルフォリスに止められている。
フィールにその理由はわからない。
「あれ、何やってるの?」
でもフィールの冒険は、まだ始まったばかりである。
「いやなに、今まで撮って来たお主の写真を、この機会に見直してみようかと思っての」
「え、は、早く消してっ!」
「とは言っても、もうネットに投稿し終えてるからのう」
「何やってるのよ! もおお!」
「お主の生活費を稼ぐためじゃー!」
フィールの波乱万丈な冒険は、まだまだ続く……。
●切れない絆と優しい決意
アニマと人間は切っても切れない関係である。
【ブランスイーパ・ドブトクゾール】は【ネネ・ヘビヤン】と出会ってから共にいろんなことを経験し、一緒に生活を送ることで互いに仲を深めていく。
小さい頃からブランスイーパとネネはいい遊び相手だった。
そんなブランスイーパには、小さい頃から心の中に秘めていた強い思いがある。
「困っている人を助けたいんだ」
それだけ聞いたら中身もなく薄っぺらで、漠然とした言葉。聞く人によってはそれを『ただの子供の戯言』だと掃いて捨てるかもしれない。
しかしネネは違った。
「ワタシはマスターに賛成ですよ。共に頑張りましょう!」
ブランスイーパの行いを誰よりも近くで見ているネネだからこそ、それが言葉だけではなく本心だということを知っている。
いつも人のために行動する、ブランスイーパのその親切心。
その言葉に嘘偽りは微塵もなく、そんなマスターにネネは憧れていた。
二人の強い決意。それが少しずつ二人を成長させていく。
アニマと一緒に絆創膏を配ってみたり。
困っている人を見かけたら積極的に話しかけてみたり。
そんな出来ることをやっていった。小さいことからコツコツと。
見返りなんて関係なく、全ては人を助けるためにブランスイーパはいろんな医療本や、アニマを介して手に入れた知識を元に、二人は医学の勉強も始める。
「マスター。もうこんな時間ですし、そろそろ食事にしましょう」
ネネは共に勉強しながらも、頑張るブランスイーパをすぐ隣で支えてあげていた。
「あれ、もうこんな時間か」
「食事はしっかりと取らないと、体に悪いですよ?」
生活面ではほとんどネネに頼りっぱなしだった。
ブランスイーパは自分を蔑ろにする節がある。それをしっかりもののネネがフォローする。
『マスター、夜更かしはいけませんよ?』
『マスター、好き嫌いはよくありません』
『マスター、包帯などはもう買い揃えてあります』
たまにネネの説教が始まることがある。それも含めて、二人は相性バッチリだった。
いろんなことを学び、仲を深めあった二人は、医者として世界を旅することにした。
二人の間には強い絆がある。
ネネがアニマの力を利用して補助をし、ブランスイーパが直接医療を施す。
その一連の動作全て、ブランスイーパとネネの息はぴったりで、どこにも迷いはなかった。
●似た者同士
【アイギナ】と【ルル】が出会ってからそれなりに時が経って、仲良くなったころ。
「ここの喋りの間の作り方、とてもうまいよね」
「そうですね、聞きやすくてとてもいい間の取り方だと思います」
ちょっと不思議で独特な会話。
会話の内容は『昨日何となくつけていたバラエティ番組』のこと。
会話が少し難しくなるのはアイギナが情報旅団に長く暮らしていたからか。それに相槌を打つルルもまた、アイギナと同じ感性を持つ存在であると言えるだろう。
アイギナとルルは似た者同士だった。
「でも、あのMCの話の入り方はダメね」
「少し乱雑すぎるのでしょうか? 番組の都合上、時間内に収めないといけないので無理やりになってしまったのでしょうね」
「そうね。もう少しやりようはあったように思えるけど……」
「それには私も同意ですね」
二人の間に和やかな雰囲気が漂う。
笑い声などはないものの二人の表情はとても柔らかで、会話は盛り上がりを増していく。
気が合う存在。
アイギナもルルもお互いの前では気を張ることなく、自分をさらけ出せる。
アニマと主人の関係でありながら、その二人の関係は友人と何ら変わり無い。
冷静で冷酷にものを見られるからこそ、アイギナはルルとこういう関係を送っていられる。アニマを道具として見ながらも、数少ない友人として付き合える。
それはアイギナの性格で、いいところだろう。
「後半の、あの人の発言は正しいと思うのだけど、周りに乗っかれるような人がいなかったよね」
アイギナは内容を思い出しながら言った。
続けて、アイギナは言う。
「もう少し、周りの人を見るべきだと私は思う」
思ったことを、自然に口にする。
いつもなら返ってくるだろうルルからの言葉が、一向になかった。
一瞬の静寂。会話は止まる。
ルルなら『それは酷じゃないですか』とか、『それは少し難しいですよ』とか、そういうことを言ってくれると思っていた。
だから、アイギナは少し不思議に思った。
「……ルル?」
一向に何も言わないルルに、アイギナが問いかける。
ぼそりと、とても小さい声で、ルルが呟く。
「周りは選べないからね……」
悲しいような、嬉しいような。
そんな不思議で、感情がないまぜになったような表情が印象的だった。
ルルは何を思ってそういったのか。
それはルルの過去にも、なにか関係しているのかもしれない。
でも、似てはいても本人ではない。アイギナにはその本心まではわからない。
ただ、ルルの新しい一面を見れた。似た者同士のアイギナには、そのことがとても衝撃だった。
●無邪気に芽生えて
【online】はずっと施設で暮らしていた。
両親はいない。どこにいるのかも、ましてや今もまだ生きているのかもわからない。
施設の大人たちに育てられるオンラインは、ずっと独りだった。
だからオンラインにとって、【sample】という存在は特別だった。
「ワタシはサンプル。よろしく、マスター」
「よ、よろしく……です……」
サンプルの言葉に、最初はオドオドした様子を見せるオンライン。
寂しがり屋で泣き虫。とても子供らしい性格のオンラインは、すぐにサンプルの存在に慣れていった。
片時も離れない。オンラインのすぐそばには常にサンプルがいる。
元々アニマとその主はある程度の距離感しか間を置けないが、それどころではない。実際に触れることは出来ないが、触れるか触れないかの距離ほどしかなかった。
それはもう、少しでもそばから離れると軽いパニックに陥るくらいに、オンラインはサンプルにべったりだった。
そんなオンラインはアニマとの生活でいろんなことを学んでいく。
「……わっ!」
「ひゃっ! ……またか、マスター?」
サンプルの驚いた声と表情を見て、オンラインはクスクスと笑う。
「もう、急に脅かすのはやめてくれって言ってるだろう?」
「でも、君の反応が面白くて……!」
「はぁ……」
注意をしても聞く耳を持たないオンラインに、サンプルは小さくため息を吐いた。
止めることはすでに諦めている。オンラインはそんな反応を見て、すごく楽しそうに笑っていた。
オンラインはまだ子供だ。度が過ぎるときは止める。それ以外は、まあ大目に見よう。そういう年頃なのだとサンプルはそれを受け止めた。
それもオンラインの成長の一つ。
成長はそれだけではなかった。
「ねぇ、一緒に本を読みましょ?」
オンラインはそう言ってサンプルのところに一冊の本を持ってくる。
そして、サンプルのそばに座ると、見やすいように開いて読み始めた。
「えっと、これはこうなっていてね! それで――」
その光景は【兄妹】のようで、そのあとも二人は仲良く並んで、いろんな話をした。
寂しがり屋で泣き虫。でも本当はとてもアニマのことを大切にしていて、アニマ離れが出来そうにない、純粋で子供らしい少女。
オンラインはサンプルと出会って、新鮮な毎日を送っていた。
●二人の素質?
にらみ合う両者。
緊迫した空気の中、先に動いたのは【simple】だった。
「行くよ……はあああああ!」
地面を強く蹴って、勢いよく自分の父親に向かって飛び出した。
単純で愚直なほどにまっすぐ動かした右拳を、父親は当然のように横に小さく動いて躱す。
シンプルは勢いで前方に流れる体を右足で踏ん張る。そしてそのまま止まることなく踏ん張った足を軸にして左足を振り上げた。
流石の父親でも、少しとはいえ動いてすぐには躱せない。
そう思って繰り出した攻撃。確かに躱しはしなかった。しかしその蹴りは、いとも容易く大きな右手に収められる。
苦し紛れに振るった、力の乗っていない弱々しい右拳も空いている左手に遮られた。
左足と右手を封じられては、もう何も出来ない。
「よし、今日はもうやめようか」
父親が両手を開いて、シンプルは体の自由を取り戻す。
何度か行われた模擬戦は、父親の合図によって終わりを迎える。
そのあとは『ここはよかった』とか、『ここはダメだった』とか、そういう評価をされて終了。
シンプルはいつもこうして父親に戦い方を教えてもらっている。いつも頼りになる父親は、まだ幼いシンプルには到底太刀打ちできるレベルではなかった。
「はあ、疲れたぁ……」
「ほんとですね……」
シンプルはその場に座り込む。それに合わせて【MNA】がふよふよと近づいてくる。
実体がないとはいえ、アニマも普通の生物と同様に疲れを見せるようだ。
頼もしい父親と優しい母親。その間に生まれたシンプルは、貧しいながらも何不自由ない生活を送っている。
マニアと出会い、一緒に修行をする毎日。
マニアは修行が嫌いらしく、本当に辛そうな表情を浮かべているが。
シンプルには父親からの遺伝か、戦闘の素質があった。
「ほら! もうすぐご飯ですよ!」
「……なんでアニマのアナタが一番嬉しそうなのさ」
逆にマニアには食いしん坊の素質があった。
アニマは直接食事を取ることはできず、あくまでマニアは主であるシンプルが食べたもの味がわかるだけである。
修行によるストレスが、マニアを食に駆り立てるようだ。
「さあさあ! 早く行きましょう!」
「わかったって。ウチも行くから」
食い意地を貼るマニアに引っ張られるように、シンプルは家の方へと向かった。
食事を終えて、シンプルは言う。
「明日は山に行って修行しよう」
「え~、修行は嫌ですぅ……」
当然のように嫌がるマニア。
それを嗜めるように、シンプルは魔法の言葉を呟いた。
「山にはたくさん美味しいものが――」
「行きます!」
「……まあ、わかってたけど、どうしてなのさ」
マニアの予想通りの態度に、シンプルは呆れながら疑問を口にした。
山でたくさんの野生動物と戦った。たまにとてつもなく凶暴で怪我を負ったり、時には全力で逃げたりもした。
そんな日常を繰り返す。小さい頃から修行に明け暮れる、そんな刺激の強い毎日をシンプルとマニアは送っていた。
●幻想の開花
【ロスヴィータ・ヴァルプルギス】と【アダム】初めての出会いは、ロスヴィータのこんな発言から始まった。
「か、かっこいい……!」
「……はい?」
綺麗な髪に青色の瞳。中性的な顔つきで線が細く、落ち着いた表情をしたアニマ。
その姿は物語の王子様のようで、ロスヴィータの心を強く打った。
ロスヴィータは昔から幻想的なものに思いを馳せていた。
そんなロスヴィータから見たアダムは、彼女の頭の中にあった世界観に出てくる王子様そのもので。
ロスヴィータはアダムにべったりだった。
「アダムはおとぎ話に出てくる王子様みたい!」
「そうですか?」
「うん!」
ロスヴィータは楽しそうに笑顔を見せる。それをアダムは微笑ましそうに見て、優しい笑みをこぼす。
そんな二人の日常。
それを汚すように、一人の男の子が言い放った。
「そんなことありっこないのに、夢ばっかり見て変なの」
息を吐くかのように、ぽつりと呟かれたその言葉。
ロスヴィータも、自分がほかの人と少し違うことは、誰よりも理解していた。
「私は、やっぱりおかしいのかな……」
夢見ることはいけないのだろうか。
他人と違うことはいけないのだろうか。
「おかしくなんかありません」
聴き慣れた優しい声。驚いてロスヴィータは顔をあげる。
目の前にはアダムがいた。周りを遮るようにロスヴィータの前に立ち、泣いているロスヴィータの体を、優しく抱きしめた。
アニマには実態がない。ホログラムのようなもので、決して触れることは叶わない。
しかしロスヴィータはアダムにしっかりと抱きしめられている。感覚はないけれど、温もりが、心の暖かさが伝わっていた。
「誰が何と言おうとマスターはマスターなのですから。ありのままでいてください」
そう言って、優しい笑みをロスヴィータに向けた。
その姿は空想上の王子様そのもので、ロスヴィータは震える声で呟く。
「やっぱり、アダムは王子様だよ……」
ロスヴィータは暖かさに包まれながら、暖かな涙を流した。
それから――
「我は禁断の知識を求める魔女、世に混沌を!」
ロスヴィータは完全に吹っ切れた。
アダムはその姿を見て、安心したように言った。
「了解しました。つまり馬鹿騒ぎをする、と」
●空虚なモノに想いを注ぐ
これは、残酷で悲惨で、心に残る幼い頃の話――
その日、【レイ・ヘルメス】は戦場にいた。
嵐が吹き荒れ、雷鳴が轟く黒い空。あたりにはほんの少し前まで人間だったものが血を撒き散らして伏している。
そんな激戦の果ての地で、レイは唯一無二の存在――アンを抱えていた。
焼け焦げてしまった腕。助からないことはひと目でわかった。
まだ辛うじて人間と言えるだろうアンを抱えて、レイは進む。
レイには親がいない。
小さい頃に両親をなくしてからは、ずっとアンと一緒だった。
アンがいなくなるなんてありえない。これからもずっと一緒。
そうなるはずだったのだ。
「にぃ……」
弱々しくアンが言った。
耳を近づけないと聞こえないほどの声だった。
「アン……」
「にぃのそばに、は、わたしがついてな、です……ずっとここに、忘れたら、承知しねーのです、よ……」
苦しそうで、とても引きつった笑顔。
なのに、それは戦場に似合わないほどに眩しくて、そんな笑顔を向けてアンはレイの胸を叩いた。
その腕が、力なく落ちる。
今日はレイの誕生日。
落ちて、落ちて、空っぽになったレイは、独りで歩いた。
それから暫くして、共に過ごすことになったアニマの【UNO】とは、うまくいかなかった。
所詮アンの代用品なんだと、レイはウノのことを冷たくあしらった。
アンの代わりなんてこの世にいないんだと、レイはウノの存在を【偽物】だと否定した。
それから一日が過ぎ、一週間が過ぎ、一ヶ月が過ぎた。
レイはウノを認めない。それでもウノの態度は変わらない。
ウノはどれだけ冷たくされても変わらず、献身的にレイに尽くした。
「……ウノ」
レイは近くにいるウノを呼ぶ。
レイがウノを呼んだのはこれが初めてだった。
「はい、なんでしょう?」
「なんでウノは俺に付き従うんだ? こんなにも冷たくあしらっているのに、普通おかしいだろう……?」
レイはウノに聞いた。
ウノはレイの顔を見て、言う。
「私は貴方様の昔のことを聞いてはいても、その場にいたわけではありません。貴方様は私の存在を認めない理由も私は知っております。
だから私は貴方様にどれだけ疎まれてもいいのです。ただ、どの顛末であれ貴方様は私に生きる理由をくれたお方です」
レイはじっとウノの顔を見る。
ウノは言葉を続ける。
「私の命は貴方様のもの。私はその気持ちを汲んだ上で、貴方様に付き従う所存ゆえ、何があろうとも私だけは貴方様の味方です」
ウノはそう言い切った。
ウノはウノ、アンはアン。ウノは『アンの偽物』なんかではない。UNOは『アンとは違う本物』。
わかっていて、見て見ぬ振りをしていた事実。
「貴方様とかしこまって呼ばれるのはむず痒いな……」
「そうでしょうか? でしたら私はなんてお呼びしましょう」
「そうだな……にぃ、とかか……?」
レイは戸惑ったように言う。
こんなやりとりも、レイには懐かしかった。
「にぃ……? その名で呼ぶのは貴方様の中にいる『掛け替えのないあのお方』だけでしょう?」
ウノはそう言って首をかしげる。
思案顔を浮かべて数秒後、ウノは精一杯の思いを込めて告げた。
「でしたら『兄様』と、呼ばせて下さいな」
レイはその言葉に頷く。
「今まですまなかった。今ならウノで良かったと、心からそう思う」
「ありがとうございます。最上の褒め言葉ですよ」
少し照れながらウノは答える。レイはもう、一人ではなかった。
隣を見ればウノがいる。
もう空っぽなんかではない。確かなものが、二人の間に生まれた瞬間だった。
●儚い桜、二人の秘密
これは二年前の春の話。
一人目のアニマを失い、二人目のアニマを受け取った、そんな昔の話。
代々からくり細工を作る資産家の家に、【羽奈瀬 リン】は生まれた。
両親はすでに他界し、リンはメイドや執事たちに、それはもう我が子のように大切に育てられ、今では幼いながらも現当主として動いている。
そんなリンを一番に支えていたのが、ずっと一緒にいて離れない存在、一人目のアニマ『スピカ』だった。
家族がいなく、孤独だったリンのそばにいて、寄り添ってくれる掛け替えのない存在。
しかし、そんな関係はいとも容易く粉砕される。
とある事件によって一人目のスピカはリンの元から消えた。リンは何とか一命を取り留めたが、目を覚ました時、もうそのスピカの姿はどこにもなかった
孤独を心の奥底へと強引に押し込めて、リンは現当主としての仮面を被る。
数日後、リンは二人目の【スピカ】を受け取った。
「リン様、これからよろしくね!」
二人目のスピカは明るい笑顔で言った。
このアニマは詳しい事情を知らない。
仲良くやっていかなければ、そう思うのにも関わらず、リンの心はずっと暗いままだった。
そこでふと思い出した。屋敷の裏庭の、綺麗な桜の咲くあの場所を。
父親から教えてもらった、当主しか知らない場所。つまり、誰にもバレないサボリ場所。
「行きたいですね……」
でも、周りが心配する。
リンは浮かない表情のまま、一つため息をついた。
突然、そばにいたスピカが嬉々とした表情で言う。
「桜!? 見たい見たい!」
「いや、でも執事たちが――」
「でもリン様は見たいんでしょ? もう歩けるんだし、行けばいいじゃない!」
空中に浮いているスピカは体をピョンピョンと動かし、リンを促した。
結局スピカに流されるがまま、リンは屋敷の裏庭に来てしまった。
この時期の桜はとても美しく、綺麗に花をつけ、風になびく姿は幻想的にも見える。
「わぁ、綺麗……」
スピカはその光景に目を奪われていた。
それほどまでに、この場所は美しい。
そしてまた、儚くもある。
「父様……スピカ……」
どうしても、ここを見ると思い出してしまうのだ。
まだ両親が生きていたときのこと。
そして、『一人目のスピカ』との思い出のこと。
ダメだ、泣くな、とリンの心が訴えかける。しかし、いくら我慢してもリンの目にはこみ上げるように涙が浮かんだ。
すぐそばにはスピカがいる。
スピカは何も言わなかった。
リンが今泣きそうになってる訳も、何も聞かずに、スピカはただただリンのそばを離れない。
スピカは事情を何も知らない。しかし、何もない空っぽのリンに寄り添うように、スピカはリンの隣に立った。
それがとても暖かくて。
『泣いてもいいよ』と言ってるような気がして。
「うわああああ!!」
リンはこの時、始めて涙を流した。
――桜が綺麗だから泣いたんでしょ? そうでしょう?
最後までスピカは何も言わなかった。
今は泣かせて上げないといけない。何となく、そんな気がしたのだ。
このことはリンとスピカ、二人だけの秘密。
執事たちにはこっぴどく怒られたけれど、それでも二人は終始笑顔だった。
依頼結果