【サンタ狩り】50本のクリスマスツリー弥也 GM) 【難易度:とても簡単】




プロローグ


●雑貨店
「よし! これでもみの木50鉢の発注は完了」
 後は届いたもみ木に、飾りをつけてお客様にお届けするだけだ。
 
 雑貨店を一人で切り盛りする『プリム』の仕事は、商品の受注・発注・配送・店舗での接客、通販サイトの対応と多岐に渡る。
 そもそもこの雑貨店は祖母が経営し、プリムはその手伝いをしていたのだが、去年祖母が亡くなり思い出の詰まった店を閉める決心が出来ず、そのまま営業を続けているのだ。
 クリスマスツリーの仕事は、毎年祖母もプリムも楽しみにしていた。
 去年までは、みの木を飾り付けを手伝い、お客様の元へと運ぶのがプリムの仕事だったが、今年は何もかも一人でこなさなければならない。
「プリム、届いたもみの木を置く場所を開けておかないと」
 アニマの『クウリ』が心配そうに言うのも、仕方がない。
 それなりの広さのある雑貨店の倉庫は、今、何か惨劇でも起きたかのごとく散らかっているのだ。
「うん、分かってるよぉ……」
 プリムは受注表片手に倉庫から商品をピックアップし始めたのだが、とにかく見つからない。
 商品の在庫数の管理など数字だけの事はクウリが管理できるが、業者から納入された商品の整理はプリムが自らの手でするしかない。
「うぅ、どこにあるのぉぉぉ……」 
 クリスマスシーズンに突入すると言うのに、これではお先真っ暗。
 完全に涙目になっている。
「その商品は、目の前にあるエスバイロ用くまちゃんシールが納品された2日前に納品されたから、もう少し奥にある筈よ」
 クウリの言う通り、少し奥に探し求める商品はあった。
「ありがとうぅ、クウリぃぃぃ」
 
●もみの木
 あんなに乱雑に商品が置かれていた倉庫は、プリム必至の働きでもみの木50鉢を置くスペースと飾り付け作業スペースが確保された。
「どうよ! 私だってやればできるんだから!」
 プリムがどうだと言わんばかりに胸を張る。
「どうかしら……」
「え……」
「あれは?」
 クウリの視線の先には、スペースを確保するために移動させた商品が山の様に積みあがっていた。
「分かってるわ。プリムあなたは昔から一度に二つの事が出来ない子だって言うのは分かってる。でも、せめて私の声に耳くらい貸して」
 しかし、既にクウリの声はプリムの耳には入っていない。
「どぉぉしよう! 本格的に何処に何があるのか分からなくなっちゃった! あ! ツリーに飾るオーナメントはどこ!?」
 クウリが商品の山を指さした。
「あそこ」
「えぇ、あの山の中ぁぁぁぁ?」
「そう、一番最初に台車に積んであの場所に置いたの」
 台車の姿はまったく確認できない。。
 完全に埋もれてしまっている。
「そうだった……」
 プリムはがっくりと膝から崩れ落ちた。
「と、とにかく、あの商品の山を一度こっちのスペースに移してオーナメントを」
 オーナメントを山から出す、プリムはそう言いたかったのだが。
「こんちわーっ! お届けでーす!」
 納品業者のお兄さん達が、あれよあれよともみの木50鉢を運び込んでしまった。
 倉庫に残されたスペースは作業スペースのみ。
「あぁうぅあぅあう……」
 言葉にならない声を発しながら受取にサインをするしかなかった。



解説


 窮地に追い込まれたプリムを助けて下さい。

 具体的な手順内容

・プリムが積み上げてしまった商品の整理をしつつオーナメンの発掘
 雑貨店の商品ですので、大型商品は無いのですが、実用的な洗濯ばさみからファンシーなシールやキーホルダーと細々としたあんな物やこんなモノが多いです。
 エスバイロ用の装飾品もありまっす。
 気に入った雑貨がある? 3割引きでどうですか?
 DIY(日曜大工)の腕を披露していただいても結構ですし、収納術何かを披露していただけると、プリムの勉強になります! 

 

・ツリーの装飾
 もみの木を、オリジナリティあふれるツリーに!
 一般的なオーナメントもプリムが用意しておりますが、それ以外を使ってどんどん飾ってください。
 なんでも良いですよ?
 あ! 誰ですか、生肉を飾ろうとしてるのは!
 お友達やアニマちゃんと仲良く飾ってくださいね。
 あー、もうそこ、喧嘩しないでください!




ゲームマスターより


 こんにちは弥也(みや)です。

 クリスマスですね!
 
 クリスマスと言えばご馳走! じゃなかった、ツリーですね(そうなのか?)。
 ツリーのオーナメント、ちょっとネットで調べてみたのですが本当に色々ありますね。クリスマス関係なく欲しいと思うようなオーナメントもありました!

 皆さまのお片付け術と個性あふれるツリーのプラン、楽しみにしています。
 

 このエピソードは大規模作戦「輝け聖夜! 天空のサンタ狩り!」の連動エピソードです。
 必ずしも自分が参加した作戦に関連するシナリオしか参加できないわけではありません。



【サンタ狩り】50本のクリスマスツリー エピソード情報
担当 弥也 GM 相談期間 4 日
ジャンル ハートフル タイプ ショート 出発日 2018/1/1 0
難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 公開日 2018/01/11

 ヴァニラビット・レプス  ( EST-EX
 ケモモ | マーセナリー | 20 歳 | 女性 
「…買い物どころじゃなさそうね、これは」

◆目的
年末年始の買い出しをすませるため、プリムのお手伝い

◆手段
「(寄付したりしている)施設にプレゼントするオーナメントと、あと自分向けのエスバイロの補修材(塗料、金具etc)をお願い…なんだけど」
「…まずもみの木をどうにかしないとダメね」
腕力を生かして力仕事からお手伝い。
どのみち、飾りつけを行う必要はあるのだし、もみの木の一部をいったん作業スペースへ。そして空いたところへ商品在庫を移動、オーナメントが発掘出来たら順次作業スペースに移動して飾りつけ、少しずつ量を減らし…

「ちょっとこれ店員さん増やした方がいいかもね…呼ばれれば格安でくるわよ?」
 アリシア・ストウフォース  ( ラビッツ
 デモニック | マッドドクター | 18 歳 | 女性 
目的
商品の整理とオーナメントの発掘

行動
うっわー…ぐちゃぐちゃだね!
大きめの収納箱持ってきたから、簡単に分類ごとに分けてこー!
大体入りきったら蓋を閉めて、上に積んでいこう!
どんなものかだけ名前書けば後で探すときに困らないよ!

ほんとに色んなものがあるんだねーラビッツ、何か気になるものあった?
キーホルダー?確かに今日の思い出に一つ買うのもいいかもね!という訳で、プリムさん、これ購入で!

片付けが粗方終わったら装飾だー!
一本一本題材変えて作ってみよー!
オーナメントも沢山あるし、好きに作っちゃえー!
普通のじゃつまらないよね…薬たくさん飾ってみちゃう?見た目可愛いし、いけるいける!形状同じなのが難点だね!

参加者一覧

 ヴァニラビット・レプス  ( EST-EX
 ケモモ | マーセナリー | 20 歳 | 女性 
 アリシア・ストウフォース  ( ラビッツ
 デモニック | マッドドクター | 18 歳 | 女性 


リザルト



●夕暮れの雑貨店倉庫
 年末年始の買い出しに雑貨店へとやって来たのは『ヴァニラビット・レプス』。
「すみませーん」
 店の奥に向かって声をかけるも、店員は姿を現さない。
「うっわー……。ぐちゃぐちゃだね!」
 店員なのか、店の奥の倉庫らしき場所から声がした。
 ヴァニラビットが躊躇しつつも店の奥へと足を向けると、やはりそこは倉庫なのだが……。
 
 倉庫には大量のもみの木と、床一面に広げられた商品在庫、更には隅に積み上げられた商品在庫。
 その中央に立ち尽くす店主の『プリム』が倉庫の窓から差し込む夕陽に照らされて呆然としている。
 更にその様子を驚愕の表情で『アリシア・ストウフォース』とアニマの『ラビッツ』がオープンモードで見ていた。
「あの、えっと……いらっしゃいませ……」
 プリムが我に返った。
「施設にプレゼントするオーナメントと、あと自分向けのエスバイロの補修材をお願い……なんだけど」
「はい、わかりました! それでしたらお店の方に……」
 ヴァニラビットを商品まで案内しようとプリムが一歩踏み出そうとしたその先には、何か小さな商品でも入っているのか20センチ四方の箱。
「おっとっと……」
 ガシャーン
 箱を避けようとしたプリムはバランスを崩し、転倒してしまった。
「商品を壊さないで!」
 プリムのアニマ『クウリ』は慌ててプリムに手を貸そうとするが、その手は空を切るばかり。
「……買い物どころじゃなさそうね、これは」
「だ、大丈夫です、ちょっと待っててください」
 プリムは慌てて床に広げた商品在庫を、再び積み上げるもすでに限界まで積み上げられているため、今にも雪崩をおこしそうである。
「あわわわわ……」
 何とかプリムが両手を伸ばし支えたので雪崩は免れたが、身動きが取れなくなってしまった。
「うぅぅ、どうしましょう」
 プリムは非常に情けない表情でバニラビットとアリシアを見た。
 クウリは何とかプリムを助けようと、積み上げられた商品在庫で出来た山のバランス計算を初めているが、恐らく何の役にも立たない。
「……まずもみの木をどうにかしないとダメね」
 ヴァニラビットがもみの木を軽々と移動させはじめると
「大きめの収納箱持ってきたから、簡単に分類ごとに分けてこー!」
 と、アリシアも積み上げられた商品在庫を収納箱へとポイポイと入れ始めた。
「ありがとうございます……」
 腕をプルプルと痙攣させながら商品在庫の山を支えるプリムは、もう完全に泣き顔だ。
「泣くほど腕が辛いの?」
 クウリが心配そうにプリムの顔を覗き込んだ。
「違うの、腕は確かに限界だけど、お手伝いしてもらっちゃって嬉しいやら情けないやら……あと……」
 ヴァニラビットがもみの木を移動させる手を止めた。バニラビットのアニマ『EST-EX』もクウリを見る。
「あと?」
「はい……もみの木……」
 プリムが溜息をつく。
「これ?」
 バニラビットが今まさに運ぼうとしているもみの木を指さす。
「はい、それを全部飾り付けなければいけなくて……。先が思いやられるな……って」
 そう言って、プリムは涙で滲んだめじりを、そっと指でぬぐった……。
「あっ!」
 アリシアが言ったのと、プリムに頭上に商品在庫が崩れ落ちたのは、同時だった。
 
●整理整頓
 頭にいくつかのコブを作りはしたが、これでプリムも身動きが取れるようになった。
「本当にありがとうございます」
 そう言いながらアリシアを真似て、更に床へとぶちまけてしまった商品在庫を手あたり次第に収納箱に放り込み始めた。
「これで、オーナメントも直ぐに見つけられます!」
 アリシアとプリムがご機嫌に商品を投げ込む姿に、我慢の限界を感じているのはラビッツである。
「ちょっと、アリシアに店員さん。そんな乱暴に扱っていいの?」
「あ……」
 2人は乱雑に放り込まれた商品を見て、手が止まった。
「そ、そうですよね」
 プリムが頭を掻く。
「ほんとに色んなものがあるんだねーラビッツ、何か気になるものあった?」
 次々と出てくる様々な商品にアリシアは興味津々。
「祖母が長くやって来た店なので、もしかすると物凄い年代物とかあるかもしれません」
 プリムが自慢げに言うが、いくら値打ちのある物でも、こんな状態では見つけ出す事も至難の業だ。
「収納箱にはどんなものかだけ名前書けば後で探すときに困らないよ!」
 アリシアの助言で、プリムが収納箱の外に中に入っている商品を書き込み、ヴァニラビットがもみの木を移動させあけた場所に、商品在庫を詰め終わった収納箱を移動させ始めた。
「大体入りきったら蓋を閉めて、上に積んでいこう!」
 サイズの揃った収納箱は、積み上げてもバランスを崩す様子はない。
「わぁ、すごです! これだと、何が入ってるのか書いてあるので探す手間が減りますね!」
 両手を叩いて喜ぶプリムの横では、クウリが必死の形相でリスト化し始めた。

●来客
「こんにちはー、プリムいるー?」
 店の方から常連客らしき声が聞こえた。
「はーい! ちょっとすみません」
 プリムが店へと向かうと、クウリが作成途中だったリストを確認して慌てだした。
「あの、すみません。今来たお客さん、常連さんなんですが、エスバイロに貼るクマちゃんシールを予約されてるんですけど、まだリストになくて……」
 アリシアが、あらっといった表情で顔を上げた。
「リストになってないって事は、まだ収納箱に入ってないって事?」
「じゃぁ、在庫の整理を優先した方が良いわね」
 ヴァニラビットも力仕事の手を止め、商品の整理を始めた。

「えー、入荷したのに!?」
 店では常連客のがっかりした声が響く。
「ごめんなさい、今倉庫の整理中で。明日の朝には必ず……」
「まぁ、年の瀬だし、ばたばたするわよね。じゃぁ、明日昼頃にもう一度来るわね」
 客が店を後にするとプリムはがっくりと肩を落とした。
「このまま店を続ける自信がない、なんて言いださないでしょ。倉庫で手伝ってくれている方達に失礼でしょ」
 クウリが背後から声をかけると、プリムは顔をあげた。
「そうよね! 今日はもう店を閉めて倉庫の作業に集中するわ!」
 嬉々として店じまいを始めるプリムの姿に今度はクウリが肩を落とす。
「そうね、切り替えの早さがプリムあなたの取り柄だったわね」

 プリムが店を閉めた後、プリム、ヴァニラビット、アリシアの3人は商品の整理に没頭した。

 アリシアは雑貨店にあまり立ち寄ることがないので、興味津々に次々と商品を手に取り収納箱へと入れているのだが、あまりに興奮しているためか手の動きと目線がちぐはぐである。
「ちょっと、アリシアまた!」
 興味が先行し、本来の目的を忘れてついつ商品の扱いは雑になるのを時折ラビッツから注意を受けている。
 そんなラビッツもオープンモードで張り切って手伝いをしている。
 アリシアが手にしたキーホルダーの束が、ラビッツの目を奪った。
「キーホルダー? 確かに今日の思い出に一つ買うのもいいかもね! という訳で、プリムさん、これ購入で!」
「ありがとうございます! 3割値引きします!」
 プリムがキーホルダを梱包するために店に向かおうとしたその時
「クマちゃんシール!」
 見つけたのはラビッツだった。
 ラビッツが指さす先に、大きなクマちゃんの顔のシールがあった。
「あああ! それです! ありがとうございます!」
 プリムはシールを大切そうに胸に抱きかかえた。

 クマちゃんシールを発見して間もなく、台車に乗せられたオーナメントが姿を現した。
「片付けが粗方終わったら装飾だー!」
 アリシアが気合の雄たけびを上げると、ヴァニラビットもそれに応じた。
「もみの木を作業スペースに移動するわね」
「はい! お願いします!」
 プリムも発掘したオーナメントを高く掲げた。

「少し休憩にしましょうよ。プリム、皆さんにお茶を用意して」
 クウリの提案で休憩をとることになった。
 いつの間にか、倉庫の窓から差し込む光は夕日ではなく、月の光になっていた。

●ツリー装飾
 去年の今頃はおばあちゃんが居て、ツリーの飾り付けしてたのにな。
 ふと、そんな思いがプリムの胸を過った。
 飾り用に用意したオーナメントの中には、祖母が亡くなる前に準備していた物もある。
 ツリーのオーナメントは地域によって様々なものがあり、祖母は一年かけてオーナメントを集めていた。
「プリム、どうかした?」
 祖母が最後に買い求めたオーナメントを手にぼんやりしているプリムに、クウリが気付いた。
「なんでもない!」
 祖母の思いを受け継ぐ覚悟なんて大げさな事は出来ないけど、目の前の事を一生懸命やることはできる。
 ただ、それだけで良いんだ。

「1本1本題材変えて作ってみよー! オーナメントも沢山あるし、好きに作っちゃえー!」
 いつもは注射器を持つ手を、オーナメントに持ち替えて張り切っているのはアリシアだ。
 青い眼に青い髪が人目を惹く。髪にはサンセットレインボーの髪飾り。アリシアの人柄を現すような暖かなデザイン。深け行く夜を照らす太陽の様でもある。
「普通のじゃつまらないよね……。薬たくさん飾ってみちゃう? 見た目可愛いし、いけるいける!」
 突拍子なアリシアの思い付きに乗ったのはプリムだ。
「良いです! すごく良いです! 薬屋さんからもツリーの注文いただいてるんです! 絶対喜んでくれます!」
 ほんとに?
 クウリとラビッツのそんな表情に二人は気にもしない。
「でも、形状同じなのが難点だね!」
「えー、それが可愛いです!」
 盛り上がる二人を誰も止められない。
 ハートがたくさん使われた天使が舞い踊るツリー。これもアリシアの作品だが、他のアリシアの作品とは少し趣が違う作品だ。
 この可愛らしいツリーは、大好きな兄のこと思って作った。優しくてちょっと残念な兄にまた出会えることを願って……。
 しかし、らしくなく恥ずかしいと感じたアリシアは、そっと隅の方へとのツリーを置いた。

 黒髪から伸びる可愛らしい耳が特徴のヴァニラビットは、次々と仕上げってくるツリーを手早く倉庫に並べながら、自らもツリーの飾り付けをしている。
「イースター、これでいいかな」
 仕上げたツリーをEST-EXに見せる。
 するとEST-EXは、柑橘色の目を細めて言うのだ。
「ヴァニラは、本当にそれでいいと思うの?」
 そう言われるとヴァニラビットは後もうひと手間をかけてツリーを美しいものに仕上げる。
 自分の仕上げたツリーを運ぶついでに、プリムの仕上げたツリーも運ぶ。
「あの、バニラビットさん!」
 突然プリムに呼び止められた。
「なに?」
「あの、私ずっとずっと初めてお会いしたって、さっきだけど、ずっと気になってた事があって」
「ん?」
「その首飾りって、もしかしてトレジャー・アイランドの……?」
「そうだけど」
 プリムの目が輝いた。
「凄い! トレジャー・アイランド探検に行かれたんですか! 凄い!」
「プリム、そんな勢いでお話しするのは失礼よ」
 余りのプリムの勢いに、思わずクウリが制止するほどだ。
「あ、ごめんなさい。あの、後でどんなだったかお話し聞かせてください!」
 凄い凄いを連呼するプリムに流石のEST-EXも苦笑いだ。

●大仕事の後に
 どのくらいの時間が経ったのか、すっかり夜は更けてしまい、建物から灯りがもれているのは雑貨店だけになっていた。
 あと数本で全ての作業が終わる。
 もう一年が終わってしまうような、ちょっと空虚な思いがプリムを襲う。
 何しろツリーの飾り付けが毎年最後の大仕事なのだ。
「さぁ、プリムそろそろ終わりが見えて来たから、ばあちゃんはビーフを焼くよ。後を頼んだね」
 去年までは祖母がそう言って仕事終わりに二人で食べるビーフの調理を始めるタイミングでもある。
 最後の数本を飾り付けながらビーフの焼ける匂いに空腹を感じたものだった。
 鼻にあのビーフを焼ける匂いが蘇った。
「またあのビーフ食べたいな……」
 クウリが待ってましたとばかりに倉庫の隅におかれた冷蔵庫を指さした。
「あそこにあるよ」
「え?」
「おばあちゃんのビーフでしょ? 冷蔵庫にあるわよ。焼くだけ」
 プリムは作業の手を止めて、冷蔵庫に駆け寄った。
「なに、どうしたの?」
 突然プリムが冷蔵庫へ駆け寄ったので、驚いたヴァニラビットも冷蔵庫の前に立った。
「おばぁちゃんが……」
 おそるおそる冷蔵庫の扉に手をかけるプリム。
「え? おばぁちゃんがこの中に!?」
 ヴァニラビットが言い終わらぬ間に、プリムは冷蔵庫の扉を開けた。
 そこにはプリムの祖母、ではなくタレに漬け込まれた牛肉がパッキングされた、焼くだけ簡単ビーフ、市販品だった。
「え? 焼くだけ簡単?」
 
 倉庫にビーフを焼く匂いが漂い始めた。
「まさか、おばあちゃんの思い出の味が焼くだけ簡単だとは思わないよぉぉぉ」
 と言いながらも、身体は正直でぐぅぐぅとお腹が鳴りだした。
「お二人もよければ……焼くだけ簡単ですけど」
「こだわるわね!」
 ついにクウリが怒り出した。
「だってぇ……」

 結局焼くだけ簡単は去年祖母が焼いてくれたのとまったく同じ味で美味しく頂いた。
「さぁ、最後の一本これで終わり!」
 ヴァニラビットが納品先別に綺麗に整理したツリーが50本並んだ。
「すごぉい」
 ラビッツが歓声を上げる。
「本当にすごいです。毎年私とおばあちゃんの二人で飾っていたので、どうしても同じようなツリーになってたんですが、今年は本当に色々あって、お客さんも絶対に喜んでくれます! これなんて凄くメルヘンチックでかわいい!」
 アリシアが兄を思い作ったツリーをプリムが指さす。
「あの薬が飾られてるのも良いね!」
 これもアリシアだ。
「私は、あのきらびやかなのが好きだなぁ」
 クウリが見つめているのはヴァニラビットがEST-EXから駄目だしされていたあのツリー。
 倉庫に漂う匂いは焼いたビーフだが、皆50本のツリーを見て幸せな表情になっている。
「ツリーに匂い移っちゃうといけないから、空気いれかえよう。プリム、窓を開けて」
 クウリの指示で窓を開けると、冷たい空気が倉庫に流れ込んだ。
 空は既に白み始めている。
「遅くまで? ん? 違う? 早く迄、ありがとうございました。後は、明日? ん? 今日ツリーを配達するだけです。本当にありがとうございました」
 プリムとクウリが同時に頭を下げた。
「これ今日一日で配達?」
 クウリが何かに気付いた。いや、恐らくプリム以外の全員が気付いたハズだ。
「そうよ、一日かけて全部一本ずつ配達するわ」
 意気揚々と答えるプリム。
「お店は?」
「仕方がないから張り紙をして閉めておくわ」
 クウリがはぁと息を吐いた。
 ヴァニラビットとEST-EX、アリシアとラビッツ全員が笑いを堪えている。
「え? 何?」
「エスバイロに貼るクマちゃんシール」
「え……、あっ! どうしよう! どうしょうクウリぃぃぃぃぃ」 
「店員さん増やした方がいいかもね…呼ばれれば格安でくるわよ?」 
 ヴァニラビットが気の毒そうに言うと、
「ほんとですかぁぁぁ!」
 突如笑顔になるプリムにEST-EXも目を丸くした。
「だめよ、それ以上ご迷惑をかけては。少なくとも明日はダメ。ツリーの配達途中、朝のうちにシールも配達すればいいでしょ」
 クウリの建設的な意見に、一同納得すると、プリムが突然うーーんと伸びをした。
「凄く疲れたけど、作業も間に合ったし、おばあちゃんの味はいつでも食べられることが分かったし、本当に良い一年の締めくくりになりそうです!」




依頼結果

成功

MVP
 アリシア・ストウフォース
 デモニック / マッドドクター


作戦掲示板

[1] ソラ・ソソラ 2017/12/25-00:00

おはよう、こんにちは、こんばんはだよ!
挨拶や相談はここで、やってねー!  
 

[2] ヴァニラビット・レプス 2017/12/31-09:22

あまり相談する事もないけど、挨拶だけでもね。

ケモモでマーセナリーをやっているヴァニラビットよ、よろしく。
手伝えそうなところは力仕事と、高い所の飾りつけかな?