プロローグ
「新種の食べ物探しに行こうツアー?」
「そそ。面白そうだと思わない?」
とある民間エンジニアの事務所。そこにいぶし銀のおっさんと、やり手そうなお姐さん、といった感じの女性が話をしている。
「この前、炊き出しイベントしたじゃない?」
「ウチもボランティアで参加してたアレか?」
「そそ、それそれ。それで見て回ってて色々企画考えたんだけどさぁ。その内の1つってわけ。たこ焼きも具沢山スープもジャガバタもカレーもパエリヤにチーズケーキに葡萄ソフトも美味しゅうございました」
「相変わらずよく食うな」
「かっぱかっぱジュースも飲んだわよ」
いま話題にしているのは、少し前にあった復興も兼ねた炊き出しイベントの事だ。
そこに民間エンジニアのいぶし銀のおっさん、ゴローも娘と、唯一の社員と一緒に参加していたのだが、それを目の前の女性、パールは見て回っていたのだ。
「色々と考えるな、お前も」
「企画屋としちゃ、数撃たなきゃどうにもならないのよ。ほらほら、こんなのも考えたのよ」
「ん……誰も訪れたことのない浮島でいちゃらぶデートしてみませんか?」
「かわいい子達が腕組んでるの見て思いついたのよ! 好いわよね! いちゃらぶ!」
「……それは良いが、予定地の浮島って、空賊が居るかもしれないってとこだろ?」
「スリリングな中で芽生える愛! 好いと思わない?」
「命がけの愛だな、おい。他には……ゆるキャラ着ぐるみコンテスト? アニマもどうぞご一緒に?」
「キュートで愉快な着ぐるみ着てる人、見つけたのよ。あ、これはイケるわ! とか思っちゃって。もこもこな着ぐるみ風のアニマの子もかわいかったし。あ、でもかわいいって言ったら、メイド服姿のアニマの子達も可愛かったわ~」
「参加者でるのか不安だが?」
「それは他のも同じよ。着ぐるみコンテストのは、やるとしたら人数増しのサクラに、探究者の人達雇おうかと思ったりしたけど」
「ノリ気になってくれる探究者が居ると良いな……あとは、アイドルフェスティバル? 歌って踊って演技して、みんなにアピールしちゃおう?」
「ほら、ミキちゃんとヤスくんがみんなに協力頼んで、舞台造って、そこで歌って貰ってたじゃない?」
「みんな喜んで盛り上がってたな」
「そそ、だから、あの時みたいにまた盛り上げられないかと思って」
「参加者集めるの大変だろ」
「そうなのよねぇ、一長一短色々あって、それで、とりあえず企画通ったのが」
「この新種の食い物探しに行こうツアーか。スポンサー良く見つかったな」
「頑張りましたよ。それでさぁ、お金引っ張って来れたのは良いんだけど、問題がちょっとあるのよね」
「……なんだ?」
「凶暴な浮き鮫が出るらしくってさぁ。それどうにかしないと島に行けないのよぉ」
「馬鹿か」
「ま、という訳で、そっちは探究者の人を雇うことでどうにかするって事で、問題は現地に着いてから料理する機材とかのセッティングとか、その他諸々に人手が居るのよ」
「だからついて来いと……お前な、そういう面倒なことばっか持って来るな」
「しょうがないじゃない。こういう面倒で危険がありそうなのに手を貸してくれる、腕の良いエンジニアなんてそうそう居ないんだから」
「お前ね、おだてりゃ、何でもするわけじゃねぇぞ」
「まま、そんなこと言わないで! これ手付金ね! 残りは仕事終ってからって事で! じゃ、私は探究者の人達募集して来るから! バッハハーイ!」
「はぁ……ったく、しょうがねぇな」
そんなやりとりがあってから、貴方たち探究者に仕事の募集が舞い込みました。
内容は、とある浮島に行く道中、凶暴な浮き鮫が出るので倒しつつ、現地に着いたら食材を探して料理をしてみて欲しい、との事でした。
もちろん、味見も込みです。
必要な機材の持ち込みと、調整をしてくれる人材は向こうが用意してくれるとの事でした。
浮き鮫が邪魔で人の訪れたことのない浮き島での食材探しです。
なにかしら、珍しい食材が見つかるかもしれません。
さて、この依頼、参加した貴方達は何を見つられるのでしょうか?
どうぞ、試してみて下さい。
解説
とある浮島に行く道中、浮き鮫をエスバイロで倒し、到着して下さい。
浮き鮫の数や強さは、ご参加頂けた人数によって変わります。
基本的に、浮き島に向かう途中で鮫を発見。
真っ直ぐに突っ込んでくるので、それを撃退という流れになります。
到着後は、浮島にて食材探しになります。
見つける食材は、プランにて好きに書き込んでください。
あまり極端な物だと難しくなりますが、そうでなければ発見したことになります。
動物系だと捌くことになるので、植物系や、捌くのが楽な動物、魚系みたいな感じの方が、描写的にエグくならずに済みます。
発見後に料理をし、それを皆で食べることになります。
必要な機材や調整はNPCの方で行いますので、多少手間のかかる調理法でもNPC達が苦労して何とかした、ということになります。
また、PCが食材探しの間に、NPC達が草を刈って機材やテーブルの設置などをしていますので、そういった部分でPCが苦労する事はありません。
流れとしては、
冒頭 エスバイロにて戦闘シナリオ
以降 日常シナリオ 食材探しと食事会
といった流れになります。
戦闘よりも、その後の日常シナリオの方がメインなエピソードになっています。
食材探しは、ちょっとした荒れ地や森を探検する形です。
そういう所で起きそうなことをプランで書いて頂けると、描写され易くなります。
同様に、PCやアニマの台詞や行動を書いて頂けると描写され易くなります。
ただ、リザルトの流れや文字数制限、描写量や濃さの偏りを調整するなどで、泣く泣く一部を短くしたりカットしたりといった事は在り得ますので、申し訳ありませんがご了承ください。
また、そういった部分で、多少アドリブが入る場合もあります。
それと、食事会の時に、企画屋のパールに、なんらかの企画を話したりといった事もありになっています。
以上です。
それでは、ご参加をお待ちしております。
ゲームマスターより
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
そそらそら、三本目のシナリオを出させて頂きます。
今の所、今までのエピソード結果から新規のエピソードを作らせて頂いていますが、今回のエピソードの内容でも色々と出していこうかと思っています。
なので、企画屋のパールに食事会の時に、今後こういうような企画ありじゃね? みたいな話をしていると、新規のエピソードで今後出て来るかもしれません。
ぶっちゃけますと、絶賛ネタ募集中です。
それはそれとしまして、少しでも楽しんで頂けるよう、判定にリザルトに頑張ります。
食べ物探しツアーに協力しよう エピソード情報
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担当 |
春夏秋冬 GM
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相談期間 |
7 日
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ジャンル |
日常
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タイプ |
ショート
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出発日 |
2017/9/29
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難易度 |
普通
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報酬 |
少し
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公開日 |
2017/10/08 |
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鶉
( ×- )
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ヒューマン | スパイ | 19 歳 | 男性
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○動機 さて…今日も浮き生物を観察しに浮島へ向かうとするか。 いくぞ、アイリス。ん?あれは…。 ○狙い 1.浮き鮫を観察した後、無力化。(できれば浮き鮫の一部のサンプルを持ち帰りたいところ) 2.未踏の島ということなので、もしかしたら新種の浮き生物がいるかもしれない。そのあたりを探したいところだ。 ○行動 アイリスが作ってくれたサンドイッチを片手に浮島へ。 浮き鮫…か。 たしか、先日レーヴァテインのスラム街で被害が出たと聞いている。 ただその飛顎はアビスに感染した状況だったようだがあの浮き鮫は…。 あそこの浮島は未踏の島なのか? なら、もしかしたら浮き生物の新種がいるかもしれないな。 食材探しをしつつ探索してみよう。
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わあー食べ物ツアーなんてとっても楽しそうですっ!! サザーキアさんと一緒に美味しい物を見つけて他の探索者の皆さんと仲良く食べま…え…ええーっ!? サザーキアさんまさかツアーってライブツアーだと思ってたんですかぁ!? それに…何だかとっても怖そうな鮫さん達が飛んでますよ…何度か見た事はありますがその時は忌兵隊の戦闘員の人達が倒してくれましたし… とりあえず鮫さんは他の方々に任せてわたしはもしも怪我をした人を治療するために後ろに居ますね… …あっサザーキアさん見てくださいっ!とっても美味しそうな梨さん達がなってますよ!!これを持っていきましょう!!
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くっくっく…ツアーといえばアイドル!アイドルといえばそうボク!!世界一鬼可愛いアイドルサザーキアの出番なのさっ!! さあ会場は…ってええ!?ツアーといってもライブツアーじゃなくて食べ物探しツアー!?歌わないの!? まあどうでもいいのさ!!それならそれにボクのライブツアーも追加!!探しながらもボクの歌が聞けて一石二鳥なのさ!! ふっふーんやっぱりボクって鬼天才…鮫?何ボクの歌声につられてきたの?なら歌ってあげるのさ!ボクは魚類にも鬼愛されるアイドルって事なのさ!猫だし! 鮫達に一曲聞かせてあげるのさ!! で…食材?あー何か魚類が食べたいのさ、何か見つかるといいなーなのさ。
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浮き鮫の飛行ルート、高速スピードに合わせてすれ違い様に威力反動を利用して斬る。または他のチームの戦闘方法に合わせて浮き鮫の後ろにスリップストリーム飛行で張り付き、追い立てたりアンカーネットで鮫同士正面衝突させるなどの誘導も。浮き鮫を剣で三枚におろしつつ、切り身を機内に入れてエスバイロのエンジンで照り焼き、蒲焼きにしておいて皆と食べる。浮き鮫の切り身の一部はそのまま食材探し用の餌にして空中からエスバイロで皆と空中釣りを楽しむ。親鮫、小判鮫などいかなる時も伏兵に注意してアニマと交代でソナーやセンサーに目を光らせ異常を皆に知らせて情報をアニマに通じて連絡できるようにしておく。
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料理も創作だ。どんな食材が見つかってどんな料理を創ることが出来るのか興味深くて仕方がない。 とはいえまずはサメを退治してほしいということだから準備体操といこう……サメも食材に使えそうだな、少し生け捕りにしてみるか…… 解体は問題ないとしてサメは臭みが強い。何かで臭みを除きたいが、どうせなら見つけた食材でやりたい……何か酸味がある果物とかないか? それが出来ればサメ肉のステーキや魚肉にしてのハンペンとかにすれば主菜は問題ないとして、あとは見つかった食材で副菜やデザートが作れれば完璧だが…… とりあえず食べられそうだったらとにかく使ってみるか。毒が無ければなんでも食える……たぶん。
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星野平匡
( ハルキ )
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エルフ | スナイパー | 36 歳 | 男性
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・浮き鮫退治 仲間より遥か上空よりスナイパーライフルで狙撃する。緊急時には急降下爆撃をしかける。近接戦闘は一子相伝の蹴り技「タイキック」をする。 退治した浮き鮫は、浮島でフカヒレスープなどの食材にするためエスバイロにくくりつけておく。 ・浮島 森に入って果物狩りをする。果物は後程パイにする。果物集めの時に熊の遭遇してしまうが、タイキックと手持ちの銃で倒し、後程調理する。料理はアニマと協力して行う。 料理の途中で企画屋の方のところへ行き、ライブをしている中で楽しく食事をすることを企画する。最初は困惑されるが、眼鏡を外した顔を見せると快諾してくれた。 食事中に退席し、ギターを取り、眼鏡を外してから歌を歌う。
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空屋
( シロア )
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ヒューマン | スナイパー | 23 歳 | 男性
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鮫は基本スルーみんなが戦ってるところを素通り、鮫に標的にされたら突っ込んでくる所を打ち落とす 鮫は食材にしないでゆっくり魚釣りをして釣り上げた魚を刺身にする ある程度魚が釣れたら食事会までお昼寝
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参加者一覧
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鶉
( ×- )
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ヒューマン | スパイ | 19 歳 | 男性
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星野平匡
( ハルキ )
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エルフ | スナイパー | 36 歳 | 男性
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空屋
( シロア )
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ヒューマン | スナイパー | 23 歳 | 男性
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リザルト
○出発前に挨拶しよう
「俺の名前はフリューゲル。フリューと呼んでくれて構わない」
浮島へと向かう前、皆が集まる中で『フリューゲル』は挨拶をする。
それに繋げるように、彼のアニマ『アイリス』も挨拶をした。
「アイリスです。みなさん、よろしくお願いします」
それに他の皆も返していく。
「ネリネ・アランドロンです! サザーキアさんと一緒に美味しい物を見つけて、他の探索者の皆さんと仲良く食べたいです!」
「コラプターだよ。ふふっ、今日は一杯遊ぶんだ~」
ポニーテールな『ネリネ・アランドロン』と、小さな子供のような姿の『コラプター』は、元気一杯楽しそうに声を上げる。
そこに、更に元気よく続けたのは『サザーキア・コッペリアル』。
「世界一鬼可愛いアイドルサザーキアのステージを見せてあげるね!」
これに慌ててネリネが返す。
「え…ええーっ!? サザーキアさん、まさかツアーってライブツアーだと思ってたんですかぁ!?」
「違うの?」
「食べ物探しツアーですよー」
「ってええ!? 歌わないの!?」
驚くも、すぐに気持ちを切り替え、続けて言った。
「まあどうでもいいのさ!! それならそれにボクのライブツアーも追加!! 探しながらもボクの歌が聞けて一石二鳥なのさ!!」
そこに、のんびりした声で続けたのは、サザーキアのアニマ『クレンバラン』。
「ふふっ、サザーキアちゃんの歌、今から楽しみね」
いつもの如く、おだてながら甘やかす。
それを聞いていた依頼人のパールは、ノリ良くライブも企画に加える。
同乗する民間エンジニアのゴローは、肩をすくめながら娘のミキと社員のヤスに言って用意をさせた。
これに『星野平匡』は、賛同するように言う。
「私もギターでライブをしようかと思う。構わないだろうか?」
眼鏡を外しながら言うと、パールはノリ良く承諾。更に話を進める中、アニマである『ハルキ』にもパールは頼む。
「私が、ダンスをするんですか?」
平匡の歌の始まりと、ハルキがダンスが得意と聞いて、パールは頼んだのだ。
「そうですね……少し考えさせてください」
ハルキはそう言うと、平匡の歌に合わせるダンスをどうするかを考えていた。
その間も挨拶は続く。
「風の傭兵エクセル=クロスワードだ。よろしく」
「ソーラーです。よろしくお願いしますね」
二ヒルな雰囲気を漂わせる『エクセル=クロスワード』に寄りそいながら、爆乳な『ソーラー』も挨拶をする。
続けて挨拶したのは、『オクセン・マイスナー』とアニマの『シュリー』。
「オクスと呼んでくれ。創作が趣味なんで、料理も何か現地で作ってみようと思う」
静かに意気込むオクセンに、シュリーは笑みを浮かべながら返す。
「美味しい料理、作りましょう。私も手伝いますから」
皆の挨拶が進む中、口を開いたのは『空屋』とアニマである『シロア』。
「空屋だ。依頼料に見合う仕事は、するつもりだ。それ以上は、期待しないでくれ」
どこか皮肉げに言う。そこに、やわらかく重ねるように、シロアも挨拶する。
「シロアです。みなさん、よろしくお願いします」
そして最後に『鶉』とアニマ『×-』の挨拶も終わり、皆は浮島に向け出発した。
○浮き鮫さんは命日です
目指す浮き島が見えて来た頃、浮き鮫はやって来た。
3mほど大きなものが2匹に、1mほどの小さなものが3匹。
それが一気に突っ込んできた。
「何だかとっても怖そうな鮫さん達が飛んでますよ!」
向かって来る鮫に、ビビるネリネは速攻でサザーキアの後ろに隠れる。
一方サザーキアといえばテンション上げ上げで前に出る。
「うわっ、こっちに来ちゃいますよっ、サザーキアさん!」
「ボクが鬼可愛いからしょうがないね! 鮫にまでも鬼愛されるアイドルって事なのさ! 猫だし!」
そのまま歌いながら大物に突っ込む。
惹かれ寄ってくる鮫。その後ろに着ける形でエクセルが動く。
「異常があれば、皆に連絡を頼む」
「はい。任せて下さい」
ソーラーに警戒を任せ、エクセルは鮫の排除に動く。
浮き鮫の後ろにスリップストリーム飛行で張り付き追い立て、鮫が嫌って逃げようとした所にアンカーネットを射出。
自由を奪われながらも暴れる鮫はデタラメに動き、もう一匹の大物の鮫の横っ腹にぶつかった。
エクセルの活躍で動きが鈍った大物鮫2匹に、攻撃準備をしていた皆が動く。
「油断は禁物ですよ!」
遥か上空から、平匡が鮫目掛け急降下。アンカーネットで動きの鈍った一匹に狙撃と爆撃を与え、続けざまにもう一匹の大物に急接近。
「君にお土産がありますよ」
鮫の鼻に向かって、一子相伝のタイキックを放つ。
もろに食らい悶える鮫。電流の流れを感じるロレンチーニ器官に打撃を食らい、苦しみのたうつ。
浮き鮫は鮫から変化したとはいえ、全ての浮き鮫がそうとは限らなかったが、この浮き鮫は鼻が弱点だった。
それを確認した平匡は皆に通信を送る。
「鮫の弱点は鼻です。そこを狙うようにしてください。鮫は調理するのでエスバイロで持ってきてください」
この通信を受け、皆は動く。
「あとで料理するためにも、生け捕りにしてみるか」
オクセンは、生け捕りを狙い小さな鮫との距離を詰める。
逃げずに突っ込んできた鮫の鼻に、交差ざまに打撃を与え、もがいている所にアンカーネットで絡め取り生け捕りに。
「さて、どう調理するか?」
「なにを作るの?」
創作料理に悩むオクセンに、シュリーは興味深げに尋ねた。
そうして次々に鮫が駆除される中、フリューゲルは観察を終らせ動く。
「フリュー君、来たよ!」
「ああ、分かっている。アイリス」
アイリスの声を切っ掛けにするように、フリューゲルは突進してくる小型の鮫の迎撃に。
戦う前に観察をしていたフリューゲルは、鮫のひれの動きから予測を付け、鮫を翻弄しながらエネルギーブレードで攻撃。
鮫はバッサリと切り裂かれ、駆除される。
その破片をサンプルとして取ると、興味深げに観察する。
「たしか、先日レーヴァテインのスラム街で被害が出たと聞いている。ただその飛顎はアビスに感染した状況だったようだが、この鮫は……」
浮き生物の事となると夢中になるフリューゲルを、アイリスは苦笑するように見詰めていた。
そうして皆が鮫の駆除に動く中、空屋はその傍を素通りする。
「手伝わなくても、良いんですか?」
心配そうに言うシロアに、空屋は平然と返す。
「あの程度なら、手伝う必要もないだろ。安い報酬に、そこまで必死になる事も無い。ご苦労な事だ」
どこまでも皮肉げな空屋に、それでもシロアは心配するように言う。
「でも、お仕事ですし」
「……分かってる。なに、向かって来る奴がいたら相手をするさ」
そう言って、近付いてきた小型の鮫を撃ち落とした。
そして最後の1匹は、鶉が倒した。
かくして危なげも無く、皆は鮫を駆除する。駆除も終わり、エスバイロを乗って来た母船に格納し、ついでに戦利品の鮫も持ち込む。
そこでエクセルは、早速小型の鮫を卸すと、エスバイロのエンジンを使って料理する。
小型の鮫は脂が乗っている種類だったので、照り焼きや蒲焼きにして皆に振る舞った。
そして調理の中で出たアラを見て、エクセルは思いつく。
「これを撒き餌にしたら、釣りが出来そうだな。誰か、釣りをする者は居ないか?」
これに賛同する皆と、道中釣りを楽しみながら、目指す浮き島に辿り着いた。
○浮き島で料理にライブに盛り上がろう
辿り着いた浮き島は、澄んだ巨大な湖が特徴的な島だった。
島の南側には高い山があり、大気の流れの影響か、頂上付近では常に雲がぶつかり雨が降っている。
その雨が山を伝い濾過されながら、湧水として湧いた物が、いつの間にか巨大な湖を形作ったようだった。
湖の一部では砂地が出来ており、その反対側にある岸から先は、豊かな森が広がっている。
それ以外は、草木のまばらに生えた荒地が多い。
湖の砂地には何も生えていなかったので、そこに船を着陸させる。
道中の浮き鮫や、そのアラを使った釣りで捕まえた小魚が食材として既にあったが、それ以外の物を求める探索者は、島を探索していた。
「さあ、歌おうか!」
テンション高く歌いながら、既に道中で小魚を手に入れていたサザーキアは、ネリネの食材探しに付き合っている。
ちなみに全力で走って逃げながら。
「歌ってる場合じゃありませんよっ、サザーキアさん!」
隣で走るネリネも、涙目で絶賛逃走中である。
なにから? と言えば、蜂の群れからだ。
「あはははっ! 蜂にまで追いかけられるなんて辛いね! しょうがないね! ボク可愛いから! 鬼可愛いから!」
歌の振動で刺激された蜂にたかられているのだ。
「ふふっ、さすがサザーキアちゃんね」
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ! クレンバランさん!」
「あ、見て見て~。あっちに何か実がなってるよ~」
「なんでそんなに余裕なの!」
コラプターにネリネが言うと、のんびりした声が返ってくる。
「だってボク、実体ないから刺されないし~。ネーリネンがんば~」
「ひ~ん!」
涙目で走り続けるネリネ。
蜂が毒の無い刺さないタイプの蜜蜂だと気付くのは、その数分後だった。
「うぅ~。酷い目に遭いましたよ~」
「あ、あれ梨じゃない? 採って帰ろう!」
「良かった。食材、見つけられましたよ。あ、こっちにもあるから持って帰りましょう。小ぶりで、ちょっと酸っぱそうですけど」
「そうかな? こっちのはどうだろ? ちょっと食べて……なんかしゅわしゅわする!」
「食べて大丈夫なんですかっ、それ!」
追い立てられた先で見つけたしゅわしゅわ梨を、サザーキアと共に持って帰るネリネだった。
そうして食材を探しているのは、フリューゲルも一緒だった。
もっともこっちは、道中様々な植物や生物を観察しながらなので、静かなものだったが。
「この生物がここにいるとは……なるほど興味深い」
フィールドワークを中心に生物の生態観察を普段からしているフリューゲルは、アイリスと共に探索をしている。
「なるほどこういうサンプルもあるのか……。アイリス、念のため記録しておいてくれ」
アイリスは頷き記録をしながら、フリューゲルに言う。
「少し休む? 荷物も増えちゃったし、重くない?」
食材だけでなく、後で調べるためのサンプルも道中集めているので、確かに荷物が増えている。
「あ、あの木の周りはデコボコしてないよ。シートを敷いて、持って来たサンドイッチ食べちゃう? そうしたら、荷物も減っちゃうし」
「そうだな。少し休もうか」
アイリスが作ってくれたサンドイッチで、小休憩をするフリューゲル。
「美味しい?」
「ああ。美味しいよ」
穏やかな空気が、しばし流れる。そこにふよふよと、梨が浮かんで流れて来た。
「浮き梨か? しかしこの色合いは見たことが無いな」
珍しい物を見つけ、目を輝かせて手に取ると、少し切って調べてみる。
切るとしゅわしゅわと、細かな泡が。アイリスに調べて貰うと、炭酸ガスだった。
「これは、二酸化炭素を炭酸ガスの形で固定してるのか? 味は……?」
ほんのりとさわやかな酸味と甘みがあり、しゅわしゅわしている。
「面白いな、これは」
「そうなの?」
「ああ、恐らくこれは――」
子供のように目を輝かせて自論を口にするフリューゲルに、アイリスは苦笑しながら付き合うのだった。
そうして食材を探しているのは、平匡も同様だ。
「大物が見つかると良いんだが」
ハルキと共に森を探索しながら、森でクマさんに出遭う的な歌を歌いながら進む平匡。
暇さえあれば音楽制作をして歌っているだけあって、良い歌声である。
するとその歌声に誘われたのか、突如小型のクマが現れた!
「ガオーっ!」
「熊さんに出会った!」
「ガウっ!」
反射的に一子相伝の蹴り技タイキックを叩き込む平匡。
クマが驚いて怯んだ所で、すかさず射撃で仕留めた。
「よし。大物をゲットだな」
「これ、持って帰るんですか? 重そうですけど」
「そうだな……ここで解体して持って帰るか。解体の仕方は分かるか?」
「ちょっと待って下さい……調べてみますから」
ハルキが検索して手に入れた情報を元に、味の良いクマの掌などを持って帰る平匡だった。
そうして食材を探す一方で、道中で魚を手に入れていたので、湖でのんびりとしている者達も居た。
「空屋、起きてますか?」
囁くような声で、シロアは昼寝をしている空屋に呼び掛ける。
湖の上。いかだの形をした大きな浮き輪式の船の上で、空屋は静かに寝息を立てている。
湖があるということで、パールが用意していたそれを使って、昼寝をしていたのだ。
バランサーが仕込まれているので、シロアが制御してくれていれば沈む事も無い。
安心し気を抜くように、空屋は眠りに落ちていた。
それはシロアが、傍に居るからか?
その答えを聞こうとするかのように呼び掛けたシロアだったが、応えは返って来ずとも、苦笑するように空屋の寝顔を見詰めていた。
すると、水面が揺れる。何事かとシロアが見詰めると、鳴き声が聞こえる。
「きゅう?」
「イルカ……?」
水面から顔を覗かさせたイルカに、最初は驚いたシロアだったが、楽しそうな表情を浮かべ空屋を起こそうとする。
「起きて下さい。珍しい物が見れますよ」
やさしい柔らかな声で起こそうとするが、僅かに身じろぐだけで起きる気配は無い。
そんな空屋にシロアが苦笑していると、イルカは鳴き声を一つ上げ、ぱしゃりと波を上げ戻っていった。
その時、空屋に水が掛かり、その冷たさが目を覚まさせる。
「ん……なんだ、水? 波でも掛かったのか?」
起き出した空屋に、シロアはくすりと笑う。
「どうした? なにかあったのか?」
空屋の問い掛けに、楽しそうにシロアは返す。
「知りたいですか?」
どこか悪戯っぽく、茶目っ気をみせながら、空屋と言葉を重ねるシロアだった。
そうして湖で過ごしているのは、エクセルもだった。
森で珍しい薬草を休憩がてら摘み終わったエクセルは、日焼け用のサンオイルやローションを近くに置き、湖の岸に佇む。
「誰も、来ないか……」
水辺があった時用に、他の皆も着れるよう水着を用意していたエクセル。
だが、他の皆はそれぞれ作業や収集、あるいは離れて休憩に勤しんでいたので、残念ながら参加者は居なかった。
ここに来るまで食材も確保し調理もしていたエクセルは、すでに依頼を果たしているので余裕があったが、他の皆はそういう訳でもなかったのだ。
ニヒルを装い強がってはいるが、故郷を失い人恋しさに自暴自棄になりかけてしまっているエクセルは、その分他人との関わり合いを求めているのかもしれない。
そんな彼に、やわらかな声が掛けられる。
「私は、居ますよ」
声に振り返えれば、水着姿のソーラーが。
「水着、用意されてましたから。私も、衣装用のデータを用意してたんです。その……似合いますか?」
大きな胸を強調するような水着姿で、不安そうに言うソーラーを安心させるようにエクセルは返す。
「ああ、よく似合ってる」
嬉しそうに笑顔を浮かべるソーラーは、続けて言った。
「他にも、水着のデータは用意してるんです。似合うかどうか、見てくれますか?」
これにエクセルは頷き、しばしイチャイチャするように、2人は水辺で過ごしていた。
そうしてそれぞれが過ごす中、オクセンは創作料理に勤しんでいた。
「さて、どう料理するか?」
食材は、道中撃退した浮き鮫だ。
ここに来るまでにエクセルが鮫を作った料理を振る舞っていた事もあり、創作意欲が刺激されている。
「刺身、でも行けるか?」
小型の物は、脂が乗っている事もあり、試しに刺身にしてみる。
浮き鮫に変化する前の元の鮫も、種類によっては新鮮な物なら刺身にして美味しく食べられる物があったが、今回捕まえた小型の物もそのようだった。
赤身の部分と白身の部分があり、両方試食してみると、白身の方がやわらかく癖もなく美味しい。
油が乗っていることもあり、サッパリとした白味魚のトロのような味わいである。
けれど油が乗っているということは、続けて食べると少しクドくなるかもしれないという事でもある。
それに悩んでいると、サザーキアとネリネが戻って来て、収穫した梨を披露する。
その中で、小ぶりの物は酸味が強かった事もあり、それを貰い受けポン酢を作る。
擦りおろし濾した果汁と醤油を足して、ほんのり甘味のあるポン酢が出来上がる。
更にそれを漬け汁に使って竜田揚げをつくり、大型の鮫は臭みが強かったので、湯に通して湯引きをすると、辛子酢味噌を絡める。
「他にも作るの?」
「ああ、これだけだと物足りないからな」
シュリーに調理器具の補助をして貰いながら、湯引きした後バターと香辛料で味付けした鮫ステーキも作った。
主食だけでは物足りないと考えていると、食材探しから戻って来て、浮き葡萄のソフトクリームを作っていたフリューゲルに刺激される。
サザーキアとネリネから貰った梨を甘く煮てコンポートにし、フリューゲルから貰ったソフトクリームに付けたした。
「うん、美味い。これならみんなも、そう思ってくれるだろう」
「美味しそうですね。好かった」
シュリーがオクセンの笑顔に、嬉しそうに微笑む。
それは、実体のない自分は食べられずとも、それを美味しそうに食べるオクセンの笑顔を見るだけでも十分だというような微笑みだった。
そんなシュリーに、オクセンは誓うように言った。
「いつか、必ず食べさせる。それでおいしいと言わせる」
「……約束、してくれるんですか?」
不安と期待が入り混じったシュリーに、オクセンは言い切った。
「約束だ。任せろ」
「……はい」
その言葉だけでも、かけがえのない贈り物だというように嬉しそうな笑顔を浮かべながら、受け入れるシュリーだった。
そうして料理は終わり、更にライブの舞台が出来上がった中、食事会が開始される。
速攻で舞台に上がり歌を披露するサザーキア。そして応援するネリネ。
ライブで盛り上がる。
そんな中、料理に舌鼓。
鮫の蒲焼きに竜田揚げ。ポン酢で食べるお刺身に、湯引きしたサッパリ白身魚風の鮫肉を、辛子酢味噌で食べれば淡泊な美味しさが味わえる。
それを食べながら、どこか柔らかな雰囲気で空屋はシロアと話をしていた。
料理はもちろん、それ以外にもまだまだある。
バター風味の香辛料が効いた鮫ステーキは、鶏肉にも似た味わいの、白身魚として旨味が感じられた。
それをアニマの×-と時折お喋りしながら食べる鶉。
他にも、道中で釣った小魚の唐揚げや、しゅわしゅわ梨を食べていく。
合間合間に、甘酸っぱい浮き葡萄ソフトクリームのしゅわしゅわ梨コンポート添えを楽しんだ。
変わり種は、平匡が獲ったクマの手の煮込み。
ぷるぷるとした、すっぽんを思わせるゼラチン状の食感と、ワインをベースに煮込まれた味わいがしっかりと味わえた。
そうして盛り上がった所で、平匡がステージに上がる。
「待たせたな」
眼鏡を外した平匡は、そう言って食事をする仲間の前に出る。
そして、ギターをかき鳴らし、皆で歌って踊りながら食事会を楽しむように促す。
「未来を踊ろう!」
その言葉と共に、ハルキはダンスを披露する。
それを見ていた企画屋のパールは、思わず悔しそうに言う。
「くっ、このレベルなら客が取れたのに。次からは本格的にお客を呼んでしないと勿体ない」
そう言ってしまうほど、探索者達の料理やライブは楽しい物になった。
十二分に、依頼を果たす探索者達であった。
依頼結果