プロローグ
「ああ、いいから。そのまま、そのまま」
作戦室に入ってきたリン・ワーズワース少尉は、思わず立ち上がりかけた探求者たちに告げた。
さもありなん、彼女は、軍事旅団レーヴァテインの精鋭部隊と呼ばれる『ネメシス兵団』所属で、先日のブロントヴァイレス戦でも赫々たる戦果を挙げている。このところしばしば、軍属内で噂になる人物だった。『有名人』を前にして、浮き足立つメンバーがいるのもそうおかしくはなかった。
といってもそのリンは、見た目はハイティーンの少女に過ぎない。それなりに可愛いではあるが背は低く、水色の髪は長い三つ編みにしている。あみだに被った飛行帽と、とこどころ銃痕のあるフライトジャケットは幾分くたびれた印象だ。下町に住んでる女の子、といった風貌で、カリスマ性はあまりなかった。
「せっかく集まってもらったのにこんな話で悪いんだけど……」
リンは依頼内容を語りはじめた。
●空飛ぶへべれけ船
バッカニアの系列につらなる空賊団に貨物飛空艇が奪われた。停泊していたところを襲撃され、積み荷ごと奪取されてしまったのだ。乗組員は全員、命からがら逃げおおせたというのが不幸中の幸いだろうか。
問題は船が運んでいたものだ。
「お酒なんだってさ。それも……強烈なのばっかり!」
ラム酒、ウイスキー、ウオッカにジン、他にもテキーラだのブランデーだの、わざわざアルコール度数の高いものばかり選んだのかと言いたくなるくらい『重い』ラインナップだという。瓶や缶はもちろん、樽単位でもぎっしり用意されていたというから、酒好きにとってはうらやましくもけしからん話であろうか。
「それで連中、売りさばくつもりだったんだろうけど、ついつい手を出してしまって、中はもうとんでもないことになってるみたい」
想像はつくだろう。成功祝だとかなんとか理由を付けて、中で大宴会を繰り広げているのだ。もともと荒っぽい連中だから、その饗宴たるや度を超しているに違いない。
かち割られた樽から滝のようにラム酒が流れるそばでは、空気に溶け込んだバーボンで霧が生まれており、ウオッカ風呂に半身浴してイイ塩梅の賊がふやけている。ジンで流しそうめんをしている夏らしい阿呆や、ブランデーで頭を洗っているシーズン無関係のいかれポンチもいるかもしれない。
「想像するだけで酔っ払いそうな話じゃない? 私? たぶん空気吸っただけで昏倒しそう……」
当然、船の操舵手もへべれけだ。これ以上ないほどの飲酒運転である。
「目撃情報では、飛空艇は蛇行を繰り返して飛んでるという大変な状況みたいね」
絶賛危険運転中のこの船は、放っておけばアビスに墜落してしまうかもしれない(というか、たぶん墜落する)
そうなる前に急ぎ船に追いつき、乗り込んで奪い返すのがこのミッションの目的だ。空賊はできれば、生かして全員逮捕するくらいが望ましい。
「まあ酔っ払いが相手だから戦いは楽かもね……でも、酔っ払いは得てして予測不能の行動に出たりするから気をつけたほうがいいと思う」
リンは他のミッションがあり、自分はこの作戦には同行できないことを伝え、「じゃあ頼んだから」と作戦室を立ち去りかけたところで、
「あっ、そうだ」
言い忘れてた、とリンは言い加えた。
「バッカニア系の空賊団の名前は『ブラッディローズ』、メンバーは全員女性だって」
未成年も大人も、酒豪も下戸も、生まれてこの方消毒用アルコールしか見たことがない者も、全年齢全種族参加可能・推奨のこの作戦、うっかり飲んだりうっかり二日酔いになったりしないよう、心して挑戦してもらいたい!
解説
作戦は二段階の構成となるでしょう。
(1)貨物船に追いつき、乗り込む
意識せず曲芸飛行を行っている貨物船に各人のエスバイロで追いつき、甲板にとりついて内部に侵入します。
空賊レディースが船内から銃や槍で、船外からエスバイロで反撃してくると思いますが、酔っ払いのやることなのでそうそう当たるものではないと思われます。といっても、めちゃくちゃな攻撃ゆえうっかり当たってしまう可能性もあります。ご注意下さい。
(2)船内で空賊を蹴散らし、船のコントロールを奪う
とにかく船内は揺れます。揺れるたび樽が転がってきたり瓶が砕けたりしてもう大変なことになりそうです。
本来、操舵室への道は直線のはずですが、内部がぐちゃぐちゃになっているので障害物を乗り越え乗り越えして進む必要があります。
空賊の戦闘意欲は大変に低く、したたかに酔って絡んでくる空賊、泣き上戸というのかなぜか泣く空賊、口説いてくる空賊、パーティに誘ってくる空賊など、わりとどうしようもない人たちを相手にしなければなりません。それも全部妙齢のお姉さんだったりするので色々と気をつけましょう。
戦闘より介抱のほうが忙しいかもしれません。
なお、メンバーは25人とのことです(みなさんの到着前に船から落ちてなければ)。
船を制圧したところで終了となります。
とにかく、酔っ払いと一緒に墜落だけは避けて下さい!
ゲームマスターより
はじめまして! ゲームマスター(GM)の桂木京介です。
よろしくお願いします。
男女問わず酔っ払いには困ったものですよね……。
冒険シナリオではありますが、戦闘色は薄めで、どちらかといえばコミカルな対応が求められる話を装丁しております。間違って(?)飲んじゃったりしても構いませんが、未成年のキャラクターの場合は微妙に誤魔化した描写になる可能性があります。
アニマはキャラクターと感覚を共有しているので、酔っ払う可能性もあります。といっても、『私はベロベロ、アニマは冷静で、飲みすぎを叱られる』という展開も(その逆も)可能です。
プランをどう書いたらいいか判らないかたは、思いついた自分とアニマのセリフを並べて下さるだけでもOKです。私が調整して物語に仕立てさせていただきます。
また、フレーバーが余りそうなら台詞で埋めてみましょう。そのほうが楽しくなると思います!
それでは、次はリザルトノベルで会いましょう!
あなたのご参加をお待ちしております!!
桂木京介でした。
飲んだら乗るな! ダメ、ゼッタイ! エピソード情報
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担当 |
桂木京介 GM
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相談期間 |
5 日
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ジャンル |
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タイプ |
EX
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出発日 |
2017/8/11
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難易度 |
簡単
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報酬 |
通常
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公開日 |
2017/8/21 |
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ニーア
( コロナ )
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フェアリア | マッドドクター | 6 歳 | 女性
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目的 気持ちいいことをする 動機 気持ちいいことしたいから 行動 エスバイロから問題の船に乗り込みましょうかぁ。皆飲酒してるみたいだから、そう反撃は貰わないでしょう。 その後はその楽しそうな雰囲気に混ぜてもらいましょうかねぇ。そうねぇ、皆理性も少ないだろうし、気持ちのいいことに誘ったら喜んでくれるかしらぁ? 自分用に滋養強壮剤を持っていきましょうかぁ。できれば、全員とまぐわいたいしぃ♡ そうしておけば、他の人が船をなんとかするでしょう。私は気持ちよくなれる、船は沈まなくて済む、依頼の報酬はもらえる。いい事ずくめねぇ。 武装はしないでいくわぁ。武器が無い、私みたいな非力なフェアリアなら相手も警戒しないでしょうしぃ。もしかしたら捕まって、逆にまわされるかもしれないわねぇ。それはそれで…すっごく気持ちよさそうだし、いっかぁ♡ そういえばアニマのコロナにも、感覚はつながってるのよねぇ。どんな反応してくれるのかしら…♡
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1.他の皆さんが船に乗り込みやすくなるよう、囮になってエスバイロでかけまわります 楽しそうなのがお好みのようなので、少々派手に旋回とかして攻撃を避ければ敵の目をひきつけられるでしょうか? 2.……匂いだけでも酔いそうですね。袖で口元を覆って少しでも匂いを避けつつ移動 できるだけ躱して駆け抜けたいけれど、逃げられそうになければ逆にお酌して酔いつぶそう スピカも背後から接近してこないか見ていて 色々身の危険を感じたら軽く物理的に眠ってもらいます 眠るなら廊下ではくお部屋でどうぞ 人数を確認しつつ空いている部屋へ閉じ込め(確保) 終わったら看板にでて深呼吸しに行こう。スピカも少し酔ってるみたいだし。
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仕事に私情を持ち込むものではないけれど……酒好きとしては空賊の行為は許せないわ。 こいつらのせいで酒の供給が止まったり値が上がったりするかもしれないことを考えると…… 少しでもはやく船を制圧して、一本でも多く酒を守るわ。 ※装備は槍と盾を持っていきます。 ・貨物船に乗り込むまで エスバイロの操縦は枝垂にまかせる。 私は盾を構えて銃や槍に備える。 避けたほうが当たりそうなので真っ直ぐ貨物船に向かって飛ぶが、敵のエスバイロがきたときだけは避ける。避けるだけで相手にはしない。 ・乗り込んだ後 操舵室に向かいつつ、既に飲まれてしまった酒の空き瓶を回収していくわ。 空賊がいたら槍で足を刺したり盾を構えて体当たりして転倒させてから顎を蹴ったり、こめかみや顔面を回収した酒瓶で思いっきりぶん殴って黙らせる。 酔っ払いにはやり過ぎるくらいが丁度いいわ。変な絡まれ方すると面倒だから見つけ次第武力で黙らせるの。酒の恨みは怖いわよ。
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蛇上 治
( スノウ )
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ヒューマン | マッドドクター | 25 歳 | 男性
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【目的】船のコントロールを奪う 【心情】空賊なうえに酔っ払い……付き合ってられないな。 【乗り込む】エスバイロにアニマを同化させ、船に乗り込む 襲ってくる空賊は、酔っぱらっているからといって油断せず対処、乗り込むのに支障をきたすなら落として進む。 【乗り込み後】アニマのサポートを受けながら操縦室を目指す 障害物はよけたりどかしたりして対応 空賊に絡まれても無視して進む どうしても邪魔なら攻撃 操縦室に到着したらコントロールを奪う 【コントロール奪取後】空賊は捕縛する 乗り込んだ仲間が酔っぱらっていたら介抱する
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【心情】 このままでは貨物船の持ち主は大変な損害を被りますし、空の安全の為にも空賊団を放置してはおけません。 速やかに貨物船に追いつき、空賊の無力化と船のコントロールの奪取に動きましょう。 【行動】 武装は盾と片手で振るえる鎚を持っていきます。後は相手を拘束できる道具があれば併せて持っていきたいです。 アニマのゲッカコウにフォローしてもらいつつ皆さんと共にエスバイロを操縦して相手からの攻撃に注意しつつ貨物船を追跡、乗り込みます。 迎撃に来た相手のエスバイロは可能であれば撃墜して捕えたいです。 船に乗り込んだ瞬間漂うアルコール臭に思わず口元を塞ぎます、これは余りに酷いです。 出来ればこのまま進みたいのですが、流石に片手が使えないままなのは困るので匂いを我慢しつつ進みましょう。 私はゲッカコウのエンチャントを貰って空賊と進行を邪魔する障害物の対処をします。 進行を邪魔する物で破壊しても問題なさそうなのは鎚で壊していきます。 襲い掛かってくる空賊は攻撃を盾で防ぎつつ鎚で足を殴って動きを封じつつ拘束具で拘束しましょう。 それでも抱き付かれた時は壁に体ごと叩きつけるようにして引き離します。 余程の事がなければデュエルブラッディを使う事はないと思いますが必要と判断すれば迷わず使います。 お酒を飲んだら船に乗ってはダメですよ、絶対に。
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ふん、酒か…僕はあまり好きではないな。 思考を鈍らせる要素はできる限り排除したいのが正直なところだ。 しかし、他者との関わりにおいて有効な場面がある事も事実…もっとも、今回は必要なかろうがな。 さて、予測がつかん部分がある以上、死角を狙うよりいっそ正面から向かった方が良いだろう。 鈍った思考では反応も遅くなる。不確定要素を増やすよりは思考の誘導… いっそこちらに目を向けさせた方が逆に安全性は高まる。 何せこちらは一人取り付けばあとはなし崩しに突入できるだろうからな。 船内に突入後は速やかに…といってもそうはいかんだろうが、可能な限り速やかに操舵室を目指す。 荷物につぶされてはかなわん、気やすめだろうが少しでも物の少ないルートで…な。正直気が滅入るが。 酔っ払いどもの相手をするのは面倒だが仕方があるまい。 適当にあしらい、寝かせられるものは寝かせ(物理)、暴れるようなら捕縛する。 単純だがそれが結局一番早い。
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・船追跡 攻撃してくるみたいだから、こっちもお返し!きゃるーん☆テンペストで攻撃しまーす。 酔っ払いだから、ただでさえ低い命中率が逆上で更に激減するんじゃないかな?そしたら、貨物船に取り付きやすくなるよね。 ・内部 乗り込んだら……うーん、どうしよう? 魔法少女の杖で、暴れそうな人の頭ボカッとやればいいかな?ロープとか持っていけるならぐるぐる巻きにしよう。 でも、大人しくしてる空族さんには優しくしてあげよう。身の上話聞いてあげたりとか。女の人が空族やってるなら、きっと事情があるんだよ、うん。 ・アルフォリス フィールのテンペストを効率良く当てられるよう計算。 突入成功したら、酔っ払いを介抱?しとるフィールを含め、酔っ払ったやつらを撮影じゃ。 何に使うかじゃと?これ(編集した物)を使って、酔いの醒めたこやつらとお話じゃよ。 ネットにばら撒かれたくなかったら、我らの傘下に下れとな。今は復旧作業中じゃからの。人手はいくらあっても困らんわい。
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持っていく武器は短剣です。 エスバイロCr33「ブリスコラ」に乗って仲間と共に盗まれた貨物飛空艇の奪還を目指します。 酔っ払いの攻撃に当たる程、下手なわけではないですがそれでも実戦故油断はしない。 操縦に集中するのでアニマのエルザに敵の位置を表示させて貰う。 まず機動力を生かして先行、敵の攻撃に気を付けつつ貨物船の上を一回通過しつつエネルギーチャフを散布。敵の目を惑わす。 これで味方は安全に貨物飛空艇に近づける筈。折を見て私も甲板に取り付いて内部へ進入しましょう。 船内は仲間と連携して空賊を制圧しつつ、操舵室へ向かいましょう。 戦う時でも殺さず、無力化を目指す。鳩尾を殴ったりとか短剣の柄で殴ったりだの。そんな感じで。 しかし船内は酷い有様ですね……。私はビールが一番です。(ログロム出身だから) さっさと終わらせて仕事の後に飲もう。
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参加者一覧
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ニーア
( コロナ )
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フェアリア | マッドドクター | 6 歳 | 女性
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蛇上 治
( スノウ )
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ヒューマン | マッドドクター | 25 歳 | 男性
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リザルト
●へべれけ船、捕捉!
なんだあれは、と船を目にするなり『蛇上 治』は思った。
無理もない。眼前の空域(そら)をゆく貨物船は重すぎる身を持て余すようによろよろと蛇行し、肝硬変になったペリカンを思わせる有様なのである。聞きしに勝る酷さだ。浮島のひとつでもあれば、たちまち衝突し海ならぬアビスの藻屑となることだろう。
付き合ってられないな、と辟易するような表情を浮かべた治に、アニマの『スノウ』が呼びかけた。
「ま、おかげさんで簡単に追いつけたわけだし、サクっと片付けちゃおうよ」
「サクッと……か。そう単純な話でもなさそうだ」
治は行く手を指す。探求者たちの接近に気がついたようで、船から次々と空賊のエスバイロが迎撃に出てきたのである。パパパパ、と船の後方でまたたいているのはマシンガンの連射らしい。
ところがその様子に気がついても動じることなく、
「むしろあれくらいのほうが攻略しがいってものがあるんじゃない?」
スノウは笑う。
かもしれない、と治の口元に微苦笑が浮かんだ。スノウはエスバイロに身を消す。それと同時に、彼女宿ったマシンはエンジンの回転数を一気に上げたのである。
治のマシンのすぐ前方、機体を軽く傾げて『フィーネ・カデンツァ』は迫撃砲から身をかわした。フィーネを追うかと思いきや、迫撃砲は誰もいない方向に次弾を放っている。
「滅茶苦茶じゃない。あれで当たると思ってるのかな?」
と言ってフィーネのアニマ『枝垂』が姿を見せた。たわわなバストが襟の合わせ目からこぼれ落ちそうな肢体、しかしそのボリュームのある肉体を包むのは、模様ひとつない白装束だ。加えて頭には三角頭巾、すなわちクラシックな幽霊コスチュームなのである。といっても枝垂の血色は大変に良く、ゴースト感はまるでなかったりする。
そうね、と軽く応じたフィーネであるが、その余裕は持続しない。
「あれ何ですかぁ?」
ふわっとしたマシュマロのような口調で『ニーア』が言う。ニーアの横ではアニマの『コロナ』が目の上に手をかざし、
「……どうも、酒瓶を投げているようでありますね」
と呟いている。コロナの白衣はバタバタと風になびいていた。イメージ映像なので実際コロナが風を受けているわけではないのだが。
コロナの言う通りだった。ウイスキーのものだろうか、琥珀色の瓶がくるくる回転しながら飛んでくるのだ。貨物船の後方ハッチを全開にして、ビキニ姿に毛皮を引っかけただけの女性が、へらへら笑いながら左右の手で交互に、瓶をぽいぽいと投げているのである。
「ずいぶんと楽しそうですね」
『羽奈瀬 リン』は薄笑みを浮かべ、アニマの『スピカ』に短く告げた。
「スピカ、彼女たちは楽しそうなのがお好みらしいよ。少々派手目な旋回を頼んでいいかい?」
「曲芸飛行を披露しろって?」
「そう聞こえたのなら、そうかもね」
「要するに【陽動】ってことよね」
スピカが機体操縦に集中するやリン機は嵐に舞う凧のように乱れた飛行を示した。無軌道に投じられていたウイスキーの瓶がリンに向かってくる。スピカに操縦を任せたリンは、これをいともたやすくマジックミサイルで撃ち落としていた。
砕けた瓶から液体が散った。コクのあるスモーキーな香も。
やっぱり、とフィーネは確信した。
空瓶ではない。ウイスキー、それもおそらく上質のモルトウイスキーが詰められた新品の瓶を、惜しげもなくあの酔っ払い空賊は投げ捨てているのだ!
許せない――!
これで怒らない酒好きはおるまい。フィーネは奥歯を噛みしめた。仕事に私情を持ち込むものではないが、この連中のせいで酒の供給が止まったり値が上がったりするかもしれないことを考えると、肚の底から熱い怒りがせりあがってくる!
赤い顔をしてふらふら近寄ってきたセクシーな空賊が、自分のエスバイロから身を乗り出し斧を繰り出してきた。果たして当てる気があるのか疑わしいほどの大振りだ。
当然、こんなものに当たる『イーリス・ザクセン』ではない。軽く身を屈めてかわすと、
「敵の位置表示、お願いします」
カフェで紅茶でも頼むように平然とアニマの『エルザ』に告げ、自身は体重をかけてエスバイロを旋空させる。
だが酔っ払いとはいえ空賊にも空賊の意地がある。髪をドレッドに編み上げた女性空賊は、イーリス目がけナイフを放った。
「下です」
エルザが鋭く指摘するも、その声が届くより先にイーリスは腰の短剣を抜いている。
「酔っ払いの攻撃に当たるほどお人好しではありません」
短剣を閃かせ凶刃を受け流した。そうして空賊に目もくれずイーリスは貨物船の上を通過し、四方にエネルギーチャフを散布するのである。
さすがイーリスさん、と呟いたのは『チュベローズ・ウォルプタス』だ。イーリスが生み出した攪乱に乗じて自機を加速、後方ハッチから貨物船内に突入した。
「左手!」
アニマ『ゲッカコウ』が声を上げる。反射的にチュベローズは左腕の盾を上げた。
がちゃんとガラスの砕ける音、見れば褐色の肌のお姉さん(=空賊)が、「のってきちゃらめなのぉー」と呂律の回らない口調で叫びながら、次のウイスキー瓶を投じようとしているところだった。チュベローズは右手の槌を振り上げるも金属部分ではなく、逆に握って柄の部分で酔っ払いを一撃する。あっさりと賊は床に這いつくばって伸びてしまった。
「これは余りに酷いです……」
チュベローズは口元をふさいだ。びっしょりと盾が濡れている。ウイスキーによるものだ。
ぷんと甘い香りが鼻を突く。アルコール臭の発生源は盾を濡らしたものだけではない。船内すべてにたちこめているらしい。むせ返るほどの酒臭さではないか!
とはいえ先に進まないわけにはいかない。チュベローズは障害物の対処を開始した。
「ふん、酒か……酒は思考を、とりわけ判断力を鈍らせる」
運動能力もな、と付け加えると、『メルフリート・グラストシェイド』はエスバイロの体当たりをかわした。翠色の髪をしたエルフらしき女性空賊が、よろめくようにしてメルフリートの真横を通り抜けてゆく。このときメルフリートはかわそうとすらしなかった。死角を取りに行くのではなく、あえて正面から挑んだのが奏功したのである。相手は勝手に逸れたのだった。
「酒酔い運転禁止、って言いたいところね」
アニマ『クー・コール・ロビン』も呆れ口調だ。メルフリートの前を行き過ぎた空賊機は、天に続く見えないレールを進むようにして、反り返る軌道で上昇していく。
「まったく……!」
メルフリートは毒づいた。そして機を高速後退させると両腕を拡げた。
どすん、と衝撃。なんと先ほどの空賊が空から降ってきたのだ。だらしなく口を半開きにして寝ている。アビスに墜ちるに任せてもよかったのだが、さすがに見殺しにもできず思わず救ってしまったのである。
「ちっ……酔っ払いどもめ……だから僕は貴様らのような連中が嫌いなんだ」
酒臭い寝息を浴びながらメルフリートは苛立たしげに独言していた。
カッとまばゆい閃光が弾けた。
「お返しだよ! きゃるーん☆テンペスト!」
魔法少女『フィール・ジュノ』が、杖を頭上に掲げて力を解放したのである。ヘタクソな銃撃をしかけてきた貨物船の空賊に、鮮烈な光の放射を見舞ったというわけだ。
(フィールよ! 魔法を使うならせめてアタシには予告せんか! 度肝を抜かれたわえ!)
出し抜けだったこともありアニマの『アルフォリス』はプライベートモードでフィールに姿を見せ両腕を振り上げた。
「あはは、ごっめーん。でも効果あったと思わない?」
実際その通りだった。銃撃も残る空賊も、フィールを目標に転じたものらしい。ヘロヘロの弾丸やヘロヘロの突進をしかけるべく、ヘロヘロと支度をはじめているではないか。
(そのようじゃが……ここから策はあるのか?)
「実はなかったりして」
テヘッと笑うと、フィールは機体を貨物船のハッチに向けた。
(考えて行動せい! 考えて!)
そもそも一流の魔法少女というものはじゃな――というアルフォリスの小言ごと、フィールの姿は貨物船内に消えていった。
●酔っ払いワールド、突入!
艦内に入ると、探求者たちは思い思いの方向に散って操舵室を目指した。
「……匂いだけでも酔いそうですね」
リンは袖で口元を覆っている。
奥へ進むほどに空気はアルコール密度を高めていた。呼吸しているだけで、頭が熱くぼんやりしてくるではないか。
外の女空賊をあらかた片付けると、気を失ってぐったりしている彼女ら(※原因は主として飲みすぎ)を縛り甲板側部の入口隅に転がす。
肩にかかった黄金の髪を、イーリスは軽やかに背に流した。
「とりあえず、一人もアビス送りにしなかったことだけでも良しとしましょうか」
同行のチュベローズに呼びかけるも返事がない。不審に思い顔を上げると、チュベローズは頬を染めてもじもじとしていた。彼女は長い両脚を内股気味にし、身を屈め上目遣いでイーリスを見ているのだ。
「どうかしましたか?」
「イーリスさんって……」
「私が何か?」
「とても、頼もしいです。スパイとしての能力は非常に高いと思います……」
チュベローズはうっとりとした口調で、しかも目を潤ませていた。
「いや、それほどでも」イーリスはやや戸惑いつつも会釈する。
「横からお邪魔します」ポンと唐突に、エルザが二人の間に姿を見せた。「失礼ですが、チュベローズさんは酔っていらっしゃいますね?」
「そうかもしれませんっ」
チュベローズは口元に手をやる。船内に入ってドアを閉じるや、リキュールを効かせたケーキの内側に入ってしまったかのような気分になっていたのだ。
エルザはうなずいて続ける。
「そして、わが主(あるじ)イーリスの魅力にも酔っていらっしゃいますね?」
「そ、そんなことは……ある、かもしれません。イーリスさんのような人がそばにいてくれれば任務でも助かりますし、私の欲求も満たさ……きゃ! 私なにを言って!?」
チュベローズは顔を覆うも、隠しようもないほどに紅潮していた。
「エルザも……酔ってますね」
イーリスはため息をついた。するとエルザが真顔のままで、
「いいえ。その証拠にほら、このような姿勢も取ることができます」
とバレリーナのごとく華麗に片足を上げたので、イーリスのため息はますます深いものになるのだった。
まったく、とフィーネはぶつくさ言いながら酒瓶を拾い集めていた。散らされた瓶には手つかずのものもあった。それだけでも世の中に返したいとの願いからの行動である。
だが残念ながら、転がっている瓶の大半は空だ。
「しかもこんな……」
フィーネも抑えようとはしているのだが、目に怒気がこもるのは致し方ない。
「無駄づかいして!」
バスタブに身を浸している空賊レディーの喉元をつかんで、「くぉら起きろー!」と大声で呼びかける。
「もう呑めねぇ」
「そりゃそうよね!」
一応抵抗する構えを見せたので、フィーネは空賊の首の後ろを一撃してから彼女を湯船より引きずり出した。湯船? いや、バスタブ一杯に張られているのは湯でも水でもない、それは散乱した瓶の中身――高級ブランデーなのだ!
(フィーネちゃん、そんなに怒っちゃ……)
枝垂がなだめようとするもフィーネには聞こえていないらしく、バスタブにいた空賊をキツめに縛り上げていた。
フィーネのすぐそばではメルフリートが隣室へのドアを開け「何だ!」と声を上げていた。ばしゃっ、という破裂音、水風船が、ドアを開けるや落ちてくるというイタズラである。問題はその中身がウオッカだったということだ。
「酔っ払いども……!」
ずぶ濡れになった我が身に構わず、メルフリートはずかずかと隣室に押し入り、自分のほうを指さしアハハと笑っている女性を短剣の柄で叩き気絶させた。
「本当にどうしようもないな。非生産的で対価もなしに利益ばかり求めて……」
この後もくどくどと言葉が続く。とっくに相手が気絶しているのに、だ。
クーはつぶやいた。
(ああ、これ酔っぱらってるわね。間違いなく酔っぱらってるわ……まあ歳が歳だし、ね)
「そうめん好き?」
箸を手にした空賊が、いい笑顔をフィールに向けてきた。
「え……? 流しそうめん?」
フィールは戸惑った。魔法少女の杖を握って飛び込んだ部屋では、平和な光景が繰り広げられていたのである。女性ばかりの空賊数人が、樽をバラしたもので作ったとおぼしき、流しそうめんの仕掛けを囲んでいるのだった。
「あんたも一緒に食べようよ」
酔っ払い特有のハッピーな笑顔で手招きまでしてくれる。
「……どうしようかな?」
フィールだって何が何でも戦うつもりではない。
「仲良くして船を明け渡してもらえればそれでいいよね?」
とアニマのアルフォリスに言うと、箸を受け取り装置の横に付いた。
そうめんはそうめんであったが、流れている『水』がジンであるとわかったのは、その数秒後だった。
(ちっ、こやつら使えん。煽るしかないわい)
このときアルフォリスは決意した。『オープンモード』で姿を見せるや否、空賊たちをせせら笑ったのである。
「おや、空賊というからには期待したがずいぶん貧乳よのう! 太っておる者もおる!」
「ちょ、ちょっと何のつもりっ!?」
フィールは大慌てだ。「なんだと」と目をつり上げるお姉さんがいる。殺伐とした空気が漂いはじめた。空賊を怒らせてどうしようというのか!?
「ニーアさん、どこにいますか!?」
治はニーアの姿を探していた。
「返事をして下さい!」
ついさっきまで、ニーアは治とともに船の中を進んでいた。ところが、彼が木箱と樽で作られたバリケードを撤去しているうち、いつの間にか姿を消していたのである。
「スノウ、ニーアさんの行く先に心当たりは?」
(うーん……気がついたらいなくなってたから)
でも心配することないんじゃない、とスノウは言う。
(相手は酔っ払いよ、そうそう危険はないと思うけど?)
「何を言っている。ニーアさんはあんなに幼い……」
(28歳くらいだって話よ?)
「そうか、フェアリアだから……ということは彼女は俺より年上?」
(そういうこと)
「だったら飲酒も問題はないということか」
(……それだけならいいんだけどね)
「どういう意味だ?」
(どういう意味だと思う?)
その頃ニーアはどこにいたかというと、
「うふん♪」
治の目を盗み、するりと細い隙間から『この先職員寝室』と書いてある通路に入っていたのだった。進むほどに甘い気配がする。女性の衣擦れの音も。くすくすという嬌声まで聞こえてきた。
「空賊のお姉さんたちの楽しそうな雰囲気に混ぜてもらいましょうかねぇ。皆、理性も少ないだろうし、気持ちのいいことに誘ったら喜んでくれるかしらぁ?」
(気持ちのいいこと、とはどんなことでありますかっ!?)
コロナは姿を見せずに声を荒げた。
「言った通り、快楽ってことよ」
(か……肩もみとか)
コロナの声が震えている。
「それ以外の場所も揉むかも」
(なんですとっ!)
いけません! と声を荒げるコロナをからかうようにニーアは言った。
「あと、吸うかも」
ますますいけませんっ!! コロナは頭から湯気が出そうな勢いだが、ニーアは艶然と微笑むばかりだ。
「そういえばアニマのコロナにも、私の感覚はつながってるのよねぇ。いざとなったらコロナ、どんな風に乱れてくれるのかしら……?」
(いいいいいけませーーんっっ!!)
だがニーアを止めることはできない。ニーアは白衣からするっと片側の肩を露出させ、恍惚とした表情を浮かべて『寝室』の扉に手をかけたのである。
「ねぇ……気持ちいいこと、しなぁい?」
と告げて扉を開け放つと、しどけない姿をした数人の女性空賊たちが、なまめかしい視線をニーアに向けた。
ガラっと引き戸を開けて羽奈瀬リンは面食らった。
「あらぁ~?」
床に座り込んだ若い女空賊が、握ったジンの瓶ごと片手を挙げた。
「新入りのボーイさん?」
「可愛いじゃん」
「ショタっ子とは気が効いてるねえ」
などと口々に言う。空賊は三人、酒盛りの最中、それもかなりグダグダになっているらしい。いずれも若い娘だが暑くなってきたのか身につけているものは最小限で、下着姿とか言いようのない者もある。
(お子様になんて依頼するんだか……!)
けしからん、と言いたげに半透明の姿でスピカは腕組みした。アルコールを吸ったリンと感覚共有しているためか、彼女の頬はうっすら赤い。
ところがリンはごく落ち着いた口調で、
「大丈夫。スピカ以外の女性に目移りはしないから」
とうなずいた。
(そういう意味じゃないっ!)
スピカの頬はますます赤くなっていた。
さて空賊のお姉様がたはといえば、リンの様子に構うことなどなく、
「この子脱がしちゃおうよぉ~」
「坊やも暑いよねぇ?」
などと嬉しげに告げ猫のように迫ってくるではないか。
「すみません、スピカ以外の女性に押し倒されるつもりはないので」
リンは申し訳なさそうに告げると、入力端末に指を走らせた。
(ちょ、ちょっと『スピカ以外』って何!? 『スピカ以外』って!?)
スピカの抗議を聞き流し、リンは大いに加減しつつ攻撃を開始した。
●へべれけ船、制圧!
羽奈瀬リンは空賊三人を縛り上げている。しょせんは酔っ払い、あっという間に片付いた。半裸の女性たちは気を失っているが、飲み過ぎて寝ているだけかもしれない。
「眠るなら廊下ではくお部屋でどうぞ」
と告げてリンは、引き戸を閉じて酒樽でふさいだ。
「ところでスピカ、酔ってない?」
(大丈夫、うん大丈夫。さー行こうか……)
というスピカの声は鼻歌まじりだ。
ちょっと甲板の空気を吸いに行こうか、とリンは肩をすくめた。
フィーネの憤激は加速している。
なぜなら先に進むほど酒の飲み散らし、無駄遣いの度は高まっていたからだ。
だんだん高級酒の割合が高まってきたことも彼女の炎に油を注いでいた!
「この拳は高級ワインの分!」
アッパーカットで空賊を天井に吹き飛ばす。
「この回し蹴りは30年ものウイスキーの分!」
ローリングソバットで、襲ってきたへべれけ賊を薙ぎ倒す。
「そしてこの頭突きは、この私の怒りだあ!!」
どすんと盾ごと敵を昏倒させる。問答無用の武力制裁だ!
これだけ暴れながらも、フィーネは決して酒に手を出してはいない。これは彼女の探求者としての矜持である。
「酔っ払いにはやり過ぎるくらいが丁度いい」
ふっ、とフィーネは哀しげな笑みを浮かべた。
(フィーネちゃん、もっと可愛く生きようよ……)
あまりにも漢(おとこ)らしいフィーネの勇姿に、枝垂は滝のように涙を流すほかなかった。
「フィーネさん?」
左右に短剣を佩いた美しいシルエットが、暗がりから姿を見せた。イーリスだった。ところがそのイーリスを遮るように、
「フィーネ様、お見事。まさしく九蓮宝燈な大暴れですね」
うやうやしくエルザが意味不明なことを告げた。
「ちゅーれん……?」
ゲッカコウが問うも、
「気にしないで下さい。恐らく、『国士無双』の言い間違いです」
とイーリスは落ち着き払って返した。自分は酔ってないのにアニマのエルザだけ酩酊しているというのは謎だと思う。
そのときチュベローズは、フィーネに撃破された空賊を助け起こしていた。
「お酒を飲んだら船に乗ってはダメですよ、絶対に」
と言い聞かせ納得させたかと思いきや、その賊は遮二無二、「ありがとー!」と叫んでチュベローズに抱きついてきたのである。なんともグラマーなお姉さんで、泣きぼくろが印象的な美人であった。
「はあうっ……!」
チュベローズは背筋に電気が流れたようなショックを受けていた。
(いけない……これは……!)
満たされた気持ち――になりかけて慌てて、チュベローズは彼女を突き放す。そのお姉さんは今度はイーリスに抱きつこうとして、
「私は女です!」
冷たく言い放たれて一撃され、幸せそうな表情を浮かべて昏倒してしまった。
「ご無事で?」
と問うゲッカコウに「ええ」と返しながらも、もっと自分を戒めないと、とチュベローズは思うのである。
「もうやだあ!」
フィールは服を押さえながら走っている。あちらこちらがビリビリに破れており、白い肌があらわになっている。
「待てー!」
「天敵ー!」
そんなことを口々に叫びながら、空賊がフィールを追っていた。ただしみんな酔っているので足取りはへろへろだ。
「ほれ! しっかりせい! もっと服を破るのじゃ! あと少しであちこち見えるぞ!」
その空賊に声援を飛ばしているのは、こともあろうにアルフォリスではないか!
「どうして空賊さんたちを応援するのー! しかも私の服を破れだなんて!」
「視聴者サービスシーンは作らんといけんからのー?」
「どういう目的のサービスなのよ~っ!」
「これも一流の魔法少女になるためじゃ、許せ!」
会話が噛み合わないまま主従は走る。走って走って、着いたところが、船の操舵室だった。案の定パイロットの空賊はぐうぐう寝ていた。
「やった!」
服が解けてしまうすれすれのところで、フィールは操縦桿に飛びついた! 滑りそうになったその手を、
「フィール、大丈夫か」
メルフリートが支えてくれた。
「私なら大丈夫、服は……少し……大丈夫じゃないかも」
「えっ?」
フィールの姿に気がついて、メルフリートは慌てて目を逸らせた。
(貴方が今すべきことは、別にあるのではなくって?)
クーに呼びかけられ、そうだった、とメルフリートは短剣を構える。
船体を立て直すまで、この部屋を空賊から守り切ろう!
大きく揺れていた船が、急に船体を立て直した。
「ぁ、ああああああーんっ!」
それと同時にニーアは切ない絶叫の声を上げたのである。
「ニーアさん! 無事ですか!」
寝室のドアを開け放ち、治は室内の惨状を目の当たりにした。
それはあまりにも倒錯……いや、錯乱した状態であったといえよう。
「……なにやってるんです?」
治はきょとんとするほかない。
「私……まわされちゃった」
荒い息でニーアは言う。
文字通りの内容であった。なぜならニーアは空の酒樽に入れられ、酔っ払った空賊お姉様がたにごろごろぐるぐる、運動会の競技のように樽ごと転がされ続けていたのであった。
両目を渦巻き状にしながら、快楽の頂点、いや、三半規管ぐるぐるの頂点でニーアはつぶやく。
「……私、壊れちゃったかも……」
(そ、れは……っ、よかった、で、ぁ、ありますね……)
と返すコロナも、やはり目は渦巻きである。
姿を見せてスノウは治を見た。
治も、スノウを見た。
「……どうするべきだと思う?」
「ま、空賊は全員、しょっぴくべきじゃない?」
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